2021年6月4日、東日本電信電話 福島支店(以下、NTT東日本)とNTT e-Drone Technology(以下、NTTイードローン)は、災害時に通信インフラが被災した場合に備えて、早期復旧のため3種類のドローンを活用した災害対策訓練を実施したと発表した。

 通信インフラは、災害発生時において被害状況の把握や人命救助・物資搬送を支えるとともに、通常の社会・経済活動を再開するためにも重要な役割を担っている。NTT東日本は災害発生時に被災した通信インフラの早期復旧に向けてドローンの活用を進めてきた。今年2月からはNTTイードローンが事業を開始し、NTT東日本の災害対策用ドローンの開発・製造・運用を行っている。

 両社は、この訓練を通じて得た知見や課題を踏まえて、今後の災害対策用ドローンの開発・選定・配備や運用体制の強化に努めていく。加えて、災害対策用ドローンを飛行させるにあたって連携が必要となる自治体や公的機関等に訓練の模様等をフィードバックし、災害発生時における情報共有や災害対策用ドローンの運用について意見交換を行っていく、としている。

訓練当日の様子。新型コロナウイルス感染防止の観点から、訓練は現地だけでなくウェブ会議システムを通じた視察にも対応し、総勢100名以上が関わる訓練となった。

災害対策訓練 実施概要

実施日 :2021年6月2日
場所 :福島県南相馬市原町区 南相馬市復興工業団地内
実施事項
1. VTOL(垂直離着陸機)型ドローンによる広域被災状況把握(実証)
2. 小型空撮ドローンによる局所被災状況把握(訓練)
3. 通線ドローンによる光ケーブル通信復旧(訓練)

各社の役割

訓練の全体像

訓練の詳細

1. VTOL型ドローンによる広域被災状況把握【実証】

 激甚災害における広域の被災状況を速やかに把握するため、航続距離100km以上のドイツ製のVTOL型ドローンを用いて南相馬市原町区沿岸約6kmを飛行し、搭載したカメラで地上の様子を撮影。飛行中のFPV(一人称視点)映像を会場のモニターに投影し、リアルタイムに状況を把握する試みを実施した。
 今後は、機体に搭載された超高解像度デジタルカメラ(1億画素)で撮影された写真と、録画された4K品質のFPV映像を用いた、被災状況把握・分析の検証と、運用面の課題整理を行うなど、導入に向けた検討を進めていく。

VTOL型ドローンの飛行の様子
モニターにリアルタイムで配信された南相馬市原町区沿岸の映像

2. 空撮ドローンによる局所被災状況把握【訓練】

  VTOL型ドローンによって集めた広域の被災状況データをもとに被害が大きいと想定される地域へ、局所的な被災状況を把握するために使用する小型空撮ドローンの運航手順やフライトの操作性の確認を実施した。当日はNTT東日本 福島支店の社員による3名体制でのフライトを行い、安全にも十分配慮した。

NTT東日本社員によるフライト前の安全確認の様子

3. 通線ドローンによる光回線復旧【訓練】

 橋梁の流失等により光ケーブルが寸断された場面を想定し、ドローンを用いて河川の対岸へ光ケーブルを渡す訓練を行った。上空から作業場所などを確認したうえで、通線するためのリード線を狙ったポイントに投下。当日は河川対岸を模した投下位置に、正確に投下することに成功し、現場での実用性を確認することができた。
 この訓練を通じ、発災後の準備から派遣・実施に至る手順を確認。運用ルールやマニュアルの整備に活かしていく。今後は東日本エリアにおける配備数を増やし、NTTイードローンのパイロットが運用を行う予定である。

リード線を対岸へ運搬する通線ドローン
訓練で使用された機体。左から、Parrot製「ANAFI WORK」、NTTイードローン製「EC101」、Wingcopter製「Wingcopter 178HL」