2020年12月4日、日本郵船および同社グループのMTI、京浜ドック、日本海洋科学は、国土交通省が目標と定める2025年までの自動運航船の実用化に向けた取り組みの一環である「操船支援機能と遠隔からの操船等を活用した船舶の実証事業」(※1)として、1度目の試験に引き続き、タグボートを使用した遠隔操船実船試験を共同実施者と行い、有益な結果が得られたことを発表した。

遠隔操船実船試験の概要

 東京湾上に位置する「有人遠隔操船システム」(※2)を搭載したタグボート(※3)を、約400km離れた兵庫県西宮市の陸上支援センターから遠隔で操船し、東京湾内で航行させた。前回は、本船搭載のセンサーやカメラによる周囲状況の把握、航海計画と行動計画を作成し、自動で航行する状態の確認を行ったが、今回は主に機器異常に対応するために以下の試験を実施し、その状態を確認・評価した。

陸上支援センターでの実船試験の様子

1. フォールバック動作検証試験

 航行中の船陸の通信および船陸の機器異常を想定し、船に対して遠隔から信号を出し、①エンジンの後進によって最短で停止する、②エンジン負荷を下げて速度を落として次のウェイポイントで停止する、という2種類の方法で異常に対して船の安全状態を維持、あるいは限定的ながら使用可能な状態を維持する機能についての確認試験を行った。

2. 通信データ量最適化試験

 遠隔操船において利用可能な通信速度は、環境によって刻々と変化する。安定的な遠隔操船の継続のために、通信速度の変化に応じてレーダーエコーのデータ量を自動で調整して、他の信号に影響を与えないようにできるかを確認する試験を行った。遠隔操船では船の位置情報や周りの障害物の情報をリアルタイムに陸上で監視する必要があり、通信の断絶が許されないため、本試験で確認する機能が必須となる。

今後の展開

 日本郵船と同社グループは、2度の遠隔操船の実船試験で得た知見を用いてさらにシステムの改良を重ね、引き続きパートナーとの協業により将来的な大型船での遠隔操船の実現を目指す。また、有人自律運航船および無人運航船への技術展開に取り組んでいく、としている。


※1 自動運航船の実現に必要となる安全要件の策定などの環境整備を進めるため、2018年度から国土交通省が進めている実証事業。
国土交通省「自動運航船、実証段階へ!!~2025年までの自動運航船の実用化に向けた取組をスタート~」(2018年7月25日)

※2 これまで日本郵船グループが航海計器メーカー他と共同研究を進めてきた乗組員支援のための「有人遠隔操船システム」のことで、船舶に搭載するセンサー等により周辺状況を把握して、当該情報を陸上に送信し、遠隔からの支援者はこの情報により見張り・操船の支援を行うシステム。

※3 日本郵船グループの新日本海洋社協力のもと、同社が運航するタグボートを使用。

参考 :日本郵船「タグボートを使用した遠隔操船実船試験に成功」(2020年5月20日発表)