三井不動産および日鉄興和不動産が開発した物流施設「MFLP・LOGIFRONT東京板橋」は、首都高速などの交通アクセスに優れた東京板橋区舟渡に立地し、2024年10月の開設以来、首都圏物流を支える重要な拠点となっている。
▼リアルな物流施設でドローンの実証ができる都市型拠点、板橋ドローンフィールド
https://drone-journal.impress.co.jp/docs/special/1188137.html
その施設に併設されているのが「板橋ドローンフィールド(以下、板橋DF)」だ。板橋区内の住宅が密集する、いわゆる人口集中地区(DID地区)に位置しながらも、稼働中の物流施設における点検用ドローンの各種検証や、自動充電ポート付きドローンを常設した実証など、先進的な取り組みが行われている。
施設内には、側面及び天井をネットで覆うことで屋内施設とみなす屋外コートも開設され、操縦訓練にも適した環境が整えられている。
この板橋DFに拠点を構えるのがKDDIスマートドローンだ。KDDIを通じて出資する米Skydioのドローンポート「Skydio Dock for X10」をはじめ、各種機体の使用方法の検証を行う。また、KDDIスマートドローンアカデミー板橋校を開設し、国家資格に対応した講座や、実際の現場を想定した実践的なカリキュラムを開設。企業を中心に多くの受講生を集めている。
電力業界にフォーカスしたリアルイベントを板橋DFで開催
2026年1月23日、三井不動産および日鉄興和不動産とKDDIスマートドローンは板橋DFにて「電力×ドローン会議」を開催した。電力業界における最新のドローンの活用事例をテーマに、「航路開拓」「サービサー」「機体」の3つの分野を代表する事業者が登壇し、それぞれの取り組みや成果を紹介した。
電力×ドローン会議は板橋DFのラウンジで行われた。冒頭、三井不動産ロジスティクス事業部 事業グループの小菅健太郎氏が登壇し、「弊社は長期経営方針でも掲げておりますが、『産業デベロッパー』として社会の付加価値の創出に貢献することを目指しています。さまざま方策を掲げておりますが、具体的な手段の1つが、こうしたコミュニティの提供です。MFLP・LOGIFRONT東京板橋内に板橋DFを開設したのもその一環であり、ドローンが持つ技術で社会課題を解決していく可能性を、板橋DFでの活動を通じて高めていければ」と語り、施設に込めた狙いを示した。
ドローン航路の社会実装を推進するグリッドスカイウェイ
最初に登壇したのはドローン航路の開拓に取り組むグリッドスカイウェイ有限責任事業組合 代表の足立浩一氏だ。ドローン航路とは、経済産業省によれば「ドローンが飛行する立入管理措置がされた範囲をもとに、地上および上空の制約要因に基づいて立体的に最外縁が画定された空間において、航路運航支援及び航路リソース共有を実現するもの」と定義されている。同組合では送電線や鉄塔の上空をドローン航路として整備する取り組みを進めている。
有人航空機は、送電線などとの接触を避けるため一定の距離を取って飛行している。その結果として生まれる空間をドローンの安全な航路として活用できる、というのが同組合の考え方だ。この航路を利用して、目視外・自動航行による送電線巡視や鉄塔点検を行う。同組合は、山間部にある鉄塔2基を点検する場合、人が現地に赴いて行う従来手法と比べ、ドローン航路を活用した点検は5倍以上の生産性向上につながるとの試算を示した。
足立氏は「全国共通の航路プラットフォームの構築を目指しています。これが実現すれば、発災時に他地域から持ち込んだドローンを即座に活用できる環境が整います。また、将来的には巡視だけでなく、平時・発災時にかかわらず物資輸送などにも応用できると考えられます。ドローン航路を“私道”から“公道”へと発展させていきたい」と意気込みを語った。
電力インフラ保守の実績を活かした九電ドローンサービスのソリューション
次に九電ドローンサービスから取締役 営業戦略部長 立石靖記氏が登壇した。九電ドローンサービスは、2019年7月から九州電力においてドローンを活用した点検や測量事業を開始し、2024年4月に九州電力から分社化。電力会社が自らのインフラ保守を目的にドローン活用を進めてきた経緯から、豊富な実績と知見を有しているのが強みだ。
