2021年12月2日、日立製作所(以下、日立)は、鉄鉱石などの原料を船から荷揚げして山積み保管する広大な原料ヤード(置き場)において、ドローンを活用した高効率な在庫管理を支援するクラウドサービスを開発したことを発表した。電力事業者や製鉄事業者などに向けたもので、同日より提供を開始する。

 同サービスは、ドローン空撮により現場状況をタイムリーに収集してクラウド基盤上で蓄積、AI画像認識技術を用いて原料のパイル(山)を解析・可視化するなど、現場の在庫状況を効率的に把握し、余剰在庫の削減といった適正な在庫管理に向けてワンストップで支援するものだ。

 数cm単位の解像度でパイルごとに在庫量・空きスペース・形状などの在庫情報を自動解析するほか、解析結果を業務データとして活用できる形式で出力・表示し、関係者間で情報共有することも可能。広大な原料ヤードの在庫管理に要する業務負荷を軽減するなど、業務のDX(デジタルトランスフォーメーション)に寄与するとしている。

空撮データの収集・解析・可視化イメージ

 従来、広大な原料ヤードにおける在庫管理では熟練の現場作業員が現地で複数のパイルを一つずつ目視で確認し、手入力による在庫情報の帳票化や一般的な三次元測量ソフトを用いてパイルを個々に識別して計測するなど、現場の状況把握には膨大な工数を要していた。

 同社は防衛向けの無人機事業からはじまり、ドローンの利活用推進に向けてさまざまな活動をしてきた。原料ヤードにおける在庫管理への応用についても電力・製鉄業界などのフィールドで実証を進め、今回、本格的にサービス化を行った。

 同サービスでは原料ヤードを上空から撮影してクラウド上に画像データを蓄積し、画像データをもとにクラウド上でパイルの三次元データを生成する。また、三次元データからパイルの位置を自動で認識して体積を算出するとともに、パイルごとの在庫量や空きスペース、形状といった在庫情報を自動で計測する。

 ノイズを自動除去する機能を備え、リクレーマ(原料ヤードから原料を出す機材)などの一部が空撮に入り込んだ場合にも、該当部分を除去して数cm単位での解像度で対象をとらえるため、高精度なパイル体積の算出が可能だ。

 さらに、生成された三次元データから、パイルごとの原料銘柄や重量などが記載された帳票をCSV形式で出力することができ、従来は手入力していた帳票化を自動化し、業務負荷の軽減や在庫管理の効率化を支援する。

パイルの在庫量や空きスペースなどの自動識別・計測のイメージ

 ヤードマップ上に、顧客の業種・業務に適した情報の表示や原料の銘柄情報を登録する機能などを備え、原料ヤードの管理業務に特化したユーザーインターフェースを有している。同機能により、日々の業務で必要となるヤードマップや在庫情報をデータ化し、原料調達部門などの関連部署と円滑な情報共有を可能とするほか、蓄積したデータからヤードの運用効率性や累計の原料滞留時間などを可視化し、業務の高度化を図ることができる。

 今後同社は、データ解析機能の拡充といったサービスの強化を図り、現場におけるさらなる作業効率や安全性の向上に貢献するという。また、適正な原料ヤードの在庫管理により原料輸送のための配船計画を最適化することで、物流に伴うCO2排出量や環境負荷の低減に寄与するとしている。