長時間の無動力滑空に拍手が起きた一般部門
このほかの部門についても紹介しよう。
一般部門には飛行機タイプ、飛行船タイプ、ハイブリッドタイプが登録でき、44チームが参加。このうち16チームが決勝に進出した。マルチコプター部門と同様にメインミッションを行ったあと、救援物資運搬や宙返り、無動力滑空などのミッションをクリアし、帰還する。
翼を生かした無動力滑空ミッションにチャレンジするチームがいくつか出場。東北大学「Ɛï3༄(バタフライエフェクト)」は18秒、名古屋大学「そらかぜ」は20秒と好タイムを叩き出し、ゆったりたゆたう姿に観客から拍手が上がった。名古屋大学チームはパイロットが大きな声でどのように操縦するのか発言し、補助者も大きな声で助言を返していた。安全に配慮した運航の仕方といえ、すばらしい。佐賀大学「Azure Coatlus」はソ連が開発した音速機に似せた双発タイプとし、安定感を高めるねらい。オレンジと黒のきれいなボディが目を引いた。
優勝したのは5990点を獲得した東京農工大学「Narval」で、水平尾翼を2つ持つ双胴機。高台に設置された物資を回収する高所物資回収ミッションに備えて「プロペラと干渉しないように構造を検討」し、見事に成功させた。学生たちは「予定した全ミッションをクリアできてうれしい」と喜んだ。
高所物資回収はチームごとに工夫して取りやすさを追求していたが、それでもうまくいかなかったり、回収に成功しても物件投下機構が故障したりと、マルチコプターよりも精細な機体の作り込みが求められていた。また、帰還時には滑走路外で着陸するケースも多く、操縦の難しさを感じさせた。それでも果敢に挑戦するチームがあるということは、皆が飛行機タイプの活用に大きな希望を抱いていることの現れだろう。
ARマーカーやセンサーを活用した自動操縦部門
自動操縦部門は5チームが登録し、全チームが決勝に臨んだ。
東京都立産業技術高等専門学校「2NAa」はARマーカーを使って着陸にチャレンジ。会場の電波状況を考慮して「ARマーカーを読み込んでデータをマイコンに飛ばし、Bluetoothに変換する技術を使った」という。東京農工大学「KsenosⅡ」は位置エネルギー、速度エネルギー、LiDARを駆使して、自動操縦をコントロールする仕組みを考えた。日本大学理工学部「Puffin」は軽量化と頑丈さを求めた機体で出場。2色のパネルを読み取って自動飛行の実現をねらった。東京農工大学「山茶花」は練習通りの成果を発揮するのは難しかったようだが、機体を安定飛行させるためにチームメンバーが必死に対応していた姿が印象に残った。鳥取大学「T-sparrow」は大きな水平尾翼が特徴的。自動旋回をきれいに決めていた。優勝は2NAaで、3040点を獲得した。
大会を終え、表彰式が行われた。コンテストを主催する日本航空宇宙学会の澤井秀次郎会長(JAXA宇宙科学研究所教授)は「自由闊達に動き回るロボットを見ると、じつに心がワクワクします。しかし、皆さんお気づきのように、飛行ロボットを作るには空気力学や制御方法など、様々な分野の知識を統合してシステムとして成立させることが重要です。1つの分野に限らず、全体を俯瞰して大きなものを目指してください」と学生たちにエールを贈り、大会を締めくくった。
