2022年6月21日、空飛ぶクルマを開発するテトラ・アビエーションは、三井住友海上キャピタル、テイ・エステック、協和テクニカ、東鋼、三菱ガス化学等から、合計4.5億円の第三者割当増資および役員・従業員への新株予約権の発行を行ったことを発表した。
 シードラウンドが終了し、評価額は約38億円、累計調達額は6.7億円となった。現在はシリーズAに向けて調整中だという。

 今回の資金調達は、主に技術者の採用を目的としている。国内外を問わず、構造・制御・パワエレ・組み込み・HMI等をはじめとしたハードウェア、ソフトウェアに関するリード・シニアマネージャーの採用に注力するとしている。

 2018年に設立されたテトラ・アビエーションは、空飛ぶクルマと呼ばれる垂直離着陸航空機(eVTOL)を開発するスタートアップ。2020年2月の国際航空機開発コンペ「GoFly」において、プラットアンドホイットニーからディスラプターアワードを受賞し、賞金を獲得。コンペ終了後は、資金調達を行いながら販売モデルの開発を行ってきた。

 同社では航空エンジニアリング集団として高い技術力を身につけるため、また、グローバル化が進み、各国のエンジニアとの競争を生き抜くために国際市場に挑戦しているという。

 世界ではさまざまな空飛ぶクルマが開発され、3桁億円の資金調達や、SPAC上場による4桁の時価総額も珍しくない。先行する主要なeVTOL開発メーカーの中には、すでに既存の運航会社との購入契約を締結した企業もあり、自動車、新素材などの事業会社と資本業務提携を行う会社も多い。

 同社は世界のeVTOL市場に参入するにあたり、まずは個人向けの販売に注力するとしている。顧客のフィードバックをもとに量産型eVTOLの開発を行い、2025年に開催される大阪万博での飛行など、2拠点間移動サービスを行うための機体開発につなげていきたい考えだ。

 2021年より、垂直離着陸機(eVTOL)「Mk-5」を個人向けに予約販売しており、2022年度中のデリバリーを目指し、日米において一般公開可能な有人飛行を含めた飛行試験を実施、米国でのアマチュアビルド市場における認証を取得するとしている。
 現在は試作4号機まで製造しており、7月25日からウィスコンシン州オシュコシュで開催される「AirVenture 2022」においてコックピットのモックアップを展示する予定である。

 また、今回の出資に際して、オープンイノベーション促進税制(※1)を活用した事例もあったという。国家戦略として、スタートアップによる産業創造がオープンイノベーション促進税制以外にも、福島県の地域復興実用化開発等促進事業費補助金といった補助金制度によって後押しされている中で、この制度を最大限活用し、円安の利点を生かして海外マーケットへスピード感をもって参入し、新たな輸出産業を構築していく方針だ。

※1 国内の事業会社またはその国内CVCが、スタートアップ企業とのオープンイノベーションに向け、スタートアップ企業の新規発行株式を一定額以上取得する場合、その株式の取得価額の25%が所得控除される制度(経済産業省 オープンイノベーション促進税制