2021年7月28日、テラ・ラボは、マイクロソフトが提供するスタートアップ企業向けの支援プログラム「Microsoft for Startups」に採択されたことを発表した。プログラムに選定された企業は、テクノロジーのサポートに加え、マイクロソフトのパートナーネットワークを活用した、事業拡大に適した専用のリソースが提供される。
テラ・ラボは、地震や台風、大雨被害等の大規模災害発生時に、ドローンやヘリを使った情報収集から解析、関係機関への共有に至るまでの災害対策DXの構築に取り組んでいる。今後はマイクロソフトと協業し、より効率的かつ迅速に情報共有できる仕組みづくりとDX実装化を目指す。
災害対策DX「テラ・クラウド」(災害対策情報支援プラットフォーム)
大規模な災害が起きた場合、タイムライン(防災行動計画)を迅速に進める中、ドローンやヘリ等を活用した共通状況図(COP:Common Operational Picture)のベースマップをいち早く作成するには、解析データの高速処理化が必要となる。そのため、本社の1台に加え、車両型地上支援システム(中継車)搭載のワークステーションの2台を合わせた計3台を稼働させ、データ解析を行っている。
ワークステーションで解析されたデータは、自社のGIS(地理空間情報)クラウドプラットフォーム「テラ・クラウド」に、優先度の高い情報から共有され、ウェブ上で随時公開する。クラウドプラットフォームには「Microsoft Azure」を採用し、災害時や高負荷時にも安定的に稼働できるよう設計している。
被害状況の “見える化” を進めるため、今後さらにコンテンツを充実させていく。
車両型地上支援システム
管制システム
・ 固定翼無人機や回転翼無人機の自律飛行制御を行うシステム
・ 有人機のADS-B信号を受信し管制システム上へ機体情報の表示が可能
映像伝送システム
・ 固定翼無人機や回転翼無人機搭載のカメラ映像を車両内モニターで確認
3次元データ解析システム
・ 観測機から取得したデータを解析するシステム
・ 解析結果はクラウドと連携可能
発電システム
・ 20kW、10時間以上の発電に加え外部給電も可能
・ 衛星回線:3回線
・ 4G(LTE回線):最大8回線 ※5Gモジュール搭載予定
災害対応の事例
2021年7月3日に発災した静岡県熱海市 伊豆山地区の土石流災害を受け、テラ・ラボは、東京都立大学の泉岳樹助教(地理情報学)とともに「空域災害調査・情報支援チーム」を編成。災害発生直後から、ドローンやヘリ、衛星を使用した被災現場上空周辺の調査を継続的に行っている。
7月5日には、撮影した画像をもとに捜索活動の手がかりに役立つ精密なCOPベースマップを作成し、災害対策本部に提供した。災害の全体像を把握・共有し、組織間で足並みを揃えて被害状況変化を確認するために使用する。
その後、データの広域化・精密化のため継続的に情報収集を続け、等高線、家屋、道路、線路などのポリゴンデータ(平面データ)と統合。
7月12日に熱海市災害対策本部へ再度、正式に情報提供するとともに、防災科学技術研究所が提供する防災クロスビューへの情報提供を行ったほか、内閣府ISUT(Information Support Team:災害時情報集約支援チーム)を通じた熱海市役所からのオルソ画像提供依頼にも協力した。
タイムライン(7月6日~12日)
・ 取得データをMicrosoft OneDrive(SharePoint Online)を用いて、本社解析チームに同期
・ 社内全体にて詳細データの共有を行い、地上支援システム(車両型)搭載のワークステーションで解析
・ タイムラインに応じた本社と災害現場のシームレスなコミュニケーションをMicrosoft Teamsで実施
・ 数ギガバイトという膨大な取得データを、より高精度かつ広域(前回の面積の約4倍)の地図を短時間で作成
・ 地図上に等高線、家屋、道路、線路等の平面データを統合
・ テラ・クラウドを用いて共有、被害状況の “見える化” を図る
・ 熱海市災害対策本部、内閣府ISUTへ情報提供
今回の採択にあたりテラ・ラボは、マイクロソフトとの連携を強化し、プラットフォーム構築やプロダクト開発等を加速化させていくとしている。
・ Microsoft Azureに提供される最先端サービスの検証~テラ・クラウドへの機能拡充
・ Microsoft Azure IoT Edge等のエッジコンピューティングの検証~無人航空機のIoT化
・ Microsoft Azureを使用した無人航空機の制御検証