2020年3月12日、ドローンパイロットエージェンシー(以下DPA)は、狩猟罠開発と販売をメインとするアポロ販売(以下アポロ)と、猪などの鳥獣対策に向けて知見と技術を持ち寄り取り組むための業務提携を行ったことを発表した。

 本業務提携には、獣医学者の吉川泰弘博士と、鯉渕幸生東京大学准教授も加わり、鳥獣の生態域調査やバイオロギングによる狩猟の補助、狩猟後のジビエに対する検疫など学術的根拠に基づいた協力を得ることで、鳥獣対策の精度が高まり狩猟したジビエの適切な流通も可能となる。

鳥獣被害の背景

 昨今、猪や鹿といった鳥獣による作物への被害が増えている。農水省の統計では、平成30年度の農作物への被害額は156億円と試算されており、農家が農業を辞める「離農」へと繋がっている。
 鳥獣が農作物を食べ荒らすのは収穫の直前。明日収穫しようと長期間育ててきた作物が根こそぎ食べられ、農家のモチベーションを一気に奪い離農に至るのが現状である。

赤外線カメラで捉えた猪

豚コレラへの対応

 また、猪がもたらすものは、農作物の被害だけではない。昨年、26年ぶりに日本で確認された「豚コレラ」(現在は「豚熱」と改名)の感染源となるのが猪と言われている。豚コレラは養豚場の豚が殺処分対象となり、業者にとっては大打撃となる。最近では1月に沖縄で発生し、アグー豚が殺処分された。
 通常の豚コレラにはワクチンが効くが、今世界で流行しているのはワクチンがない「アフリカ豚コレラ」である。アフリカ豚コレラに豚が感染したら全頭殺処分するしか術はない。発生国では野生の猪で感染が拡大しているため、国内でも猪を介して大感染する可能性があるのだ。

ドローン×狩猟×獣医学で鳥獣被害へ取り組む

 そのような社会課題の中、DPAが持つドローンと画像分析の技術を活用し、アポロの罠と猟友会や農家とのやり取りで長年蓄積してきたノウハウを掛け合わせることで、より効果的に猪などの狩猟を技術的に革新し対策できるとして業務提携を行った。
 従来、ドローンだけでは鳥獣の駆除や捕捉は困難であったが、実際に罠を仕掛けるアポロと共に猟友会へ鳥獣の位置を提供することで、狩猟の補完ツールとして技術を活用するジビエテックが実現可能となる。

 既に今治市伯方島でアポロと地元猟友会と共に実証実験を行い、短い実験期間の中で猪の姿を捉えることに成功した。

猪補足可視動画
狩猟時に捉えた猪の姿

 また、吉川泰弘博士や鯉渕准教授が本提携に加わることで、樹木の種類や生態的痕跡などによるバイオロギングも活用し、より的確に鳥獣対策ができる仕組みを構築することができる。
 さらに本連携では、獣医学部による検疫により、狩猟した鳥獣を安全なジビエとして流通させることも視野に入れ、狩猟側の副次的収入や地方創生につながる名産品の創出に繋げていきたいという。

 それぞれが得意とするフィールドで力を発揮し掛けわせることで、各地域の鳥獣対策へテクノロジーを駆使して取り組んでいく、としている。