ERI Roboticsは、2026年7月15~17日に東京ビッグサイトで開催された「メンテナンス・レジリエンス2026」に、屋内点検用小型ドローン「Small Doctorシリーズ」3機種を展示した。同社は2026年1月にTOMPLAとCOBALTを統合して発足したERIホールディングスのグループ企業だ。小型ドローンの開発・販売だけでなく、グループが手がける建築・土木分野の点検や3Dデータ活用と組み合わせ、現場へのロボティクス導入を進めている。
ERIホールディングスは、建築物の確認検査や住宅性能評価などを手がける日本ERIを中核に、建設コンサルタント、測量、BIM/CIMなどを手がける企業を傘下に持つ。ERI Roboticsの藤本高史社長は、グループ内にドローンメーカーが加わったことで、これまで外部事業者へ依頼することの多かったドローンを、建築・土木の調査や点検を行うグループ各社の業務にも活用していく考えを示した。
用途に合わせて3機種を展開、住宅床下で導入検討進む
展示したSmall Doctorシリーズは、「Small Doctor 03」「Small Doctor Edge」「Small Doctor Crawl」の3機種。それぞれ機体サイズやカメラ構成を変え、点検対象となる空間に応じて使い分ける。
Small Doctor 03の寸法は335×290×80mm、機体重量520g、最大運用飛行時間16分で、3機種の中では最も大きいドローンとなる。別途オプション開発により最大150gの追加ペイロードを搭載でき、トンネルなど比較的広い暗所の点検に適している。センサーを搭載したデータ取得などへの活用を想定する。
次に、Small Doctor Edgeの寸法は260×222×90mm、機体重量530g、最大運用飛行時間18分。上方向90度、下方向90度までカメラをチルトでき、工場の配管や天井裏など、狭い空間に入り込みながら上部・下部を確認する用途を想定している。
3機種で最も小型のSmall Doctor Crawlの寸法は226×206×85mm、機体重量480g、最大運用飛行時間18分。住宅の床下や天井裏など、特に狭い場所への進入を想定したモデルだ。
Small Doctor 03とSmall Doctor Edgeは、本体1機とスタートセットで各180万円。導入時には操作予定者を対象とする運用講習が必要となる。Small Doctor Crawlは年間サブスクリプション方式で提供している。
なかでもERI Roboticsが引き合いの強さを感じているのが、Small Doctor Crawlを使った住宅の床下点検だという。従来は作業員が床下に入り、目視で確認していた場所を小型ドローンで撮影するもので、藤本社長によると、複数のハウスメーカーで導入の検討が進んでいるという。藤本社長は「建設業界でも人手不足が進んでおり、これまで人が入って目視で点検していた場所にドローンを利用したいという動きを感じています」と話す。
「ドローンを使える人」だけでなく、現場担当者が使える環境へ
一方、実際の現場に導入するには機体だけでは不十分だ。特に床下や天井裏などでは、カメラ映像から機体の位置や進行方向を判断する必要があり、壁や天井に近づいた際の機体挙動にも慣れる必要がある。このためERI Roboticsは、導入企業を対象とする操縦講習に加え、操作感覚を学ぶためのシミュレーターも開発しているという。
藤本社長は今後について、「これまでドローンを使った経験を持たない人たちが、自分たちの現場の調査にドローンを用いるフェーズに入ります。教育やトラブル対応、サポート体制を作っていかなければなりません」と説明する。そのうえで、「それを乗り越えられれば、ドローンを使える人だけが使う状況から、人を選ばずに日々の業務でドローンを使うという段階に変えていけるのではないでしょうか」と話した。
ドローンで取得したデータをBIM/CIMや3D空間へ
ERI Roboticsがもう一つ力を入れているのが、ドローンによる撮影・計測と3Dデータの組み合わせだ。ERIグループでは、国土工営コンサルタンツのBIM事業部などと連携し、Small Doctorなどで取得したデータから3Dモデルや点群データを作成する取り組みを進めている。
ブースでは、レーザー計測と画像データを組み合わせた3D空間の可視化も紹介した。活用している技術の一つが「3D Gaussian Splatting(3DGS)」だ。3DGSは、空間を多数の3次元ガウス分布で表現することで、撮影した画像から実写に近い見た目の3D空間を構築し、高速に描画する技術。2023年に発表されて以降、3D空間の可視化手法として活用が広がっている。
例えば建設分野では、現地を3D化したデータと計画中の構造物を組み合わせることで、施工前に構造物同士の干渉を視覚的に確認するといった利用が考えられる。現場の状況を3Dで共有できれば、設計や施工の検討だけでなく、関係者への説明にも利用できる。
グループでは、こうした3DデータをBIM/CIMや将来的なデジタルツインにつながる基盤の一つとして位置付ける。これまで地上のハンディースキャナーなどで取得していたデータに、ドローンによる上方や狭所からのデータを組み合わせることで、取得できる範囲を広げる狙いだ。
ERI Roboticsの前身であるTOMPLAは2025年10月にERIホールディングスの連結子会社となり、2026年1月にドローンの点検・計測やパイロット育成などを手がけてきたCOBALTと統合した。機体開発だけでなく、操縦教育や現場運用、さらにグループ各社が持つ建築・土木、BIM/CIMの知見を組み合わせられることが現在のERI Roboticsの特徴となる。
小型ドローンを販売するだけでなく、これまで人が行ってきた点検や調査の中にロボティクスをどう組み込み、取得したデータをその後の設計や維持管理にどうつなげていくか。今回の展示は、ERI Roboticsが目指す事業領域の広がりを示す内容となっていた。
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