2020年4月4日、SkyDriveは、三菱航空機でチーフエンジニア、副社長と要職を歴任した岸信夫氏が、4月1日付で同社のCTO(※1、最高技術責任者)に就任した事、ならびに「空飛ぶクルマ(※2)」の有人飛行試験における技術検証第一弾が完了した事を発表した。「空飛ぶクルマ」の有人飛行試験は日本初だという。

左から事業責任者 宮内氏、代表取締役 福澤氏、CTO岸氏、チーフエンジニア安藤氏
有人飛行試験の様子
SkyDriveメンバー

 同社の開発プロセスは大きく分けて、技術検証フェーズと、耐空証明フェーズの2つがある。2018年12月に無人形態での屋外飛行試験を開始し、以降、技術検証を重ねてきた。そして、2019年12月から開始した有人飛行試験では、現試験機における操縦性、飛行安定性を確認し、その過程を安全に終了した。今後は、人が操縦する事で明らかになった改善すべき特性を設計にフィードバックしていく、としている。

 2023年の実用化に向け、耐空証明フェーズでは、航空機レベルの開発管理をしていく事が必要不可欠となる。リーン開発(※3)を進めてきた同社に、航空機の開発プロセスを熟知した岸氏が加わる事により、安全性を更に考慮した開発プロセスを実施でき、機体開発が加速すると確信しているという。

岸 信夫(きしのぶお)氏について

 大阪府立大学工学部卒業。三菱重工、三菱航空機にて、旅客機などの開発に37年間従事。この間、先進技術実証機プロジェクトマネージャ、国内初のジェット旅客機MRJ(SPACEJET)のチーフエンジニア、技術担当副社長を歴任。

岸 信夫氏のコメント

 SPACEJET(旧MRJ)を代表とする、37年にわたる航空機開発の中で培った、型式証明、安全性検証、プロジェクトマネジメント、システムインテグレーションなどの経験、知識を、SkyDrive社が目指す「空の輸送の概念を大きく変える空飛ぶクルマの開発、実用化」に活かしていきます。SkyDriveの社業を通じて、航空機の並みの安全性を確保したリーンな開発プロセス、先進的なコンポーネントの採用、革新的な量産プロセスなど多くの産業を巻き込む、まさに空を翔ける産業革命に貢献できればと思います。

※1 CTO:
 Chief Technology Officerの略。最高技術責任者のこと。

※2 空飛ぶクルマとは:
 正式名称は「電動垂直離着陸型 無操縦者航空機」と呼ばれ、電動化、完全自律の自動操縦、垂直離着陸が大きな特徴である。モビリティ分野の新たな動きとして、世界各国で空飛ぶクルマの開発が進んでおり、日本においても都市部でのタクシーサービス、離島や山間部の新たな移動手段、災害時の救急搬送などにつながるものとして期待されている。既存の航空機に比べて低コスト・低騒音、かつ離発着場所もコンパクトになるため、空の移動がより日常的になると考えられる。2040年にはグローバルで150兆円の市場規模に達すると予測されている(Morgan Stanley調査)次世代産業の1つである。日本においても、2018年から「空の移動革命に向けた官民協議会」が開催され、2023年の事業開始、2030年の本格普及に向けたロードマップ(経済産業省・国土交通省)が制定されている。先進国においては渋滞緩和、災害時利用、新興国においては、インフラ不要の移動手段としての活用が見込まれている。

※3 リーン開発とは:
 トヨタ生産方式を開発工程に応用させた、プロセスから無駄を取り除くことを目的とした開発手法のこと。