2020年10月26日、Livox Techは、近距離検知向けのLiDAR「Mid-70」と、長距離向けのLiDAR「Avia」2つの製品をリリースすることを発表した。小売価格は、Mid-70が83,600円(税込)、Aviaは167,200円(税込)。同日よりDJI公式オンラインストア、または同社指定の代理店で販売する。

 低速度自動運転やモバイルロボティックスなどに特化した製品設計のMid-70は、コストパフォーマンスが高いLiDARデバイスとして、正確なスキャン精度を実現。Aviaは、長距離検知におけるニーズに応え、さまざまなスキャニングパターン、範囲、シナリオの中で切り替えることができる。最大測定距離は450mで、操作効率性と安全性を向上させており、地形の測量調査・マッピング、送電線の点検、林業、セキュリティなどに適している。

左からAvia、Mid-70

近距離検知向けLiDAR「Mid-70」

 Mid-70は、FOVが水平・垂直方向ともに70.4°と大きく改善、最短測定距離は5cmとなっている。車に取り付けた場合、既存のシステムの補完としてMid-70を設置してシステムの死角を無くすことで、低速度自動運転の安全な視界を確保する。空港、店舗、スーパーマーケット、病院、港といった混雑した複雑な環境の中で、サービスロボット、無人運搬車、無人ミニバスのような低速ロボットを支援し、周囲の環境を正確かつ総合的に感知して、ロボットがうまく障害物を回避できるようサポートする。こうして、自動運転効率を向上させるだけでなく、ロボット作業の安全性も高める事ができる。

LivoxセールスディレクターChristopher氏コメント

 「低速度自動運転ロボットにおいては、常に死角の問題が議論の的になっています。現在、市場に出ている従来式の死角検知方法は、複数のセンサーのフュージョンが主流、つまり16本のLiDARデバイスとシングルラインレーザーと超音波、そしてRGBカメラを重ね合わせた結果に頼るというものです。このような方法では、アルゴリズムの厳格な設定要件や、それぞれの機器のFOVや精度に限界があり、死角を100%ゼロにすることは、いまだに困難です。これに対して、Mid-70は世界を一新しました。LiDARデバイスは、適正なFOVによって、自動運転システムにおける周辺環境を完全にカバーし、取り付けるだけで、100%ゼロ死角範囲を実現することができます。さらに、ハード全体にかかるコストは、半分以上削減することができます」。

従来の16ラインLiDAR(左)とMid-70(右)の比較

組み合わせ次第で死角をゼロに

 Mid-70を複数台繋げて使うことで、より広いFOV範囲を得ることができる。単体でも前方範囲を100%確保できるが、複数のMid-70を繋げた場合、車周りの死角をゼロにすることが可能になる。

3台のMid-70で前方・側方の死角をゼロにする使用例
3台のMid-70と2台のHorizonで前方・側方の死角をゼロにする使用例

 Mid-70は、近くの死角を検知する優れた性能を備えているため、低速度自動運転システムで死角を最小限にする製品として多く選ばれているという。その検知範囲は、80%の反射率で260mにおよぶ。そのため、低速度シナリオにおいて、マッピングとポジショニングLiDARとして使うことができる。

単一のMid-70ユニットによるSLAM

10,000台レベルの受注を獲得し、低速度自動運転における大量生産を支援

 Mid-70は、正式リリース前からGaussian Robotics、JD.comなどから高い評価を得ており、先日シリーズB+の資金調達で1億5千万元(約23億円)を調達したGaussian Roboticsは、7月に10,000台を発注している。これは低速度自動運転分野のLiDARデバイスの注文としては、記念すべき出来事であったという。また、JD.com物流部門に対しては、最新版の無人配達ロボットにMid-70を搭載することにより、近接距離での死角検知能力の向上に取り組んでいくとしている。さらにLivoxは、Mid-70を通じて、物流パークやスマート・ポートにおける企業との協業についても進めているという。

Mid-70を使用したGaussian Roboticsの自律型掃除ロボット(左)と、JDの無人配達車(右)

長距離向けLiDAR「Avia」

 Avia LiDARデバイスは、498gと軽量かつコンパクトながら、最大測定範囲は450m(反射率80%)。70°のFOVで、反復、非反復スキャニングパターンを切り替えることが可能である。トリプルリターン機能を使うことで、より詳細に捉えることができるため、送電線点検、林業、モバイル地形測量調査、マッピング、スマートシティの用途に適している。

450mの検知範囲

 Aviaは、ノイズを低いレベルに抑えつつ、周囲の明るさに応じて検出範囲を調整することができる。その範囲は、曇りの日や夜間のような暗い環境でも450mに達する。また高度も、空中マッピング中に簡単に調整することができる。十分に安全な飛行距離を確保しながら、詳細の高精度測定調査とマッピングが効率よくできるため、作業の効率性と安全性が向上する。

デュアルスキャニングパターン

 様々な操作シナリオに対応するため、Aviaには2つのスキャニングパターンが用意されている。どちらのパターンも点群データレート240,000点/秒で、同時に複数の高速走査レーザーを出力する。
 非反復スキャニングパターンでは、FOV範囲は時間とともに大幅に拡大する。70°の広域FOVは、大きな風景の点群データを一度に捉えることができるため、鮮明で高密度な点群を生成できる。この結果、スマートシティやモバイル地形測量調査・マッピングなどのシナリオにおいて、点群の取得効率を大きく向上させることが可能である。

アプリケーションシナリオ:トラフィックフローと速度の監視

 送電鉄塔の点検、森林マッピングにおいては、Aviaの反復スキャニングモードにより、作業の効率性を損なわずに、高精細な地形測量調査とマッピングを行うことができる。独自のスポットシェイプは、電線のような細い対象物でも高解像度でデータを出力。トリプルリターンは、空や地上の点群データをより多く取得することができる機能である。

アプリケーションシナリオ:送電線測量調査

軽量かつコンパクトで統合が容易

 軽量かつコンパクトながら、Aviaに内蔵されたIMU(慣性測定装置)は、継続的に空間姿勢と加速データを出力し、その後のデータ処理に必要な冗長性を提供する。Aviaは498gと軽量で、スペースに制限のあるユーザーが、ボード接続方式によって、他のものと統合できるようになっている。中国で地形測量調査を行うGreen Valley Internationalは、その最新の製品ソリューションにAviaを採用している。

Green Valleyの最新航空マッピングソリューションに組み込まれたAvia

LiDARが達成できることを再定義する2つの新しいシステム

 今回、この2製品を新たにリリースしたことにより、Livoxの産業向け製品ラインはグレードアップしたという。いずれの製品も、独自の知覚機能を持ち、近距離・長距離の両方に対応したLivoxの総合的製品マトリックスを確立している。これにより、異なる市場分野の特殊な需要に対しても応え、大規模量産を実現することが可能になっている。2020年初めに高速度自動運転をターゲットとしたCESショーでリリースした「Horizon」と「Tele 15」に続き、産業レベルでこのリリースを出すことは、同社にとって大変重要なステップであり、LiDARデバイスの大量生産を加速させ、さらに商業用としての生産を大規模に拡大するきっかけとなるという。

価格

小売価格

・Mid-70:83,600円 (税込)
・Avia:167,200円 (税込)

 いずれの製品もDJI正規オンラインショップ、または同社指定の代理店(SB C&S、光響、ネクスティエレクトロニクス、トラスコ中山)において販売する。

▼Mid-70 製品ページ (Livox)
https://www.livoxtech.com/jp/mid-70

▼Avia 製品ページ (Livox)
https://www.livoxtech.com/jp/avia