2019年10月3日、NEDO、日本電気、NTTデータ、日立製作所は、福島県、南相馬市、福島イノベーション・コースト構想推進機構の協力のもと、「福島ロボットテストフィールド」(福島県南相馬市・浪江町)において、同一空域で複数事業者のドローンが安全に飛行するための運航管理システムとの相互接続試験の環境を構築したことを発表した。

 具体的には、福島ロボットテストフィールドの総合管制室に、複数のドローン事業者が情報共有するための運航管理統合機能のサーバーを設置、稼働させたほか、先日公開した運航管理システムのAPIに関する利用規約の整備などを行った。これにより、NEDOプロジェクトに参画していない一般のドローン事業者でも、APIを介して同サーバーに接続することにより、運航管理システムとの相互接続試験を行うことが可能となった。

福島ロボットテストフィールドの総合管制室と運航管理統合機能サーバー

1.概要

 国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、同一空域で複数事業者のドローンが安全に飛行するための運航管理システムの開発や、「福島ロボットテストフィールド(※1)」(福島県南相馬市・浪江町)における運航管理システムの実証試験(※2)などを実施するプロジェクト(※3)を進めており、将来的には国際標準への提案を見据え、あらゆるドローン事業者が安心・安全にドローンを運航できる社会を目指している。

 今回、NEDO、日本電気株式会社、株式会社NTTデータ、株式会社日立製作所は、福島県、南相馬市、公益財団法人福島イノベーション・コースト構想推進機構の協力のもと、福島ロボットテストフィールドにおいて、運航管理システムの相互接続試験の環境を構築した。

 運航管理システムでは、ドローン事業者が運用する「運航管理機能」が、「運航管理統合機能」に接続することで、ドローンの飛行計画やリアルタイムの飛行状況、飛行禁止空域など空域の安全に関する情報を、他のドローン事業者と共有するサービスを利用することが可能となる。

 今回、福島ロボットテストフィールドの総合管制室に、複数のドローン事業者が情報共有するための運航管理統合機能を提供するサーバーを設置し、2019年8月30日に稼働した。また、先日公開した運航管理システムのAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)(※4)の利用規約の整備などを行った。これにより、NEDOプロジェクトに参画していない一般のドローン事業者でも、APIを介して同サーバーに接続することにより、福島ロボットテストフィールド内で運航管理システムとの相互接続試験を行うことが可能となる。相互接続試験の実施期間は、2020年2月までを予定している。

 なお、この相互接続試験は、2017年11月22日にNEDOと福島県が締結した、ロボット・ドローンの実証等に関する協力協定(※5)、および2019年4月10日にNEDOと南相馬市が締結した、福島ロボットテストフィールド等を活用したロボット関連人材育成等に関する協力協定(※6)に基づいて実施する。

2.運航管理システムとの相互接続試験について

 運航管理システムのうち、ドローン事業者により運用される「運航管理機能」は、「運航管理統合機能」が提供する複数のドローン事業者間で、飛行計画(どの経路やエリアで飛行させるかの計画情報)や、飛行状況(飛行させているドローンの位置、高度、速度などのリアルタイム情報)などの情報を共有するサービスを利用することで、同一空域で複数のドローン事業者がドローンを飛行させる場合でも、相互の情報を共有することができ、安全にドローンを運用することが可能となる。

 運航管理システムの「運航管理統合機能」に接続するためのAPIの仕様書を、2019年6月28日に公開(※7)している。また、9月までに福島県南相馬市、名古屋市、大阪市で、運航管理システムへの相互接続試験に関するシンポジウムを順次実施し、運航管理システムの概要について説明したほか、相互接続試験への参加に関する相談会を行った。

 相互接続試験に参加を希望する場合は、以下の運航管理システムAPI提供ウェブサイト(※8)にて、ユーザー登録、API仕様書のダウンロード、および参加希望の連絡が必要である。

 APIや相互接続試験についての詳細は、以下のウェブサイトを参照。

運航管理システムの構成例

3.今後の予定

 今後、NEDO、日本電気、NTTデータ、日立製作所は、2020年2月まで、運航管理システムのサーバーを稼働し、100フライト/時間・平方kmのドローンを飛行させる相互接続試験などを行い、運航管理システムの機能検証を実施する予定である。

注釈

※1 福島ロボットテストフィールド
 物流、インフラ点検、大規模災害などに活用が期待される無人航空機、災害対応ロボット、水中探査ロボットといった陸・海・空のフィールドロボットを主な対象に、実際の使用環境を再現し、研究開発、実証試験、性能評価、操縦訓練を行うことができる研究開発拠点。福島県南相馬市と浪江町で2018年度から順次開所中。

※2 運航管理システムの実証試験

※3 プロジェクト
事業名 :ロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクト
実施期間:2017年度~2021年度の5年間を予定
2019年度予算:36億円

※4 API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)
 プログラムやソフトウェアの機能を共有する仕組み。APIをインターネット上で公開することで、国内外の事業者にサービスを提供することができる。

※5 ロボット・ドローンの実証等に関する協力協定
 NEDOと福島県の連携を強化し、「ロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクト」において、福島ロボットテストフィールドを積極的に活用することで、ロボット・ドローンの実用化を加速させ、福島イノベーション・コースト構想の推進とロボット・ドローン産業の活性化を図るべく、2017年11月22日に締結された協定。なお、協定の正式名称は「福島ロボットテストフィールドを活用したロボット・ドローンの実証等に関する国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構と福島県との協力協定」。

※6 福島ロボットテストフィールド等を活用したロボット関連人材育成等に関する協力協定
 NEDOと南相馬市が連携し、福島ロボットテストフィールドを活用したロボット関連人材育成講座やWorld Robot Summit 2020などのさまざまな機会を活用し、国内外の優秀な人材が集う環境を整備することにより、ロボット関連人材育成の推進、ロボット関連産業の活性化を図るべく、2019年4月10日に締結された協定。なお、協定の正式名称は「福島ロボットテストフィールド等を活用したロボット関連人材育成等に関する国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構と南相馬市との協力協定」。

※7 ドローン運航管理システムのAPI仕様書の公開

※8 運航管理システムAPI提供ウェブサイト
 運航管理システムの相互接続試験は、福島ロボットテストフィールドでの実施を想定。参加希望の事業者には、ドローン飛行試験の目的や飛行計画などについて事前相談するため、プロジェクト担当より別途連絡がある予定。
 相互接続試験に参加しない場合でも、API仕様書のダウンロードは可能。なお、9月30日時点で、ウェブサイトへのアクセスは2,043件、API仕様書のダウンロードは90件。