建設・測量分野の最新技術や機材が集まる「第8回 国際 建設・測量展(CSPI 2026)」が、2026年6月17日~20日に幕張メッセで開催された。建設機械が並ぶ一方、測量やインフラ点検に活用するドローン関連の展示も見られた。

 ブルーイノベーションは、スイスのFlyability社が開発する屋内点検用ドローン「ELIOS 3」を展示し、ブース内に設けた飛行エリアでデモフライトを実施した。同社によると、ドローン関連事業者が幅広く集まる「Japan Drone 2026」と比べ、CSPIでは建設・測量に加えて下水道点検に関わる来場者も多く、屋内・狭所での点検用途に関心が寄せられたという。ブルーイノベーションは今回、ELIOS 3のリピートフライトや超音波厚さ測定(UT検査)、下水道点検などを主な展示内容としていた。

写真:展示されたELIOS 3と送信機
ELIOS 3は球状ガードを採用し、屋内における壁面等への接触対策が施されたドローンだ。スマート保安技術カタログなどにも登録されている。
写真:機体に搭載した超音波厚さ測定の接触子
壁面や鉄板の厚さを超音波で測定するUTペイロード。測定物に接触させて測定を行う。

LiDARとSLAMでGNSSが届かない屋内を飛行

 ELIOS 3は、機体全体を覆う球体状のガードを備え、構造物への接触が想定される狭所や屋内での点検に対応するドローンだ。屋外を飛ぶ一般的なドローンはGNSS(全球測位衛星システム)を自己位置の把握に利用するが、建物内部や地下構造物では衛星からの信号を受信しにくい。

 ELIOS 3は、ビジョンセンサーや慣性センサー、LiDARによる3DセンシングとSLAM(自己位置推定と地図作成の同時実行)を組み合わせた「FlyAware」を使用する。飛行しながら周囲を3次元マッピングし、その地図上で自己位置を推定することで、GNSSを利用できない環境でも機体の姿勢や位置を安定させる。取得した3Dマップには飛行位置も表示されるため、操縦者は点検対象と機体の位置関係を確認しながら飛行できる。

 こうした仕組みは、今回のデモフライトでも来場者の関心を集めたという。担当者は、「CSPIの来場者には『ドローンは屋外で飛ばすもの』というイメージを持つ人も多く、球体ガードを備えた機体が屋内で安定して飛ぶ様子に驚く来場者が多く見受けられました」と話す。

写真:ネットで覆われたスペースでドローンを飛行させる様子
デモフライトでは、安定した飛行を実演。カメラから送信機に送られる映像も鮮明で視認性が良い。

飛行経路だけでなく画角や照明条件まで再現する「リピートフライト」

 今回、ブルーイノベーションが特に訴求していたのが、2026年5月に提供を開始した「リピートフライト機能」である。一度手動で飛行した経路を記録し、次回以降の点検ではその飛行を自動で再現する機能だ。

写真:取得した点群データ
機体に搭載したLiDARによって、周辺の点群データを取得する。障害物や壁などの周辺環境のほか、飛行ルートを記録する。

 再現するのは飛行経路だけではない。初回飛行時の速度、カメラの向き(チルト)、画角、露出設定、ライトの向きや強さなども記録する。このため、例えば半年後や1年後に同じ設備を点検する際、前回に近い位置と撮影条件から画像を取得できる。設備の腐食やクラックなどを時系列で比較する定期点検では、撮影条件のばらつきを抑えられることに意味がある。

 従来、同じ場所を定期的にドローンで点検する場合、操縦者が過去の映像などを参考にしながら位置や画角を合わせる必要があった。リピートフライトでは、良好に撮影できた飛行を基準として再利用できるため、操縦者の技能に依存する部分を減らし、取得データの再現性を高められる。

 一方で、完全に無人で運用できる機能というわけではない。自動飛行中も操縦者による監視が必要で、障害物などが発生した場合には自動飛行を中断したり、手動操作へ切り替えたりできる。Flyabilityの仕様では、リピートフライトの利用にはLiDARペイロードなど所定の構成が必要で、周囲の形状が極端に対称的な環境などでは再ローカライズが難しくなる場合もある。

1万6000ルーメンの照明、暗所点検や3Dデータ取得にも関心

 ELIOS 3は最大1万6000ルーメンのLEDライトを備え、照明のない下水道管路や設備内部などでも点検対象を照らしながら撮影できる。国土交通省の「上下水道DX技術カタログ」では、4K動画と1200万画素の静止画撮影に対応し、カメラを上下180度にチルトできる点などが紹介されている。

 担当者によると、デモフライトでは照明性能への反応が大きく、暗所でも対象を確認できる点に関心を示す来場者がいたという。また、測量関係者からは、人が入りにくい複雑な空間の3Dデータ取得に活用できないかという質問も寄せられた。

 ELIOS 3はLiDARによって飛行中に周囲を3Dマッピングでき、映像や写真と位置情報をひも付けて点検箇所を確認できる。さらに、より高精度な3D計測を目的とする用途には、Ouster製LiDARとFAROのSLAM処理を組み合わせた測量用ペイロードも用意されている。点検用の位置把握と、精度を求める3D測量では、求めるデータに応じた機器構成を選ぶ必要がある。

NETISや上下水道DX技術カタログへの掲載が導入検討の入口に

 ELIOS 3を活用した点検技術は、国土交通省の各種技術データベースにも掲載されている。2025年5月には「ドローンを活用した橋梁点検技術(ELIOS3)」として、新技術情報提供システム(NETIS)に「KK-250014-A」で登録された。橋桁下や天井部など、高所・狭所を足場や橋梁点検車に頼らず確認する技術として登録されている。

 また、国土交通省の「上下水道DX技術カタログ」には、「球体型ドローン『ELIOS 3』を活用した下水道点検技術」として掲載されている。同カタログでは、人が管内へ入らず地上から点検できることに加え、従来手法との比較で日進量を約2倍にできるとしている。

 ブルーイノベーションによると、会場にはこうした公的な技術情報を通じてELIOS 3を知り、実機の飛行や操作性を確認するために訪れた来場者もいたという。
 屋内点検用ドローンは、人が入りにくい場所へ機体を送り込む段階から、取得するデータの再現性を高め、定期点検へ組み込む段階へ移りつつある。今回の展示では、リピートフライトによる撮影条件の標準化や3Dデータの活用など、ELIOS 3を継続的な設備管理に利用するための機能が紹介されていた。

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