2021年10月15日、日本野鳥の会は、勇払(ゆうふつ)原野での鳥類調査で、シマクイナやタンチョウなど、絶滅のおそれのある鳥類 計7種の生息を確認したことを発表した。

 繁殖期にあたる4~8月に、野生鳥獣の生息地保全を目的に日本野鳥の会が設置したウトナイ湖サンクチュアリが、ドローンの活用や音声調査といった新しい手法を取り入れながら実施し、国内レッドリストに挙げられている絶滅危惧ⅠB類を3種、同Ⅱ類を2種、準絶滅危惧を2種を確認した(※1)。また、準絶滅危惧のマキノセンニュウは、安平川(あびらがわ)湿原では出現回数が最も多くなり、ウトナイ湖と比較しても確認頻度が高いことが分かった。

 日本野鳥の会は、勇払原野の苫小牧東部開発地域に整備される河道内(かどうない)調整地(遊水地)のラムサール条約湿地登録をめざして保全活動を行っており、その一環として希少鳥類の調査を毎年実施し、結果の一部を公表している。

※1環境省レッドリスト(環境省ウェブサイトより
・絶滅危惧ⅠB類:近い将来における野生での絶滅の危険性が高いもの
・絶滅危惧Ⅱ類:絶滅の危険が増大している種
・準絶滅危惧:現時点での絶滅の危険度は小さいが、生息条件の変化によっては「絶滅危惧」に移行する可能性のある種

今年の新たな調査手法

タンチョウ:ドローンで採食地を特定

 これまでは約1Km先にいる個体の行動を目視で確認しており、人が容易に近づくことのできないヨシ原で繁殖するタンチョウの巣の確認は困難であった。今回新たな手法として、ドローンを用いて営巣地を特定する調査を実施したところ、昨シーズンに続き、1つがいが断続的に採食場として利用していることを確認した。

タンチョウ(写真/日本野鳥の会)

シマクイナ:音声調査により生息を確認

 湿性草原で繁殖する夜行性のシマクイナは、目視による確認が非常に難しい種である。そのため夜間に本種のさえずりをスピーカーで流し、その音源への反応回数や推定位置を記録する「プレイバック調査」を毎回実施しており、シマクイナの反応を調査員が直接現地で聞き取っていた。

 今回は、より効果的な音声マイクによる調査(5月下旬~6月上旬)および、マイクロフォンアレイ(※2)を用いた方法(8月中旬)で、計25日間実施。その結果1羽の声を確認し、また、6月上旬にはすでに勇払原野に渡来していることがわかった。

※2 マイクロフォンアレイは、複数のマイクロフォンで構成される録音機材で、それぞれのマイクロフォンで観測される音の違い(時間差、位相差)を処理・解析することで、音の到来方向を推定する。

シマクイナ(写真/宮 彰男)