産業向けの国産ドローンを開発するACSLは、7月15日~17日に東京ビッグサイトで開催された「第12回 国際ドローン展」に出展し、開発中の次世代小型空撮機の試作機を展示した。機体重量約1.3kg、飛行時間約40分を目標に開発を進めており、2027年夏ごろの発売を目指す。
次世代機は、現行の小型空撮機「SOTEN(蒼天)」とほぼ同等のサイズを維持しながら、軽量化と飛行時間の延長を図った国産ドローンだ。SOTENには、可視光カメラ+赤外線カメラ、光学ズームカメラ、マルチスペクトルカメラが用意され、用途に合わせて交換可能な設計となっている。一方、次世代機はカメラを固定式とし、用途に応じた2種類(可視光カメラ・赤外線カメラ)の仕様を用意する計画だ。次世代機の発売後もSOTENの販売は継続していく予定だという。
次世代機は、経済産業省の「中小企業イノベーション創出推進事業(SBIR)」に採択された「行政等ニーズに応える小型空撮ドローンの性能向上と社会実装」事業で開発している。ACSLは、飛行時間や耐風性能、耐候性、携行性、障害物回避機能、カメラ性能などの向上に加え、自律制御技術とセキュリティ機能の強化を進めている。
固定式カメラを採用、約1.3kg・40分飛行を目標
次世代機は、SOTENと同じクアッドコプターで、機体重量を約1.3kgに抑えることを目標としている。SOTENの機体重量は、標準カメラとバッテリーを含めて1720gであり、飛行時間の延長も加味して数百グラムの軽量化を図る。
飛行時間は約40分を目標に開発。SOTENの最大飛行時間は、標準カメラ搭載時、風速8m/sの条件下で25分、カメラ非搭載時で29分である。次世代機ではSOTENよりも大幅に飛行時間を延ばす方針だが、40分という目標値のカメラ搭載条件や風速など、詳細な測定条件は現時点では明らかにされていない。
ACSLの担当者は、「交換式のカメラでマルチスペクトル撮影が必要な業務にはSOTENを使用し、可視光カメラまたは赤外線カメラのどちらかが必要で飛行時間を重視する業務には次世代機を提案していく予定です。次世代機がSOTENの全機能を置き換えるのではなく、両機を用途によって使い分ける位置付けとしています」と説明した。
動作環境温度は-20~50℃を目標とし、高温環境への対応を強化する。SOTENの動作環境温度は-20~40℃であり、次世代機では高温側の運用範囲を広げる計画だ。販売価格については確定していないが、担当者によると、SOTENと同程度か、それを下回る価格での提供を目指しているという。
SOTENのセキュリティ技術を継承、官公庁や自治体での利用を想定
次世代機は、SOTENと同様に、官公庁や自治体、公共分野での利用を主な用途として想定する。SOTENは、コンピューターセキュリティの国際規格である「ISO 15408」に基づく対策を施し、通信・撮影データの暗号化や、データの漏えい・抜き取りの防止、機体の乗っ取りへの耐性を備える。次世代機でも、こうした情報セキュリティの考え方を継承する。
ACSLの担当者は開発中の機体について、「撮影データ等の情報を外部へ流出させない仕組みを維持するとともに、電波干渉への耐性も高める方向で開発しています」と説明した。すべての機能を発売時点で完成させるだけでなく、販売後もソフトウェアの更新を通じて機能を改善していく考えだという。
官公庁や自治体では、公共施設やインフラの点検で撮影した画像・情報を外部へ流出させられない案件も多く、信頼性の高い国産ドローンへの需要が一定数ある。担当者は、「外国製の機体で実際にトラブルが発生しているということではありませんが、通信や撮影データの扱いが見えにくいことを懸念する官公庁や自治体は少なくありません。業務によっては国産であることや、データを外部へ流出させない仕組みを重視する声があります」と説明する。
また、官公庁や自治体の入札案件では、情報セキュリティに加え、防塵・防水性能などを仕様に盛り込む例があるという。ACSLには、こうした仕様を満たす機体としてSOTENを使用したいという相談が寄せられており、公共施設やインフラ設備の高所点検を中心に導入が進んでいるとしている。なお、次世代機は雨天10mm/h以下の環境での飛行に対応予定だ。
物流・測量・巡視点検に対応する「PF4」も展示
ACSLブースでは、2025年10月から量産を開始している長距離飛行に対応するマルチユースドローン「PF4」も展示した。PF4は物流用途を中心に開発した機体で、貨物を機体内部へ収納できる構造を採用する。
ユーザーが用途に応じてペイロードを交換できる設計となっており、物流用の貨物搭載部だけでなく、LiDARや可視光カメラなどを搭載することで、測量、広域空撮、巡視・点検にも利用できる。
最大積載重量は5.5kgで、最大積載時の航続距離は最大40km。物流用機体をベースとしながら、複数の業務に同一機体を活用できる点を訴求していた。
