モビリティの未来像を示す展示会「ジャパンモビリティショー2025」が、2025年10月30日から11月9日にかけて東京ビッグサイトで開催された。同展示会は自動車だけでなく、空・陸などのあらゆる移動手段が集結し、次世代モビリティの姿を来場者に提示する場として進化を続けている。今年も脱炭素・自動化・エアモビリティといったテーマが並び、大阪・関西万博で1か月にわたりデモ飛行を成功させたSkyDriveは空飛ぶクルマを展示した。
鉄道×空飛ぶクルマ──4社と連携し未来の移動体験を提案
今回のジャパンモビリティショーでは、メインプログラム「Tokyo Future Tour 2035」内にSkyDriveのブースが設けられ、テーマは「鉄道×空飛ぶクルマ」とされた。同社は東日本旅客鉄道(JR東日本)、九州旅客鉄道(JR九州)、近鉄グループホールディングス、大阪市高速電気軌道(大阪メトロ)の4つの鉄道事業者と資本業務提携を結んでおり、鉄道との連携を軸に未来の移動サービスを構築している。
例えばJR東日本とは、空飛ぶクルマを活用して岩手県・小岩井農場に新規開業するホテルと盛岡駅を結ぶ移動サービスや、ホテルや周辺観光と組み合わせたツアーの実施を検討している。また大阪メトロとは、大阪市内を東西南北4エリアでつなぐ「大阪ダイヤモンドルート構想」の実現に向け、関係機関との協議を進めている。
“鉄道に乗るように空へ”──体験型ブースで未来の移動を演出
鉄道と空飛ぶクルマの深いパートナーシップを来場者に直感的に伝えるため、ブースには実機のフルスケールモックアップに加え、プラットホームや空飛ぶクルマ用の自動改札機まで設置された。来場者はまず自動改札を通過し、プラットホームへ上がり、空飛ぶクルマ「SKYDRIVE」に搭乗。眼前の大型液晶ディスプレイには東京湾岸上空の映像が映し出され、空を移動する未来の体験を味わえた。
筆者も実際に体験したが、東京ビッグサイトから“離陸”し、レインボーブリッジへ向かう上空映像は爽快で、鉄道やバスより快適でスムーズな都市移動の可能性を感じさせた。アクセスに時間がかかる大型施設だからこそ、空飛ぶクルマの路線整備が有効に働く未来を想像させる展示となっていた。今回の会場である東京ビッグサイトは、鉄道・バスのアクセスが整備されているとはいえ、都心からやや距離があり、混雑することもある。空飛ぶクルマの路線が整備されれば、快適に移動できるルートとして一定の需要がありそうだ。
万博での検証成果と今後のサービスイン──SkyDriveが描く空の交通網
10月29日のメディアデーでは福澤知浩CEOが囲み取材に応じ、鉄道会社との連携状況について説明した。駅から目的地までの“ラストワンマイル”の移動を空飛ぶクルマで補う取り組みを進めており、JR九州とは大分県内、近鉄グループとは三重県志摩エリアでサービス展開を計画中だという。また大阪市内では森ノ宮駅ビル上にポートを整備し、2028年度以降のサービスインを目指していると語った。
大阪・関西万博では、会場と大阪港バーティポートを中心に多数のデモフライトを実施した。福澤CEOは「空を自由に飛ぶ姿を多くの人に見ていただき、非常に手応えを感じています」と成果を総括。当初は万博会場と大阪港を結ぶ2地点間飛行も検討していたが、風や船舶の通行状況を考慮し安全面から見送ったという。一方で、大阪港バーティポート周辺という人口密度の高い市街地での飛行が成功したことは「社会受容性の向上にもつながる価値ある検証でした」と述べ、得られたデータの重要性を強調した。
SkyDriveは鉄道と空を結ぶ新しい都市交通の実現に向け、空飛ぶクルマの実運用に必要な機体・ポート・サービス構想を着実に前進させている。
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