大阪府は2025年10月15~17日、東京都・東京ビッグサイトで開催された空飛ぶクルマ(eVTOL)の関連展示会「フライングカーテクノロジー」に出展した。会場では「空を駆けるビジネス~大阪発、都市型モビリティの新時代~」をテーマに、大阪府 商工労働部 成長産業振興室 産業創造課 参事の林氏が講演を行った。
講演では、大阪・関西万博における空飛ぶクルマの運航実績やバーティポート(離着陸場)の整備状況、そして“ポスト大阪・関西万博”に向けた今後の産業振興戦略について語られた。とくに、今後の重点分野として「観光分野での社会実装」を掲げたことが注目を集めた。
万博でのデモフライトと展示報告
林氏はまず、大阪・関西万博で実施された空飛ぶクルマの運航状況について紹介した。米リフトエアクラフト社の「HEXA(ヘクサ)」、日本のSkyDriveによる「SD-05」、米ジョビー・アビエーションの「Joby S4」の3機種が万博でデモフライトを実施したことを報告。また、日本航空と住友商事の共同出資会社Soracle(ソラクル)は、米アーチャー・アビエーション社製「M001(Midnight)」の実物を展示し、来場者の注目を集めたという。
さらに林氏は「こうしたデモフライトなどを通じて、多くの人に“空飛ぶクルマ”を実際に見ていただけたことは非常に意義深い」と振り返った。万博会場外でもデモフライトが実施され、空飛ぶクルマの社会的認知拡大に大きく寄与したとしている。
バーティポート整備の現状
続いて林氏は、大阪市内で進むバーティポート整備についても報告した。大阪市港区では大阪メトロが「大阪港バーティポート」を整備中であり、大阪市此花区の「大阪ヘリポート」ではeVTOL対応の格納庫が新たに設けられているという。
これらの施設は今後の商用運航や観光ルート実現に向けた基盤となるものであり、府としても整備支援を継続していく方針が示された。
観光を軸にした“ポスト万博”戦略
大阪府は、万博後の空飛ぶクルマ産業の成長戦略として「観光分野」をメインターゲットに掲げている。林氏は「関西には世界に誇る多彩な観光資源がある。まずは観光分野からビジネス化をめざし、関西一円での運航ネットワーク形成に向けて各府県と連携していく」と述べた。
さらに、今年度は「観光商品の開発」「ルート実現に必要な実現可能性調査」「商用運航に向けた実証」などをテーマにした事業予算を組んでおり、来年度にはバーティポート設置に関する新規予算も計画しているという。林氏は「大阪・関西万博で得られたレガシーを受け継ぎ、空飛ぶクルマをはじめとする先端技術の実装化、産業化に挑戦したい。“空飛ぶクルマのビジネスなら大阪”と言われるよう取り組んでいく」と力を込めた。
「大阪版ロードマップ」に基づく一貫した取り組み
大阪府では、空飛ぶクルマを新しい価値創造やものづくり振興に資する成長産業と位置づけ、早くから具体的な枠組みを整えてきた。2020年には産官学が連携する「空の移動革命社会実装大阪ラウンドテーブル」を設立。2022年には、国が策定した「空の移動革命に向けたロードマップ2021」を踏まえ、独自の「大阪版ロードマップ」を公表している。
このロードマップでは、2022年度までを「地固め・下準備期」、2023~24年度を「ビジネス開発・実証期」、そして2025年の大阪・関西万博以降を「事業立ち上げ・事業拡大期」と位置づけ、段階的に社会実装を進めてきた。
展示ブースで“先進地・大阪”をアピール
大阪府の展示ブースでは、これまでの取り組みをまとめたパネル展示や映像資料を通じ、「空飛ぶクルマ先進地・大阪」を力強くアピール。多くの来場者がブースの前で足を止め、パネル展示に見入ったり、大阪府のこれまでの空飛ぶクルマへの取り組みをまとめたパンフレットを受け取るなど、高い関心を示していた。
会期を通じて大阪府は、空飛ぶクルマの商用化に向けた実現可能性を示すとともに、ポスト万博時代の産業ビジョンを明確に打ち出した形だ。
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