Terra Droneは6月15日、決算発表および防衛事業戦略説明会を開催した。徳重社長は、防衛事業の新たな展開として、ウクライナの防衛関連企業2社の子会社化、偵察用ドローン「Terra C1」の提供に向けた合弁会社の設立、欧州防衛事業の中核拠点となる新会社「Terra Defense Europe」の設立の3つの戦略を発表。また、ロシアのウクライナ侵攻を契機に急速に変化する世界の防衛用ドローン市場についても見解を示した。

ウクライナ企業との連携を強化し、防衛ドローンのラインアップを拡充

写真:握手を交わす2人
WinnyLab社を連結子会社化したTerra Drone株式会社 徳重 徹代表取締役社長。

 まず発表されたのは、ウクライナの防衛関連企業2社の子会社化だ。

 Terra Droneはこれまで、Amazing Drones社と共同でロケット型迎撃ドローン「Terra A1」、WinnyLab社と共同で固定翼型迎撃ドローン「Terra A2」を開発・提供してきた。今回、両社の発行済み株式をそれぞれ50%取得して経営権を獲得。ウクライナで蓄積された実戦データを活用した開発体制を強化するとともに、日本を含むグローバル市場への展開を本格化させる方針だ。

写真:「Terra A1」
ウクライナで実戦配備されている「Terra A1」。

 さらに2つ目の戦略として、偵察用ドローン「Terra C1」の提供に向け、ウクライナ・リヴィウに拠点を置く固定翼無人機メーカーであるBesomar(ベソマー)社との合弁会社設立準備を開始することも明らかにした。

写真:カタパルトにセットされた「Terra C1」
写真:飛行する「Terra C1」
カタパルト発射式の偵察用ドローン「Terra C1」。

 Terra C1は、数十kmから数百km先まで進出し、敵の動向を偵察する固定翼型ドローンだ。一方、現在のTerra Droneの防衛用ドローンは、主にロシア製攻撃型無人機「シャヘド」などへの迎撃を目的としており、短距離迎撃用のTerra A1がそれに該当する。飛行時間約15分、飛行距離約32kmで短距離での迎撃を想定している。それに加え、中距離迎撃用のTerra A2も提供しており、これは飛行時間約40分、飛行距離約75kmと中距離を射程にしたものだ。新たにTerra C1を加えることで、偵察から迎撃までをカバーする多層的な無人防衛ソリューションの構築を目指すという。

写真:「シャヘド」
ロシア軍が使用している攻撃型無人機「シャヘド」。2000kmの飛行距離を持つという。

欧州市場への本格進出と変化する防衛市場

 3つ目の戦略として発表されたのが、新会社「Terra Defense Europe」の設立だ。

 ロシアによるウクライナ侵攻や中東情勢の緊迫化を受け、欧州では安全保障環境が大きく変化している。各国では米国への依存を減らし、防衛産業の自立を進める動きが加速しており、対ドローン(C-UAS)分野への投資も拡大している。

 Terra Droneは、ドローン運航管理システム(UTM)を手がける子会社Uniflyをベルギーに保有しており、その技術はすでに欧州10カ国で採用されている。一方、EUの防衛調達では域外企業単独での受注が難しいケースが多いことから、現地企業とのアライアンスを活用しながら事業参画を進める方針で、新設するTerra Defense Europeを欧州防衛事業の中核拠点に位置付ける。

防衛市場の変化と今後の事業戦略

 同説明会では、徳重社長が世界の防衛ドローン市場についても言及した。

 徳重社長は、「10億円の戦車が15万円程度のFPVドローン数機によって破壊される事例がウクライナで起きており、ドローンは明らかにゲームチェンジャーになった」と述べた。

 また、ウクライナ戦争の長期化や米国・トランプ政権の政策に対する不透明感を背景に、欧州各国では防衛力強化への機運が高まっていると説明。欧州の軍事市場は2025年までに約61兆円規模へ拡大し、このうち対ドローン技術(C-UAS)市場は約1.6兆円に達するとの見通しを示した。

 さらに、徳重社長は「従来の防衛市場は大手防衛企業の影響力が強く、新規参入企業は入札に参加するだけでも3~5年を要するなど参入障壁が高かった」とした一方、「ウクライナ戦争や中東でのドローン活用を受け、各国政府はできるだけ早くドローン関連の体制を整備する方向へと考え方が変化している」と指摘した。

 その変化を示す事例としてTerra Droneは、防衛装備庁から隊員の教育用に「モジュール型UAV(汎用型)」300機を約1億1500万円で受注したことも紹介した。同案件は5月に受注し、9月の納入を予定している。

 今後については、ウクライナで培った迎撃ドローンの実戦経験を「キラーアプリケーション」と位置付け、欧州やアジアの防衛プライム企業との協業を通じて事業拡大を図る考えを示した。また、現在ウクライナで運用されているドローンの多くは操縦者によるマニュアル操作が前提となっていることから、省人化を見据えた自律飛行技術の開発も進めていく方針だ。

 徳重社長は最後に、「日本の防衛のためにも、ウクライナで得た経験を日本へ持ち帰りたい」と述べ、防衛分野における技術開発を加速させる考えを示した。