日本産業用無人航空機工業会(JUAV)は6月24日、東京都港区で「国家産業としての無人航空機産業の発展を考える」をテーマとした研究会を開催した。防衛装備庁や経済産業省、海外の防衛ドローン企業、AI企業などが登壇し、防衛と民生の双方で活用する「デュアルユース」を見据えた産業基盤の構築や、国産ドローン産業の競争力強化について講演した。会場とオンラインを合わせて約140人が参加した。

写真:研究会の様子
約140人が参加したJUAVの研究会。

 JUAVの研究会は例年、国内外のドローン市場やメーカーの動向、技術開発などをテーマとしてきた。一方、近年は防衛分野を取り巻く環境が大きく変化していることを受け、今回は安全保障を主とした講演を新たに取り入れる形となった。防衛力整備計画では、2023年度から2027年度までの5年間で無人アセット防衛能力に約1兆円の予算が見込まれているほか、政府は2024年に防衛装備移転三原則の運用を見直すなど、防衛装備品を巡る制度も変化している。

写真:マイクを持ち話をする阪口氏
JUAVの阪口晃敏会長。

 研究会の冒頭、JUAVの阪口晃敏会長は「国際情勢の変化により、防衛分野でドローンの重要性が高まっている。今回は、デュアルユースの産業基盤をどのように確保していくかを議論したい」と述べた。

防衛と民生を支える国内産業基盤の構築が課題

 研究会では「国家産業としての無人航空機産業基盤と官民連携」をテーマにパネルディスカッションを実施。経済産業省航空機武器産業課・次世代空モビリティ政策室の古市茂氏と、防衛装備庁装備政策課長の射場隆昌氏が現状を説明した。

写真:話をする射場氏、その隣に座る古市氏
防衛用無人機について説明する(右から)防衛装備庁の射場隆昌氏と経済産業省の古市茂氏。

 古市氏は、「航空法に基づくドローン登録機数が2022年6月の約21万機から2025年には約36万機まで増加した。これには、DJI社が機体認証制度への対応を拡大していることが大きな要因とされ、その約9割が中国製と推察される」と説明した。機体だけでなく部品供給も特定国への依存が大きいとして、「産業構造を変えていく必要がある」と述べた。

 経済産業省では、2030年時点の国内ドローン需要を約14万台と見込んでいるという。そのうち約8万台は点検や物流、防犯など情報セキュリティが重要となる用途と想定しており、これらに必要な重要部品について国内供給体制の構築を目指す考えを示した。

 次に射場氏は、大量の安価な無人機で敵部隊や艦艇を多層的に迎撃する沿岸防衛計画「SHIELD構想」を紹介。

スライド:SHIELD構想の概要
防衛省が計画する沿岸防衛計画「SHIELD構想」。

 射場氏は、SHIELD構想において「今すぐ必要なのは小型ドローンだ」としたうえで、「偵察から攻撃まで幅広く利用されるため、主要部品は国内に産業基盤を置くべきだと考えている」と説明した。また、中長期的にはハードウェアよりソフトウェアの重要性が高まるとし、大手企業だけでなくスタートアップの参画も不可欠と指摘。従来の調達手法では開発に時間を要するため、計画・設計・実装・評価を短期間で繰り返す「アジャイル型調達」の必要性も述べた。

 その後のシンポジウムでは、それぞれの立場から“デュアルユース”をテーマに議論が行われた。古市氏は、企業間競争とサプライチェーン強靱化を両立させるため、「協調領域と競争領域を分ける必要がある」と説明。射場氏も「デュアルユースは非常に重要だ」と述べ、有事に防衛専用工場だけで必要な機体や部品を供給し続けることは難しいと指摘した。世界的にも民生用ドローンが軍事用途へ転用される例が増えていることから、平時から産業基盤とサプライチェーンを維持する重要性を強調した。

防衛分野で進むAIとスタートアップの取り組み

 また、特別講演としてAnduril Industries Japan(アンドゥリル・インダストリーズ・ジャパン)事業開発担当ディレクターの神永慶吾氏と、Sakana AI防衛部門長の佐藤元紀氏が登壇した。

写真:話をする神永氏
Andurilの取り組みについて説明する神永慶吾氏。

 Andurilは2017年に米国シリコンバレーで創業した防衛テック企業で、ソフトウェアを中核に据えた無人システムを開発している。2025年末には、“純国産”のAI自律型ドローンの開発を進めており、日本への進出を明らかにしたことで注目が集まった。
 神永氏は、同社が数カ月単位で無人機を開発し米軍などへ提供していることを紹介し、既存の大手企業には実現できないスピード感が大きな強みであると話した。また、2022年にはオーストラリア法人を設立し、豪海軍と無人潜水艇を共同開発した事例を紹介。部品を現地42社から調達し、230人以上の雇用創出につながったという。

 さらに、2025年12月に設立した日本法人では、100%国産部品による試作機「絆(きずな)ドローン」を開発したと紹介し、「日本の各部品メーカーは国際競争力を持っている」と述べた。

写真:佐藤氏
防衛分野でのAI活用について説明するSakana AIの佐藤氏。

 次にSakana AIは、防衛装備庁の「防衛イノベーション科学技術研究所」の委託を受け、AIによる指揮統制技術などの研究を進めている。佐藤氏は、防衛分野で「ドローンの自律制御」「指揮統制システム」「ソブリンAI(国内で開発・運用するAI)」を重点分野として研究を進める考えを紹介した。

 ドローンの自律制御については、「従来は機種ごと、タスクごとにAIを学習させる必要があったが、基盤モデルを構築することで機種に依存しない自律飛行や複数機の協調制御も可能になる」と説明した。

政府が制度整備の最新動向を紹介

 このほか、内閣府規制改革推進室参事官の幕内浩氏と、国土交通省航空局安全部無人航空機安全課の伊藤貴氏も講演した。

 幕内氏は、VTOL型ドローン向けの新たな操縦者制度の検討状況や、これまでETCとの電波利用の関係で制約があった5GHz帯について、一部地域でドローン利用を可能とした制度改正などを紹介。伊藤氏は、2025年11月に和歌山県で実施されたDID地区でのレベル3.5によるドローン物流や、航空法第132条の92に規定される「捜索・救助等の特例」について、クマなどの害獣被害防止を目的とした飛行も対象となることを明確化したと説明した。