2020年5月28日、ハイボットは、荏原環境プラントを引受先とした第三者割当増資による資本業務協定を締結したことを発表した。

 荏原グループの環境プラント事業を担う荏原環境プラントは、燃焼・ガス化技術をベースとして、固形廃棄物処理施設の設計・建設から運営、維持管理までを一貫して手掛けており、これまでに国内外に延べ400施設以上の納入実績がある。固形廃棄物処理施設においては、排熱回収用ボイラ水管の腐食摩耗等の経年劣化を正確に把握するため、定期的にボイラ水管の厚さ測定を行っている。しかし、従来ボイラ水管の厚さを内側から測定するためには、小型のセンサを小口径のボイラ水管の内側に挿入する前に、ボイラ水管の一部を切断するなどの準備作業が発生することが課題のひとつであった。

 一方で、ハイボットは、小口径の配管等の狭小部位を走行する小型ロボットの開発技術を有しており、その特長的な技術を活かす事業領域を模索検討していた。

 そこで両社は、水浸超音波探傷センサを搭載した小型走行型ロボットを共同で開発した。同ロボット「SQUID(スクイッド)」は、ボイラ水管の管寄せ配管の点検口から投入し、測定対象の水管まで走行移動させた後、センサを水管へ挿入し、ボイラ水管の厚さを内側から自動連続測定するロボットである。2019年12月、ボイラ水管の厚さ測定の実証実験に成功した(※1)。これにより、ボイラ水管の一部を切断するといった準備作業が解消され、作業時間の短縮及び資機材の削減によって、作業従事者の安全性向上と廃棄物削減の両立を実現する。

※1 2019年12月20日:荏原環境プラントニュースリリース「小型走行型ロボットを用いたボイラ水管厚さの自動連続測定に成功」https://www.eep.ebara.com/news/news20191220.html

SQUID:ボイラ水管厚さの自動連続測定用の小型走行型ロボットの外観

 この実証実験の成功を踏まえ、ハイボットは今後、ボイラ水管の点検・維持管理業務領域において、同ロボットおよびハイボットのAIデータプラットフォーム「HiBox(ハイボクス)」を活用した点検計測作業の効率化、取得データを用いた高精度な寿命予測診断などの点検サービス、RaaS(Robot as a Service)を行っていく。

 今回の資本業務協定の締結を通じて、ハイボットと荏原環境プラントは、RaaSに関する連携強化を図る。固形廃棄物処理施設等の社会インフラ施設において、更なる安全、安定、安心な施設運営を目指し、持続可能な社会の実現に貢献していく、としている。

関係者コメント

荏原環境プラント 代表取締役社長 渡邉良夫 氏

 「荏原グループの環境プラント事業を担う弊社におきましては、固形廃棄物処理施設の建設・運営を中核事業として、多くのプラントのメンテナンスを行っています。今回のハイボットとの資本業務協定の締結を通じて、弊社の点検保守整備の豊富なノウハウとハイボットの高度な開発技術の融合、連携強化を図り、RaaS領域に積極的に取り組んでいきます。弊社はRaaSを含む、最新のテクノロジーを活用して、幅広い分野において、お客様の課題に対するソリューションを提供してまいります。」

AIデータプラットフォーム「HiBox」について

 「HiBox」は、点検用ロボットに搭載した高解像度カメラや超音波プローブなどの各種センサーが捉えた点検データを蓄積・分析するAIデータプラットフォームである。蓄積したデータを用いて、点検するインフラのデジタルツインを作成し、ロボットが収集したデータにAIを適用することで、故障や欠陥、不具合の可能性を予測することができる。また、クラウドを介した転送データによって遠隔から点検結果を確認することも可能となる。