2021年7月20日、ドローン向けオープンソース・プラットフォームを提供するスイス・チューリッヒのAuterionと、NTT e-Drone Technology(以下NTT e-Drone)は、ドローンの社会実装の加速を目的とした戦略的提携に合意したことを発表した。この提携を通じて両社は、次世代ドローンの開発・製造・運用・販売の推進に取り組み、農業やインフラ管理のスマート化を進める。

両社の取り組み

1. フライトコントローラーとミッションコンピューターを日本国内で開発・製造

 NTT e-Droneが、Auterionが開発・提供するドローン制御装置「Skynode」をベースとした独自のフライトコントローラーとミッションコンピューターを日本国内で開発・生産する。そのうえで、NTT e-Droneが今後開発していくLTE/5G/ローカル5G対応・遠隔操作・自律航行等の機能を有する次世代ドローンへ搭載し、供給を希望する他のドローンメーカにも展開していく。

2. ドローン運用プラットフォームを日本国内で運用

 NTT e-Droneが、Auterionが開発・提供するドローン運用管理システム「Suite」を日本国内サーバーで運用する。さらに、日本市場向けの機能を追加していくことで、農業・インフラ管理・測量・災害対策等の分野におけるドローンの社会実装を推進する。

3. 5G対応・遠隔操作・自律航行機能等、次世代ドローンの開発連携

 次世代ドローンに求められる機能の高度化にむけて、ドローンの社会実装に必要な開発を推進する。

4. 双方の機体のクロスセル

 NTT e-Droneは、Auterionの技術を搭載したQuantum Systems社製「Vector」やVantage Robotics社製「Vesper」を日本国内向けに展開する。将来的には、NTT e-Droneが今後開発する次世代ドローンをAuterionも展開していく。

関係者コメント

日本電信電話(NTT持株会社) 執行役員 技術企画部門長 岡 敦子 氏

 NTT技術企画部門は、NTT研究所や提携企業からの新技術の事業導入の推進に加え、災害対策・セキュリティ対策・設備の効率的調達などに関する施策立案、実行を行っています。その中で、安全・安心に利用可能なドローンの開発・導入は、特に重要な課題です。今回のAuterionとNTT e-Droneとの戦略的連携が、これらの課題解決を加速するものと期待し、サポートしたいと考えています。

NTT e-Drone Technology 代表取締役社長 田辺 博 氏

 Auterionとのパートナーシップは、当社が掲げるミッションである『社会課題の解決に資するドローンの社会実装を実現』するために必要不可欠なものです。加えて、日本以外のマーケットにアクセスする可能性ももたらすものと期待しています。NTT e-Droneは、ドローンの安全性と信頼性を最重視した次世代ドローンの実現にむけて、Auterionとの包括的なパートナーシップのもとお客様の要望に応えていきます。

Auterion 共同創設者兼CEO Lorenz Meier氏

 NTT e-Droneとのパートナーシップにより、日本の様々な企業、特にナショナルセキュリティに意識の高い組織・企業等の皆様が、世界で最も先進的なAuterionのドローン向けオープンソース・プラットフォームが提供するエコシステムに容易にアクセスできるようになります。加えて、このエコシステムにNTTグループが推進する5G・AI・クラウドといったICTサービスが結合することで、これまでにない新たな価値を提供できるようになると考えています。

 農業分野においては、NTTのネットワークを利用した次世代ドローンにより、日本の農業や気候の専門家は、遠隔地であってもリアルタイムにデータを調べ、分析や助言を農家に提供することができるようになります。時間のかかる長距離移動を必要とせずに、農村部の農家に最善の措置を伝え、当面の問題を解決できる専門家がいれば、農家の収穫量の増加につながる可能性が高まります。そうすれば、日本の食料自給率の数値を改善することに貢献できる可能性も生まれます。

 インフラ管理分野においてもAuterionとNTT e-Droneの包括的な業務提携により、道路や橋の状況をリアルタイムで把握することができるようになります。拡張性の高い次世代ドローンによるインフラ管理の自動化は、老朽化するインフラと少子高齢化が進む日本のインフラ分野において大きな一歩になると考えています。現場に1万人のインフラ点検の専門家を配置することはできませんが、1万台のドローンが強力な分析ソフトウェアを使って、遠隔地にいる専門家にリアルタイムでデータを配信することは可能です。

 最終的には、日本のSociety 5.0で示されたビジョンの実現につながる、デジタルツインコンピューティングにも貢献できると考えています。

Auterionについて

 Auterionは企業や政府機関といったエンタープライズ向けに、それぞれのニーズに応じた機体・ペイロード・アプリケーションとの連携を容易に実現するドローン向けオープンソフトウェア・プラットフォームを提供している。このプラットフォームは測量・点検・物流・監視・偵察等のドローン運用事業者に対して、ワークフローの改善を支援する幅広い選択肢や柔軟性、品質の確保を可能とする。従業員は、米国・スイス・ドイツの3拠点に70名以上。グローバルな顧客基盤には米国政府をはじめ、GE Aviation、Quantum Systems、Freefly Systems、Avy等が含まれる。