6月3日から5日までの期間、千葉県の幕張メッセにて「Japan Drone 2026」が開催された。第11回目の開催を迎えた同展示会に、日本HPが初めて出展。独自の3Dプリンティング技術「HP Multi Jet Fusion(以下、MJF)」によるドローンの量産を公開した。
試作から量産まで対応する「HP Jet Fusionシリーズ」
日本HPは、個人向け/企業向けPCやプリンターなどで知られる企業だ。同社は10年以上前から産業用途向け3Dプリンター事業にも参入している。同社が独自に開発したMJFは、粉末状の熱可塑性樹脂(ナイロン)に熱エネルギーを利用しながら造形する粉末床溶融結合方式を採用した3Dプリンティング技術である。
一般的な3Dプリンターでは、3Dデータの図面を設計し、素材を点で描画し積層しながら造形するケースが多いが、MJFは造形エリア内に複数の部品を配置し、面で造形できる点が大きな特長となる。一般的な3Dプリンターでは、積層方向による強度のばらつきが出てしまうが、粉末状のナイロンに熱を加え、溶融・結合させるMJFの方式は、均一な強度を保つことができるという。
MJFは、複雑な内部構造を持つ部品や、従来であれば複数部品を組み合わせていた構造も一体成形できるため、部品点数の削減や軽量化にもつながる。また、金型を必要とせずに試作品の製作や設計変更、小ロット生産までを短期間で行えることも大きなメリットとなる。
造形材料となるナイロンは、高い柔軟性を持たせながらも衝撃に強く、強度の高い部品を製造できる。その結果、MJFで製造した部品はそのまま完成品として使用でき、触り心地はナイロンそのもの。しなやかでサラサラとしており、3Dプリンター特有の段差などはまったく感じられない。樹脂を素材とした一般的な3Dプリンターでは、強度が弱く、あくまでも試作品の製造を目的としたものがほとんどだ。MJFであれば、一度に複数の部品を作り、そのまま完成品として使用できるため製造効率は非常に高くなる。実際に自動車の内装などに、MJFで製造した部品が採用されているという。
MJFの造形サイズは、380×284×380mm。この範囲に収まるものであれば自由な形状を製作でき、小型ドローンであれば機体フレームや周辺部品をまとめて造形することも可能だ。
海外ではドローン部品の製造実績も
国内ではこれまで、自動車やロボット分野を中心に試作品や少量生産向けとして導入されてきたが、海外ではすでにドローン製造への活用も進んでいる。機体フレームや固定翼の翼部だけでなく、エンジンマウント、バッテリーカバー、各種ブラケットなど、製造部品は多岐にわたる。
同展示会では、韓国やインドのドローンメーカーが実際にMJFで製造した機体や部品を展示しており、多くの来場者が手に取りながら、その軽さや仕上がりを確認していた。
近年は地政学リスクの高まりやサプライチェーンの見直しを背景に、国内でのドローン製造体制を強化する動きが広がっている。こうした状況を踏まえ、日本HPは今回初めて同展示会に出展し、MJFがドローン製造にも有効なソリューションであることをアピールした。なお、MJFは主に製造業向けに導入されており、価格はシステム一式で約7000万円から。
担当者は、「MJFは自動車業界などでは広く知られている技術ですが、ドローン業界ではまだ認知度が高くありません。試作品の製造だけでなく、完成品としての部品製造や量産にも活用できる技術と知っていただきたいです」と話した。
#Japan Drone 2026 記事
