2021年8月30日、日本国土開発は、静岡県熱海市における土石流災害を受け、同社が2000年以降に施工した大規模造成工事について自主的に土砂流出の耐性評価点検を実施し、安全性を確認したことを発表した。また、同社施工の複数案件で国土交通省の指導による自治体の緊急点検も実施されており、いずれも問題なしとの評価であった。

 1951年に創業した日本国土開発は、大量の土を動かす大型機械土工を祖業として成長し、大型ブルドーザーやスクレーパを活用して発電所敷地、宅地造成、ゴルフ場建設、リゾート開発などを手掛けてきた。東日本大震災後は、再生可能エネルギーの拡大により各地で太陽光発電所が建設され、2016年以降は大規模な土地造成を伴う太陽光発電所の建設が増加している。同社はこれまでに約1,000件の造成工事を行ってきたが、土砂流出、大規模な崩壊などは発生していないという。

 近年はドローン測量などICTの導入により、施工中の地形の変化に合わせた防災計画などを実現し、集中豪雨などによる周辺への土砂流出を工事中から防止している。

ドローン測量による3Dデータ

土砂流出の耐性評価に関する調査について

 今回の緊急点検は、工事記録や工事に関わった社員への聞き取りから、2000年以降に竣工した大規模土地造成工事169件のうち、盛土量、盛土高さ、仕上がり傾斜、外部への土砂流出の可能性など、一定規模を超えた18件を対象に実施した。該当案件において、設計および施工に関する記録を精査し、異常豪雨に対する耐性評価を行った。

調査対象案件

1. 大規模造成工事(単独、JVスポンサー、下請け)を対象として、事業面積10ha以上で盛土量10万m³以上。

2. 場外に土砂流出の可能性がある。盛土法面がある もしくは、場外が場内(施工箇所)より低い もしくは、表面に構造物・舗装・被覆がない。

3. 盛土最大高さが10m以上である。
※一部該当しない案件も規模の大きさから調査を実施

調査結果

全ての案件18件について、国土交通省や自治体などの設計基準に基づき設計コンサルで設計され、各自治体の技術審査を受けた上で、完成時に官公庁の検査を受けて合格。

降雨により下流域に対して土砂流出や河川の氾濫を防止するため、必要な調整池が設置されている。

実施工に際し、工事中の土砂流出防止を目的とした仮設の排水設備、盛土の品質が確保できるよう施工を行っている。

造成もしくは設備完成時に許可権者(県など)の完成検査を事業者と施工者である日本国土開発が受検し、合格証の発行を受けている。

国土交通省が発表している「土砂災害危険箇所」の該当案件はなかった。