2021年7月12日、三井住友海上火災保険(以下、三井住友海上)は、大規模な水災発生時にドローンとAIを活用した水災調査(以下、AIドローン)とチャットボットを活用した「水災デジタル調査」を、今年度から導入すると発表した。

 水災デジタル調査では、AIドローンによる浸水高測定と、チャットボットを活用した顧客の被害状況等の申告をもとに、損害額を自動算出する。これにより大規模水災時にも、損害規模にかかわらず早期に損害状況を把握できるほか、適切な保険金の支払いが可能となる。

 同社は、あいおいニッセイ同和損保と共同で「令和2年7月豪雨」からAIドローンを導入し、広域に被災家屋の浸水高を測定して、建物の大半が水没した全損地域を特定、迅速な保険金支払いを行っている。一方、全損以外の分損認定では、建物の情報や損害状況等の詳細な確認が必要なため、一定時間を要するといった課題があった。そのため、顧客がこれらの情報を簡単に申告できるチャットボットを開発し、AIドローンの浸水高と照合することで、分損認定でも迅速な保険支払いを実現する。

水災デジタル調査の概要

 AIドローンによる浸水高測定と、チャットボットを活用した顧客からの被害状況等の申告をもとに、損害額を自動算出する。これまでの立会調査で確認していた建物情報・被害状況・浸水高等を、AIドローン、チャットボットによる自己申告から確認でき、大規模水災時にも迅速でスムーズな調査が可能となる。
 また、その結果から保険金を自動算定するプログラムを開発し、保険金算定の大幅な短縮を実現する。AIドローンとチャットボットによる申告を組み合わせることで不正請求を防ぎ、自己申告の適切性を担保する。

AIドローン
 高精度に座標(緯度・経度)を特定できるドローンで上空から水災被害地域を撮影し、その画像をもとに高精度な地表の3Dモデルを作成する。さらに、アリスマー社が保有するAI流体解析アルゴリズムを活用してデータ分析を行い、浸水高を算出する。AI流体解析アルゴリズムは、アリスマー社が保有する技術で、地図上で水量や水の流れを解析し、正確に浸水状況をシミュレーションすることができる。

球磨川流域の撮影の様子
球磨川流域の3Dモデルの一部

チャットボットによる自己申告
 従来は立会調査で確認していた建物情報・被害状況・浸水高を、チャットボットの案内に沿って、顧客が自己申告を行う。事前登録等はなく、三井住友海上からSMSで送信する専用URLから簡単に申告ができる。
 保険金請求書、浸水被害状況申告(家財品含む)、写真、見積書等その他書類の提出が可能。メジャーがない場合でも「A4資料」「500ml缶」など、4つの比較対象物から選択し、その対象物と浸水位置を撮影することで浸水高を自動測定することができる。

左から「提出する内容の選択」「浸水高の自動算定」「建物情報等の申告」

 今後、チャットボットによる自己申告機能は、あいおいニッセイ同和損保での活用も検討するという。また、広範囲な被害が見込まれる荒川氾濫等でも、同手法を活用することで迅速な保険金支払いを目指す、としている。