講演では、ダム壁面の高精細点検の事例が紹介された。1億画素のカメラを搭載したドローンを使用し、揚水発電所の壁面を独自開発した自動飛行プログラムで撮影。斜面であっても壁面との離隔距離を一定に保ちながら飛行し、取得した画像をAIで解析することで、劣化箇所の抽出・診断を可能にしたという。従来であれば約1か月かかった工期を約1週間に短縮できた。
また、同社が独自開発している草刈りロボットについても紹介された。3連結の構造を採用することで、斜面に応じてボディを柔軟に追従させ、登坂性能を高めている点が特徴だ。平坦なボディの場合、斜面を登れないことがあるが、連結構造なら斜面に応じてボディを折り曲げられるので登坂しやすいというわけだ。開発の背景には、能登半島地震での現場経験がある。測量業務で現地に入った際、草木が生い茂り、測量用のレーザーを正確に地面に当てることが困難な状態であった。その結果、工期5日間のうち3日間を草刈りに費やしたという。「測量や点検の前段階としての草刈りの重要性と負担の重さを痛感し、草刈りロボットの開発につながりました」と立石氏は当時の苦労を振り返った。
Skydioが切り拓く電力設備の状態基準保全(CBM)
最後に登壇したのは、米国の機体メーカーSkydioの日本法人でアカウントエグゼクティブを務める福永直生氏だ。
Skydioでは点検における新しい概念として「状態基準保全(CBM)」を提唱している。従来は「1か月に1回」といった、スケジュールにもとづいた定期点検が一般的だ。Skydioは、これを「時間基準保全(TBM)」と位置づけ、突発的な異常への対応などができないだけでなく、まだ使用可能な部品を交換するといった無駄が生じる可能性もあるとしている。一方、同社が提唱するCBMではドローンを頻繁に飛行させてデータを収集し、資産の状態を常時把握することで故障の予兆をとらえて最適なタイミングでの修繕や交換を可能にする。
CBMを実現するために使用するのが、同社が開発するSkydio X10やSkydio Dock for X10といった機体だ。Skydio X10は高い自律飛行性能を持ち、障害物回避能力にも優れている。加えて、磁気の影響も受けにくいため、電力設備での点検にも使用しやすい。Skydio Dock for X10は機体の離着陸地点となり、自動充電にも対応し、ルートとスケジュールを設定するだけで無人の自動巡回によるデータ収集が可能になる。さらに、電力企業向けに新しいサービスも準備している。「Asset Based Inspection」は「GISデータ(位置情報)とアセットID(資産情報)」をシステムに連携させ、自動で飛行ルートを生成する機能だ。より効率的なデータ収集が可能になる。
なお今回の講演では、屋内点検向けの新製品「Skydio R10」が公表された。機体全体を覆うプロペラガードを装備し、26cm四方のコンパクトなサイズながら、LEDライトやLTE通信に対応するデュアルSIMを搭載する。詳細は今後随時発表される見通しだ。
業界横断の知見共有を目指すKDDIスマートドローンの狙いと板橋DFの役割
電力×ドローン会議を主催したKDDIスマートドローンは様々な分野のウェビナーを開催してきたが、特定の業界に絞って深堀りするようなリアルイベントは初の試みだったという。KDDIスマートドローンは、今回のイベントの狙いについて「電力業界でのドローンの利活用の情報を共有・連携できるようにしたいと考え、リアルイベントの開催に至りました。情報を広く共有することは一朝一夕で完了しないので、今後も様々な領域で開催していきます」と話した。
▼板橋ドローンフィールド-MFLP・LOGIFRONT東京板橋
施設利用のための会員登録(無料)は下記URLから
https://mflp.mitsuifudosan.co.jp/itabashidf/
また、KDDIスマートドローンでは実証実験に至る前の検証を板橋DFで行うケースが多いという。「実証実験に入る前段階の検証を、都内で試したいタイミングですぐに行えることが大きな利点」とその有用性を指摘した。三井不動産とは同社の日本橋の施設で、首都直下型地震を想定してドローンポートを使い情報収集する取り組みを共同で行うなど、関係を深めている。KDDIスマートドローンとしては今後も板橋と日本橋の2つのエリアを積極的に活用したい考えだ。
