日本全国の大学、高等専門学校(高専)、高校の学生たちが飛行ロボット開発の腕を競う「第21回全日本学生室内飛行ロボットコンテスト」が、2025年9月27~28日にかけて、東京・日本工学院専門学校蒲田キャンパス日本工学院アリーナで開催された。5部門で合計97チームがエントリー。日々研究を重ねた成果として作り上げられた飛行ロボットが、ミッションをクリアしていった。ここでは、マルチコプター部門を中心に、28日に行われた決勝の模様をレポートする。

マルチコプター部門では大きな物資を運ぶ機体が登場

 マルチコプター部門にはマルチコプター、ハイブリッド機が登録可能。全国の大学および専門学校から10チームが参加した。決勝には以下の5チームが進出し、この順に出場した。

  • 京都工芸繊維大学 機体名「Fliegen25」
  • 東京理科大学 機体名「Kingfisher」
  • 東京農工大学 機体名「reshellii」
  • 金沢工業大学 機体名「ベンゼン」
  • 東京農工大学 機体名「D-Anteriore」

 競技の内容は、まず離着陸エリアに設けられたバーティポートから離陸。その後、飛行競技エリア内に設けられた物資投下エリアに、あらかじめ機体に積載された救援物資を1つ投下するメインミッションをクリアする。さらに高所物資運搬や8の字飛行、チームごとに設定するユニークミッションなどのミッションをこなしたあと、離陸したポートへ帰還する。なお、特定のポートに着陸できれば、自動離着陸ミッションにもチャレンジできる。離陸・帰還や各ミッションには得点が設定されており、クリアするごとに加算される。高得点を獲得したチームが優勝だ。

 各チームの取り組みをレビューしよう。

写真:ドローンを操縦する様子
写真:マイクを向けられて話をする学生
京都工芸繊維大学のFliegen25。緑色のガードを各ローターに取り付けている。

 京都工芸繊維大学のFliegen25はシンプルな形状のクアッドコプター。ローターごとにプロペラガードを装備している。メインミッションをクリア後に高所物資運搬にチャレンジし、物資のチキンラーメンミニ複数個の輸送に成功して高得点を叩き出した。自動離着陸にも挑戦。離陸は成功したが、着陸はうまくいかなかった。飛行させる際、機体周囲についた補助者が操縦者に大きな声で助言をする姿が好印象だ。出場した学生は「自動離着陸にはUWBを使った。昨年はマーカーを引かなければできなかった飛行が、無線でできるようになったのは進歩」と手応えを口にした。

写真:「健康」と書かれた紙を吊り下げて飛行するドローン
写真:インタビューを受ける学生たち
東京理科大学のKingfisher。掛け軸を展開した。

 東京理科大学のKingfisherはクアッドコプターで、3枚羽のローターを持つ。8の字飛行を成功させた。また、ユニークミッション「小さな主張」を実施。これはドローンに掛け軸を搭載して、飛行中に展開するというもの。チームのスローガン「健康」と書かれた掛け軸を見事に展開した。学生は「このチームは2年前に活動を始め、当初は飛行もできず、昨年は書類審査で落選しました。今年は決勝まで進めてよかった」と満足した表情を見せた。

写真:飛行するドローン
写真:ドローンを持ち話をする学生
東京農工大学のreshelliiは大きなボディが特徴的。

 空中ロボットの研究・開発が活発な東京農工大学の1チーム目の機体であるreshelliiは、機体前部に2発のプロペラを設け、全翼機のようなボディを持つ。キラリと光ったのが耐故障制御に関する技術だ。プロペラが全発停止してしまっても墜落することなく、浮き続けた。ボディの形状から揚力が発生しやすいのかもしれない。「飛行でやりたいことはすべてできたが、帰還が間に合わなかったのが悔しい。でも、やり切れた」と学生は自信を持って話していた。

写真:JCOMのマスコットを吊り下げて飛行するドローン
写真:横並びになる学生がインタビューを受ける様子
金沢工業大学のベンゼンが吊り下げているのは、現地を取材していたケーブルテレビ・JCOMのマスコット。

 金沢工業大学のベンゼンは円形のプロペラガードの中に、6つのローターが設置されたヘキサコプター。高所物資輸送では一度地上に着陸し、機体をうまく操縦して荷物を取り付け、再度離陸して高所運搬台に投下する。ほかのチームが60~85g程度のチキンラーメンの回収に挑戦するなか、ベンゼンはさらに大きな人形を運搬。見事に成功させた。学生は「チューニングを調整して姿勢のばらつきなくなったので、大型物資も運搬できた。目標点数の4000点を超えられてよかった」とガッツポーズで盛り上がった。

写真:飛行するドローン
写真:話をする学生
機体を立位で離陸させ、水平飛行に移行できる構造の東京農工大学のD-Anteriore。

 東京農工大学の2チーム目の機体・D-Anterioreは飛行機型の形状で、機体を起立させた状態で離着陸するスタイル。機体前部に補助翼、後部に主翼を備え、プロペラは機体最前部と主翼に合計3発を搭載する。飛行はとても安定しており、水平飛行による8の字飛行も優雅にクリア。翼が発生させる揚力を生かした耐全発故障制御も成功させた。バーティポート内にも無事に着陸。学生は「重い物資を吊るしたときに、操作性が難しくなった」と反省の弁を述べたが、非常に完成度の高い機体だった。

 優勝は4210点を獲得した金沢工業大学・ベンゼン。東京農工大学・D-Anterioreが3615点で続いた。

 コンテストはJUIDA(日本UAS産業振興協議会)が後援し、ブルーイノベーションやレッドクリフ、ORSOといったドローン事業者、SkyDrive、テトラ・アビエーションといった空飛ぶクルマメーカー、一般メーカーやエアラインが協賛している。協賛各社から各部門に賞品が贈られるが、マルチコプター部門を担当するのは、イームズロボティクスだ。会場では曽谷英司代表が出場チームの奮闘を見守った。曽谷氏は「金沢工大は弊社に話を聞きに来ていましたよ。ソフトウェアエンジニアがしっかりしている印象です。安定して飛行してましたね」と評した。