100機のドローンが「屋内」でショーを披露!
レッドクリフ「FYLo EDU-JP」デモンストレーション
ドローンショーの企画・運営を行うレッドクリフは、国内最大規模となる100機による「屋内」ドローンショーのデモンストレーションを実施した。イベント企画会社や広告代理店など関係企業から約70人が来場し、大きな注目を集めた。その模様を取材した。
広告業界も注目、屋内型ドローンショーの可能性
ドローンショーは、2021年の「東京2020オリンピック競技大会」開会式で披露されたのを契機に、国内での開催が徐々に増加していった。弊社(インプレス)が発刊している「ドローンビジネス調査報告書2025」では、2024年度のドローンショーにおける市場規模は20億円と推定。前年比2倍以上という急成長分野で、2030年度には104億円へと拡大が見込まれている。
冒頭に「屋内」と強調したのには理由がある。先述の開会式をはじめ、これまでのドローンショーは屋外で実施されることが一般的だった。屋外であれば演出可能な空間に余裕があり、表現の幅も広がる。使用されるドローンの数も、数百機規模が標準である。
一方、屋内では状況が大きく異なる。天井や壁に囲まれた限られた空間でショーを構成する必要があり、自由な演出には制約が生じる。さらに、ドローンが自機の位置を把握するために必要なGNSSの電波が届きにくく、緻密な位置制御が求められるドローンショーにとっては大きなハードルとなる。
「FYLo EDU-JP」の技術が支える新たな表現力
レッドクリフは、4月1日から新機種となる屋内ドローンショー用機体「FYLo EDU-JP」の販売を開始した。広帯域の周波数を使用することで精度の高い位置検知や測距を実現するUWB(Ultra Wide Band/超広帯域無線通信規格)や、反射光の取得時間をもとに自機位置を測定するToF(Time of Flight)測位に対応。屋内でも正確な位置での飛行が可能になった。
もっとも、国内には屋内ドローンショー用の機体がほかにもあり、同様の技術で飛行している。しかし、FYLo EDU-JPは200機以上の同時飛行を可能としている点が大きな特徴だ。従来の屋内ドローンショー用の機体は、同時飛行が最大数十機程度であったため、大幅な進歩であり、表現力もこれまで以上に向上することが期待される。
機体数は合計で110機。機体を取り囲むように設置された黒い棒がUWBの基地局で、ドローンは囲った範囲のなかで距離や角度を計算しながら自己位置を推定する。
100機のドローンが屋内で舞う!繊細なライティングと立体表現
デモンストレーションは複合施設内にある体育館で行われた。その面積は49.4m×29.6mで、バスケットボールのコート2面ほどの広さだ。高さは13mあり、ドローンショーの実施に支障はない。
まずは10機によるショーが披露された。飛行エリアは5m四方で設けられ、そのなかでゆったりとした音楽に合わせて、ドローンがライトの色を変化させながら飛び交う。5機1組になって円や螺旋を描くように周回飛行したり、10機が波打つように高度を上げ下げしたりしてみせた。約4分間のショーで飛行は安定しており、ドローンの空切り音も気にならずに楽しく観覧できる。
続けて50機による飛行を試みる。5m四方ではさすがに窮屈ということで、17m四方の飛行エリアが用意された。音楽が始まると、それに合わせて離陸前のドローンがフラッシュ。やがて離陸すると観覧席の前まで50機が一斉にやってきて迫力満点だ。
50機で球体を描くシーンでは立体感がよく表現されていた。最も印象に残ったのが、50機が2列に並び、悠々と空中を漂う描写。その様子はどこか竜が空を往く姿を思わせた。5分ほどの間、飛行エリアを目いっぱいに使う、50機による見事なショーが行われた。
100機によるショーは27m×14mの小さめな飛行エリアで行われた。これは、購入者がドローンショーを実施する際に、広いエリアを確保できないことを考慮し、100機に対して最小エリアで実施された。50機で使用した飛行エリアよりも、面積としては3割ほど増えた格好だ。
100機のドローンは、20機ほどが1つのグループとなって、ゆっくりと光を灯しながら飛び立った。その後流れ始めたしっとりとした曲に合わせて、ダイナミックながらも繊細なフォーメーションを披露していく。輪が重なる描画では、その数が増したことで、上下方向の立体感がより際立った。
100機になると、すべての機体が光を放てば十分に明るい。だが、あえて光を落とし、数機のみを明るく点灯させる演出は、まるで星が瞬いているかのような繊細な表現となった。明暗のコントラストがつくことで、ショー全体に緩急が生まれたのが印象的だ。
ドローンショーを終えたあと、ドローンが着陸するまでの間に明かりを灯しながら、わらわらと降りていく様子もまた楽しみの1つだ。屋内ドローンショーでもそれは見られるが、100機になると見ごたえがあった。
イベント会場・コンサートホールへの導入目指す今後の展開
100機のショーでは、機体数の多さで圧倒されたものの、屋外に比べると躍動感ある動きが少なかった印象だ。この点をCEOの佐々木氏に尋ねたところ「27m×14mのサイズだと、100機では自由に移動できる空間が足りなかったです。屋内ドローンショーは開催する場所の広さによって適切な機体数があり、今後も丁度良いポイントを探っていきたい」と解説。
当日プロデューサーを務めた吉江氏も「体育館の広さを最大限に使えばさらに多くの演出が可能です。一方、我々としては機体の購入者に、ショーを実施できるようになってほしいと考えています。ただ、検証をするための広い屋内会場を見つけるのが難しく、確保しやすい最小のサイズでデモを開催しました」と飛行エリアの設定意図を説明してくれた。
ドローンショーでは、観客のスマートフォンによる電波が悪影響を与える恐れがあり、今回も事前に機内モードへの切り替えが呼びかけられていた。吉江氏は「屋外に比べて、屋内は観客と飛行エリアまでの距離が近く、何かしら影響が出る可能性がある」と見込んでおり、対応策を検討しているという。
最後に、佐々木氏にこれから屋内ドローンショーをどのように展開していくのか尋ねた。
「FYLo EDU-JPは40m四方、高度は30mまでの飛行エリアを設定できるので、そのなかで展開できる演出を考えていきたいですね。コンサートホールやドーム型施設などであれば、十分な空間が確保できるので、導入を目指したい。機体はプロペラガードを備え、人に対しても安全な設計となっており、観客に可能な範囲で接近する演出なども考えています」と話した。
屋内ドローンショーは屋外と比較して初期投資を抑えられ、参入しやすいのも特徴だ。しかし、しっかりとした知見が無いと収益化は難しい。他社が真似できない100機単位の屋内ドローンショーを武器に、レッドクリフが市場をどのように開拓していくか注目だ。