写真:話をする本橋会長
一般社団法人日本建築ドローン協会 本橋健司会長によるJADA賀詞交歓会2026の開催挨拶。

 2026年1月23日、日本建築ドローン協会(JADA)は、JADA会員との情報交換・交流を目的とした「JADA賀詞交歓会2026」を開催した。新年の恒例行事として毎年行われ、今年は新春記念講演として中京テレビ放送の中村氏を招き、講演が行われた。

写真:話をする中村氏
中京テレビ放送株式会社 ビジネスプロデュース局 ビジネス開発グループ 副部長 中村鑑三氏。

 中村氏は、2011年に発生した東日本大震災を契機にドローンに着目。その後、2022年にドローンスクールを主体とする事業「そらメディア」を立ち上げ、テレビ番組制作で培った映像技術と災害報道のノウハウを武器に、多様な分野でドローンを活用している。

テレビ局発のドローン事業――映像制作の現場から産業インフラへ

 中村氏は2011年から日本テレビ系列の災害報道を担当するようになり、ドローンとの接点が生まれたという。「熊本地震で土砂崩れが発生した際の撮影では、ヘリコプターを使用すると騒音が大きく、捜索時に邪魔になってしまいます。そういったケースでは、『やはりドローンを活用していくべきだ』という見解も多く、導入が進みました」と、被災地撮影がドローン導入の原点だと振り返る。

 その後、創設した「そらメディア」では、「ドローンはひとつのインフラと考えています。このインフラを使って、視聴者や地域の課題解決に取り組んでいます」と中村氏は話す。放送機材の延長ではなく、社会基盤としてドローンを位置づける点が特徴だ。主なターゲットは労働力不足の解消であり、建設、農業、物流、防災といった分野での作業効率化を目指している。

 事業は国家資格に対応したドローンスクールを基盤に、産業機の講習・販売、災害報道システムの開発、ドローンショーの4本柱で構成される。「国家資格は自動車の普通運転免許のようなものです。取得しただけではすぐに商売にはなりません」と指摘し、測量や赤外線点検、物流の遠隔操作といった専門領域に特化した講習や伴走支援まで行う体制を整えた。

 テレビ局ならではの強みは、撮影技術の蓄積にある。ドローンの撮影手法であるフィックス、パン、上昇チルトダウン、ノーズインサークルなど9種類を体系化し、地上カメラでは得られない空間表現の価値を提示している。

写真:カメラの視野角とコンテンツの影響例
カメラの視野角による違いを分析。

 近年注目しているのが、視野角の違いによる映像の差別化だ。中村氏は、「広角中心のコンシューマー向け空撮は価格競争に陥りやすい傾向にあります。一方で、ズーム機能を活かした狭い視野角の映像は付加価値が高くなります」と語る。名古屋市で開催されたボクシングの世界戦では、名古屋城とIGアリーナを一画面に収める撮影を実現した。スタジオのクレーンカメラに加え、高度150mで飛行するドローンの画角比率を比較し、ほぼ同等であることを計算したうえで映像化に成功。系列局のカメラマンから「ヘリコプターで撮影したのですか?」と問われるほどの完成度だったという。「今後、このような映像の価値はさらに高まるでしょう」と展望を示した。

写真:紅葉と雲海を紹介するニュース中継画面
中京テレビでは、生中継でアナウンサーがドローンを使用し、より迫力のある映像を届ける工夫も行われた。

 中京テレビでは、ドローンを操縦できるアナウンサーの育成にも取り組んでいる。同局の鈴木康一郎アナウンサーは2022年に民間資格のインストラクターを取得し、2025年には一等無人航空機操縦士の資格を取得した。「災害時は最小限の人数で現地に入る必要があります。リポートと撮影を一人で担えれば人員の有効活用につながります」と背景を語る。過去に実地された中継の例では、台本進行後に送信機を持ち、自らドローンを操縦しながら景観と共に被写体の状況をアドリブで伝えた。安全管理については、ディレクターが補佐役となり、危険が想定される場合には即座に指示を出す体制を敷いているという。

 また、ドローンショーも注力分野のひとつだ。ドローンショー・ジャパンと連携し、屋外・屋内の双方で多様な演出を展開している。「ドローンショーはドット絵の表現であるため、機体数が増えるほど描写が精細になります」と説明。江の島での「未来のレモンサワー」演出など、広告効果の高いプロジェクトを実現してきた。

 特に注目されるのが、夜空に表示するQRコードだ。ショーの終盤にQRコードを描き、観客がスマートフォンで読み取ることで企業サイトへ誘導する。「表示後、クライアントサイトへのアクセスが大幅に増加しました」と、その効果を明かす。SNSでの拡散も確認され、広告媒体としての可能性を示した。屋内では体育館規模の会場で数十機を飛行させ、観客至近距離での演出も行う。結婚式での活用も始まり、エンターテインメント分野での収益源として成長している。

遠隔災害報道システムと産業応用――初動「2、3分」が生む価値

 テレビ局におけるドローン活用として、遠隔操縦による災害報道システムの構築も重要だ。中村氏が冒頭で話したとおり、被災地にはヘリコプターで近寄れない場所や、陸路が寸断されているケースも多い。そのような場合、ドローンを活用することで遠隔から被災地の様子をいち早く全国へ届けることができる。

写真:スクリーンに映された災害報道訓練の大津波警報発表のニュース画面
被災地の中継にドローンの映像を使用する訓練が行われた。

 そらメディアでは、防水・耐風性能に優れるDJI Matrice 350 RTKを導入し、レベル3.5飛行による遠隔運用を行い、「雨量約13mm、風速約15mでも運用可能でした」と実績を示した。

 背景には、東日本大震災での課題認識がある。東日本大震災の経験を踏まえ、今後の発生が危惧されている南海トラフ地震を想定した場合、三重県南部は津波被害が大きいとされる。しかし、名古屋空港からヘリコプターで向かうと到達まで約1時間を要してしまうという。一方、津波は数分で到達する可能性がある。この時間差を埋める手段として、現地常設型の遠隔ドローンを構想した。

写真:大津波警報発表のニュース画面
津波の様子もいち早く届けることが可能になる。

 遠隔ドローンの構想にあたり、中京テレビは三重県熊野市において大型地震が発生したことを想定した訓練を実施。緊急地震速報として状況を届けるためにドローンを離陸させ、海岸線約7kmを飛行して津波の接近を撮影した。中村氏は、「2、3分というわずかな時間で映像を届けることに、大きな意味があります」と重要性を強調する。海岸線付近に設置された定点カメラでは、津波が到達した後しか映せないが、ドローンなら海から迫る津波をリアルタイムに可視化でき、避難行動の喚起につながる。また、岐阜県・愛知県間に流れる一級河川・庄内川での洪水訓練も行われ、洪水が発生した際の映像をリアルタイムで届ける運用が試された。なお、平時は天気コーナーなどでドローンを活用するなど常設運用を進めている。

テレビ局におけるドローン導入の意義と今後の展望

 テレビ局において、ドローンを導入するメリットは、迅速な撮影に対応できることや報道フロア等から遠隔で操縦できること、そしてヘリコプターに対してコストを約600分の1まで削減することができるという点だ。一方、レベル3.5飛行に伴う飛行空域の制限や、国家資格保有者の育成といった課題もある。2026年4月には、三重県の熊野市役所へのドローン導入を予定しており、将来的には緊急地震速報と連動した自動運用も視野に入れて活用の幅を広げていく方針だ。