KDDIスマートドローンは、7月15日~17日に東京ビッグサイトで開催された「メンテナンス・レジリエンス2026」に出展し、ドローンと自動充電ポートを組み合わせた遠隔運航サービスを紹介した。機体やドローンポートの手配・設置から、飛行許可申請、日々の運航、撮影データや点群データの納品までを一貫して受託するサービスである。
同社は、米Skydio社のドローンポート「Skydio Dock for X10」と、DJI社の「DJI Dock 3」を提供している。設置型のドローンポートを使い、建設現場やインフラ設備の定期巡回の自動化を実現。さらに、有事の際には、被災状況の確認に活用する動きが始まっており、日頃から使用しているドローンを有事に活かした“フェーズフリー”の運用も提案している。
機体の所有から飛行申請、データ納品まで一括受託
同社の遠隔運航サービスは、ドローンを導入する企業が機体やドローンポートを所有せず、必要な撮影データだけを受け取れる仕組みだ。KDDIスマートドローンが機材の手配とメンテナンス、飛行ルートの設定、許可申請、運航、データ解析・管理までを担う。定期飛行だけでなく、スポット運航や、写真測量による点群データの生成にも対応している。
担当者は、「何をどのように撮影したいのか、どのようなデータが必要なのかを提示してもらえれば、機体の設置から日々の運航、データの納品まで一気通貫で対応します」と説明する。ドローンに関する知識や操縦者を持たない企業でも、月額型の運用サービスとして利用できるという。
主な利用先の一つが建設現場である。工事の進捗確認や測量では、あらかじめ設定した同じルートを定期的に飛行し、時系列で取得した画像や3次元データの差分を比較することで、予定通りに工事作業が進んでいるか、トラブルは無いかなど、途中経過の計画を見直すことが可能になる。工期に合わせて3カ月から1年程度ドローンポートを設置し、工事終了後に撤去するケースもある。機材を購入して操縦者を育成するより、必要な期間だけ運航を委託したいという需要に対応する。
一方、ダム、変電所、河川、道路といった継続的な巡視が必要な施設では、ドローンポートを常設する運用を想定する。現場へ人が移動しにくい山間部などでは、モバイル回線や衛星通信を組み合わせ、遠隔地から機体の操作や映像伝送、データ送信を行う。KDDIスマートドローンは、国内で4,500回を超えるドローンポートの飛行実績を持つとしている。
運航は東京の拠点を中心に行うが、首都圏で災害が発生した場合に運航拠点が機能しなくなる事態を想定し、北海道からも遠隔運航できる拠点の体制を整えている。2025年に石川県で行った実証でも、東京と北海道から能登地域の機体を操作し、複数拠点から運航できることを確認した。
測量はDJI、障害物の多い巡視ではSkydioを提案
KDDIスマートドローンは、用途や現場環境に応じてDJI社とSkydio社のドローンポートを使い分けている。測量や3次元モデルの作成を目的とする建設現場では、写真測量に適したカメラを備えるDJI社のMatrice 4DとDJI Dock 3を提案する。一方、構造物や設備に接近し、障害物を避けながら巡視・点検する用途では、全方向の障害物回避機能を持つSkydio Dock for X10を主に提案しているという。
Skydio Dock for X10で運用するSkydio X10は、機体周囲の空間を認識して障害物を回避する自律飛行機能に加え、人物や車両を追尾する機能を備える。Skydio Dock for X10では、自動離着陸と充電、遠隔操作、映像のリアルタイム配信、撮影データのクラウドへの自動送信に対応する。
DJI Dock 3はDJI Matrice 4Dまたは赤外線カメラを搭載するDJI Matrice 4TDを格納し、24時間運用を想定した遠隔飛行に対応する。両機は、6月19日に国土交通省の第二種型式認証を取得した。認証の対象には、人口集中地区上空、夜間、目視外、物件から30m未満の飛行などが含まれる。ただし、実際の飛行では個別の機体認証や操縦者技能証明、運航条件などを満たす必要があるので注意が必要だ。
