モビリティの未来像を示す展示会「ジャパンモビリティショー2025」が、2025年10月30日から11月9日にかけて東京ビッグサイトで開催された。自動車だけでなく、空・陸のあらゆる移動手段が集結し、次世代モビリティの姿を来場者に提示する場として同展示会は進化を続けている。今年は脱炭素や自動化に加え、空の移動体験そのものを再定義するエアモビリティが大きな注目を集めた。南館で来場者の目を奪ったのは、トヨタ自動車のLEXUSブースに高々と掲げられた白い大型機体――米Joby Aviationが開発する空飛ぶクルマ「Joby S4」のモックアップだ。
Lexus × Joby、空の領域へ広がるブランドビジョン
トヨタ自動車が累計8.94億ドルを投じて支援するJobyプロジェクトは、2024年に静岡県裾野市の東富士研究所で日本初飛行を実施し、大阪・関西万博でも20回以上の飛行デモを披露したことで広く知られる存在となった。担当者は万博でのトヨタの役割を「裏方としてJoby Aviationを技術面で支えました」と説明し、運航面を担う可能性のあるトヨタグループ会社・エアロトヨタについても「具体性については、まだ議論段階です」と慎重に語る。
ではなぜ今回、LEXUSが自社ブースにJoby Aviationを迎えたのか。担当者は「移動そのものをラグジュアリーな体験へと拡張する」というLEXUSのブランドビジョンが背景にあると語る。陸海空をまたいで“移動の質”を追求する姿勢の中で、空の象徴としてJoby S4が選ばれたという。
モックアップを見上げると、1席のコックピットと4席のキャビンから成る5人乗りの構造が確認できる。間接照明の柔らかな光がシートの質感を引き立て、細部の造形まで実機の雰囲気を忠実に再現していた。担当者によれば「開始1時間ほどで多くの方に展示機を撮影して頂きました」と、万博での知名度向上を実感していた様子だった。
社会実装の鍵は型式証明、生産技術で支えるトヨタの役割
社会実装へ向けた最初の大きなハードルは型式証明の取得だと担当者は語る。電動エアモビリティとして新たな安全基準への適合が求められ、「技術的な難しさは多く、段階を踏んで前に進んでいる状況です」と説明する。トヨタとしては、自動車づくりで培った生産技術をJoby Aviationに提供し、量産に耐える品質へと高める部分でシナジーを発揮したい考えだ。
開発は引き続き米国で進むが、日本では東富士研究所でのデモや大阪・関西万博での飛行など“実際に飛ぶ姿を見せる機会”を積み重ねてきた。担当者によれば、2026年以降もこうした実証の場を継続したいという。
なお、前回(2023年)のジャパンモビリティショーでもJoby Aviationのモックアップは展示されていたが、今回のモックアップは万博で飛行したものとは別に、量産仕様を意識したモデルだという。「より一歩先へ進んだモックアップ」と担当者が語る通り、細部の作り込みからも社会実装に向けた進化が感じ取れた。
LEXUSブースに静かに佇む白い機体は、移動の未来を描く象徴として、今年のモビリティショーにおいて強烈な存在感を放っていた。
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