ブルーイノベーションは、Japan Droneの開催に合わせて新たな事業戦略や製品を発表してきた。2026年のJapan Droneでは、新たなブランドメッセージとして「道なき空に道を作る」を掲げ、それを具現化する2つの取り組みを発表した。
新たなブランドメッセージには、ドローンの社会実装だけでなく、制度設計や運用ルールの整備まで含め、新しい市場を切り拓いてきた同社の姿勢が込められている。空という未成熟な社会インフラに対し、ドローンや自動運航技術を活用して新たな価値を生み出していくという意思を示したものだ。
災害対応を「ワンリソース」で実現する広域防災インフラ
ブランドメッセージを具体化する取り組みのひとつが、「広域災害対応ドローン防災インフラ」である。
ブルーイノベーションは、自動運航用ドローンポートに力を入れ、津波警報の発令と同時にドローンが自動離陸し、沿岸部で避難を呼びかける「BEPポート|防災システム」を千葉県一宮町などへ導入してきた。
今回は、この仕組みをさらに発展させた新システム「広域災害対応ドローン防災インフラ」を発表。Jアラート受信後、ドローンは1分以内に自動離陸し、津波避難の呼びかけだけでなく、被災状況の確認や重要インフラの点検など、複数のミッションを連続して自律実行できるようになった。さらに、複数のドローンポートをネットワーク化することで広域監視にも対応する。例えば沿岸部に2拠点を設置した場合、約10kmの海岸線をおよそ7分で確認できるという。
熊田貴之社長は、その狙いを次のように説明した。
「能登半島地震でも見られたように、実際の災害現場では津波への対応だけでなく、捜索活動や被害状況の把握など、多様なミッションが同時に発生します。今回のドローンポートを活用したソリューションは、それらをワンリソースで連続して実行できることが最大の強みです。これまで1つのミッションを遂行した後、ポートに戻ってから次のミッションに向かうという運航でしたが、状況把握から捜索活動など続けてミッションに取り組むことが可能になりました。デモンストレーションを見学した自治体からは、多くの問い合わせを頂いています。現在は国の補助制度も充実しており、自治体にとって導入しやすい仕組みが整っていることも後押しになっています」と説明した。
単一の用途に特化したシステムではなく、災害発生直後から復旧初動まで一連の対応を自動化できる点が、このシステムの特徴といえる。
台湾企業との協業でASEAN市場を見据える
次に、台湾のドローンメーカーAeroprobingとの協業拡大を発表した。
ブルーイノベーションのブース内に設けられたAeroprobingの展示では、屋外点検・測量向けマルチローター型ドローン「AS1」や、農業用途のヘリコプター型ドローン「AP-Heli」が展示された。しかし協業の狙いは、単純な機体販売ではない。
ブルーイノベーションとAeroprobingは、2019年からソリューションの共同開発を進めており、2025年7月には産業用ドローン分野での協業拡大に向けたMOU(基本合意書)を締結した。今後はAeroprobingが持つ航空電子工学や電子制御技術と、ブルーイノベーションの運航管理プラットフォーム「BEP」を組み合わせ、用途別ソリューションを共同開発していくという。
最初のターゲット市場は台湾、その後はASEAN地域へのグローバル展開を見据える。特に需要拡大が続く農業分野では、Aeroprobingの農業用ドローンとBEPによる運航・データ管理を組み合わせたソリューションを提供していく計画だ。熊田氏によると、この協業のきっかけは、Aeroprobing側から「海外展開を進めるうえで、日本企業との協業実績を持ちたい」と相談を受けたことだったという。Aeroprobingは、「日本企業や日本製品というブランドは、海外では依然として大きな信頼があります」と話す。一方でブルーイノベーションにとっても、BEPをAeroprobingの機体へ実装できれば、台湾やASEANを含む幅広い地域から飛行データを取得するための基盤を構築できるとし、両社のメリットが合致したという。
フィジカルAI時代を見据えた「再現性」の追求
熊田氏は、今後のドローン産業の進化における重要なキーワードとして“フィジカルAI”を挙げ、多数のデータを習得したドローンをフィジカルAIへと発展させる考えがあると語った。
フィジカルAIとは、AIがカメラやLiDARなど各種センサーから取得した情報をもとに現実世界を認識し、自律的に判断・行動する技術である。ロボティクス分野では近年急速に注目が高まっており、ドローンもその代表的なプラットフォームの一つとして期待されている。
同社が提供する屋内点検用球体ドローン「ELIOS 3」には、その考え方に近い機能「リピートフライト」がアップデートによって追加された。この機能は、最初に操縦者が飛行したルートをドローンが記録し、2回目以降は全く同じ飛行経路を自動で再現するもの。人が操縦した場合、熟練者であっても毎回完全に同じ飛行を行うことは難しい。一方、リピートフライトを利用すれば、毎回同一ルート・同一条件で飛行できるため、設備の経年変化を比較する定期点検などで高い効果を発揮する。熊田氏は、今後のドローンに求められるのは「誰が飛ばしても同じ品質で飛行し、同じデータを取得できる再現性」だと分析する。
産業用途では、操縦技術の巧拙ではなく、安定したデータ取得こそが価値となる。産業ドローンは人の技能に依存する運用から、自律飛行システムによる標準化に向かい、蓄積された飛行データをAIが学習し、さらに飛行品質を高めていく。そのサイクルは、今後の産業用ドローンの競争力を左右する重要な要素となりそうだ。
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