2020年11月10日、自律制御システム研究所(以下ACSL)とVFRは、国内で本格的に社会実装が可能なドローン物流用機体の共同開発に着手したことを発表した。

 経済産業省が公開する「空の産業革命に向けたロードマップ2020」によれば、2022年度には都市部での目視外飛行(レベル4)を実現し、物流分野においては都市を含む地域における荷物配送サービスの開始を目指すことが示されている。ACSLとVFRは、両社の知見や技術的な強みを合わせることで、こうしたドローン物流の現場で活用できる水準の機能・性能に最適化されたドローンを早期に開発していくことを目指すとしている。

ACSLの物流用ドローン ACSL-PF2

経緯・背景

物流用のドローン機体に必要な機能・性能

 ACSLは、高性能なドローンの開発から販売までを行う企業として、これまで物流現場でのドローン活用に関する様々な実証実験を行ってきた。2018年11月には日本郵便と、補助者なし目視外飛行(レベル3)の承認を得て福島県の郵便局間の輸送を行った。また、2019年から2020年にかけて、ANAホールディングスと長崎県における離島間物資輸送を実施し、羽田空港からの遠隔操縦に成功している。

 こうした各社との実証実験を通して、レベル4が実現した際に、車や船等よりもドローン活用により効率的に輸送ができる場所(山間部や離島等)におけるドローン物流の社会実装を推進するためには、現状の機体よりもペイロードを大きくし5kg程度の輸送を可能にすること、飛行距離が20km程度あることの重要性がわかってきたという。そのため、同社は2020年8月発表の中期経営方針「ACSL Accelerate FY20」において、中型物流ドローンの開発と量産化を戦略の1つとして挙げ、検討を進めてきた。
 一方で、こうした要件を満たすドローン機体の開発・製造には技術的な課題が多くある。

産業用ドローンの本格的な普及のための課題解決

 ACSLとVFRは、2020年5月より産業用ドローンの本格的な普及のための課題解決を目指して協業を開始し、既にACSLの既存機体(PF2、Mini等)のアップデートに取り組んでいる。並行して、用途特化型の新機体の共同開発に向け、労働力不足解消のため特にニーズの高い物流用機体の開発を行うことを決定したという。

 VFRの親会社であるVAIOのPC事業における高度な設計・製造技術や、国内外のサプライチェーンのマネジメント能力等の強み、EMS事業におけるドローンの本格的な量産等から得られた知見により、本共同開発における技術的な課題解決に貢献するとしている。

VFRとACSLが共同で行った災害調査の様子