2021年7月13日、大翔は、芝本産業のフライトアプリケーション「Site Scan for ArcGIS」を利用して、ICT法面工における国交省要求計測精度(10mm以下)をドローン自動飛行測量で満たしたことを発表した。同計測により取得した3次元点群データをグラウンドアンカーの標高管理にも実用したため、その一部結果を公表した。
2019年度にICT法面工(吹付工)がICT活用工種に追加され、2020年度には吹付法枠工も加わった。それまでは補完データ扱いだった3次元点群データは「3次元計測技術を用いた出来形管理要領(案)」も整備されたことで、法面工でも3次元データを使った施工管理が公式に可能になりつつある。しかし、ICT法面工における3次元測量の要求精度は土工と比較しても厳しく、それを満たす一般的な測量手法は未だない状態だという。
そこで芝本産業と大翔は、ドローンのカメラを法面に正対させて自動飛行するアプリケーションSite Scan for ArcGIS を用いて、ICT法面工要求計測精度を満たすUAV測量ができるか、施工中の法面現場で検証を行った。
現場検証概要
検証日 :2021年6月25日
場所 :滋賀県犬上郡多賀町 法面工事現場
使用機材 :ドローン「Phantom 4 pro v02」/アプリケーション「Site Scan for ArcGIS」
検証内容 :Site Scanを用いたUAV自動計測精度が、ICT法面工に適応するか検証する。
計測結果検証
すべての計測パターンで、法枠工出来形計測時の要求精度(10mm以下)を満たす結果が得られた。同計測手法によって、ICT法面工に適応する3次元測量ができることが実証された。
現場で実測した2点間距離の値を、3次元点群データ上で計測した値と比較。点群データを使って十分に施工管理が行える精度であることがわかる。
現場実用(グラウンドアンカーマーキングの標高管理)
3次元点群データ上でグラウンドアンカーのマーキングの標高をすべてチェックした(以下はその抜粋)。トータルステーションを使ってマーキングした標高は、設計値通りであると3次元データ上の計測で確認できた。
検証結果まとめ
Site Scan for ArcGISを使うことで、ICT法面工要求精度をクリアするUAV測量が行えることが実証できた。
ICT法面工に適用できるUAV測量のポイント
1. ドローンフライトアプリケーション"Site Scan for ArcGIS"を使えば、ICT法面工に適応する精度で斜面正対(斜め撮影)自動飛行計測が行える。
2. 対空標識は、データ解析(補正)時に中心点を見分けやすいマークのものを選ぶと、精度が向上する。標識は板状である必要はなく、ラミネートした紙などが持ち運びやすく便利である。また、反射防止のマット加工を行うと、白とびしにくい。
3. 検証点は、標定点を結んだ外周の内側に設置することで計測精度が出る。
4. 対空標識の中心点の座標取得は、ノンプリズム計測で十分な精度が出せる。
5. 計測効率と精度の観点から最も効果的だったのは、オーバーラップ率85%、サイドラップ率65%、オフセット30mの計測パターンだった。
6. データ補正作業において、対空標識1枚当たり5枚の画像を使用した場合よりも、6~8枚で補正した場合のほうが精度が向上した。
7. 設置する対空標識の数を減らしても、補正時に対空標識と紐づける画像を増やすなどの工夫で精度を向上させることが可能。
今回の検証で、Site Scan for ArcGIS を用いたUAV測量手法の有効性が実証でき、ICT法面工に適応する手法の一つとして確立できた。同社は今後も、吹付法枠工および簡易吹付法枠工の現場でも実証を行い、3次元点群データ上で法枠工などの出来形を計測した結果を報告するとしている。