モビリティの未来像を示す展示会「ジャパンモビリティショー2025」が、2025年10月30日から11月9日にかけて東京ビッグサイトで開催された。自動車だけでなく、空・陸のあらゆる移動手段が集結し、次世代モビリティの姿を来場者に提示する場として同展示会は進化を続けている。

 今年は脱炭素や自動化、エアモビリティに加え、「上空から通信インフラを構築する」という新たな視点にも注目が集まった。会場では、成層圏を活用した通信技術の展示にも多くの来場者が足を止めていた。無人機「HAPS(High Altitude Platform Station)」を飛行させ、電波の届かない地帯を減らす取り組みが始まっている。

成層圏に基地局を置くという発想

写真:展示されたSceye
LTA型HAPSのSceye。ヘリウムで浮力を稼ぐ。気嚢の上部にはソーラーパネルのようなものも見られた。

 ソフトバンクが展示したのは、地上約20kmの成層圏に滞空する通信基地局を搭載した無人機「HAPS」の取り組みだ。飛行機のように揚力で飛行するHTA型(Heavier Than Air)と、ヘリウムで浮上するLTA型(Lighter Than Air)の2種類があり、同社は両方式の検証を進めている。会場では後者のLTA型にあたる高高度飛行船「Sceye(スカイ)」の模型が来場者の関心を集めた。

ソフトバンク HAPSコンセプトビデオ(ソフトバンクYouTubeチャンネル)

 Sceyeは米Sceye社との提携により日本国内での導入を目指している、全長65mの大型飛行船だ。ヘリウムを充填した気嚢(きのう)で浮上し、数か月にわたり成層圏で定点滞空できるという。担当者は「重いペイロードを長期間搭載できる点がLTA型の強みで、高品質な通信サービスにも対応できます」と説明する。広範囲を上空から見通しよくカバーできる点は、地上の基地局とは異なる新たな価値をもたらす。

写真:HAPSの説明パネル
ソフトバンクでは翼長78mもあるHTA型のHAPSの開発にも携わる。

衛星と地上の“間”を埋める通信インフラへ

 近年はスターリンクに代表される低軌道(LEO)衛星通信の普及が進み、ソフトバンクも2026年にスマートフォンとの直接通信サービスの開始を公表している。低軌道衛星は、広いエリアをカバーできることが大きなメリットだが、衛星は地上から距離があるため通信遅延が20〜40ミリ秒ほど発生し、通信速度も専用端末で約100~200Mbpsとなる。

 一方、成層圏に滞空するHAPSは低軌道衛星よりも地表に近いため、遅延を約1ミリ秒に抑えられ、地上基地局とほぼ同等のリアルタイム性を実現できる。空飛ぶクルマやドローンの運航管理への応用が考えられるほか、災害時には損傷した地上インフラを補完する役割も期待されている。

 現行の法規制を踏まえると、LTA型のSceyeが最も早く実用化できるという。2026年度には国内の一部エリアで通信を届ける「プレ商用」運用の実施を予定し、その成果をもとに2027年度以降の本格商用化を目指している。

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