複数メーカーのドローンポートを同じ運航サービスで扱えることも、同社の特徴の一つである。特定メーカーの機体に限定せず、測量精度、障害物回避性能、カメラ構成、予算、セキュリティ要件などを踏まえて適切な機材を提案できることが同社の強みだ。
能登12拠点で道路・河川・港湾などを遠隔巡視
KDDIとKDDIスマートドローンは2025年10月、石川県能登地域の輪島市と七尾市に、Skydio Dock for X10を4カ所に常設した。平時のトンネル周辺の3次元モデル作成や橋梁点検と、地震発生を想定した被害状況確認を、東京と北海道から遠隔で実施した。
その後、石川県との取り組みを拡大し、2025年11月から2026年3月にかけて、奥能登を中心とした12カ所にドローンポートを増設。設置先は消防署、トンネル、水質管理施設、自治体庁舎などで、各拠点を起点に計32ルート、約126.8kmの航路を構築。9種類の用途で計102回の飛行を実施している。
検証した用途には、冬季の道路状況、ため池の貯水・堤体、河川の堆積土砂、海岸の護岸、港湾、砂防堰堤、地滑り防止地区などの確認が含まれる。不法投棄や産業廃棄物処理施設の保管状況の確認にも利用した。災害対応だけでなく、日常的な点検や監視に機体を使うことで、必要なときに確実に運航できる体制を整える狙いがある。
担当者によると、自治体から大雨後の道路状況やダムの水位、河川の状態を確認したいという依頼を受け、常設した機体を必要に応じて飛行させる運用も行っているという。同社は、石川県内で将来的に31拠点まで配備を広げる構想を持つとしている。
映像の常時監視からテレメトリー中心の1対多運航へ
ドローンポートを全国へ展開する上では、拠点ごとに操縦者を配置するのではなく、1人の操縦者が複数の機体を管理する「1対多運航」が必要になる。
KDDIとKDDIスマートドローンは、3月23日から4月27日にかけて、北海道、千葉県、東京都、石川県の複数拠点で、1人の遠隔操縦者が10機を同時運航する実証を行った。実証は、第三者の立ち入りを制限した区画内で実施した。
従来の方式では、操縦者が各機体のカメラ映像を常時確認するため、認知負荷の観点から同時に管理できる機体は5機程度が限界とされていた。今回の実証では、運航管理システム(UTM)に機体位置、高度、バッテリー残量などのテレメトリー情報を集約し、通常時は数値や警告を中心に監視。異常を検知した際に、該当する機体の映像を確認する方式を採用した。
複数の機体でバッテリー残量低下を同時に発生させた検証では、操縦者が対応の優先順位を判断し、全機を緊急着陸させた。視線計測や作業負荷の評価指標「NASA-TLX」を用いた検証でも、テレメトリー情報を中心とする監視方法が、操縦者の疲労や認知負荷の軽減に有効であることを確認したとしている。
担当者は、飛行経路や撮影対象が決まっている定期点検であれば、1人で10機を管理する運用は現実的だと説明する。一方、災害時は現地からの指示を受けながら撮影対象や飛行経路を変更する必要があるため、運航する機体数を絞り、依頼者とのコミュニケーションを優先する必要があるという。
今後は、定期点検で撮影した画像から異常箇所をAIで抽出し、操縦者は通知が出た機体や設備だけを確認する仕組みを検討する。人物や車両などの一般的な対象物の認識は機体側で実用化が進む一方、設備の傷や劣化を判定するには、対象設備ごとの画像と補修判断をひも付けた学習データが必要になる。同社は、AI解析事業者とのAPI連携を通じて、顧客ごとの点検モデルを開発する方針だ。
KDDIとKDDIスマートドローンは、AIドローンを全国1,000拠点へ配備し、平時の巡回・点検と災害対応に活用する構想を掲げている。KDDIスマートドローンは、機体メーカーにかかわらずモバイル通信を利用できる環境を整え、ドローンを遠隔運航可能なIoT機器として社会基盤へ組み込む考えだ。
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