楽天株式会社(本社:東京都世田谷区、代表取締役会長兼社長:三木谷 浩史、以下「楽天」)と合同会社西友(本社:東京都北区、最高経営責任者:リオネル・デスクリー、以下「西友」)は、神奈川県横須賀市内の「西友 リヴィンよこすか店」から、観光地である猿島を訪問している一般利用者へ商品を届けるドローン配送サービスを、今夏2019年7月4日(木)より約3か月にわたって提供すると発表した。

日本初の商用ドローン配送は1.5km先の離島に5分で空輸

 日本初となる楽天と西友による商用ドローン配送サービスは、2019年7月4日から約3ヶ月にわたる木・金・土曜日に限って提供される。飛行ルートは、西友リヴィンよこすか店から、東京湾で唯一の離島になる猿島までの約1.5km。

 配送に使われるドローンは、中国の京東製でペイロードが5kgある3アーム6プロペラの機体。飛行ルートがほぼ海上になるので、パラシュートの代わりに脚の部分にフローターが取り付けられている。

 また、京東製ドローンは、RTKを利用して位置情報を補正するので、着陸時に従来のような画像認識は行わない。

 今回のサービスで京東製ドローンを採用した理由について、楽天のドローン・UGV事業部の向井秀明ジェネラルマネージャーは、「ビールやバーベキューの食材に医薬品など約400品目の商品を運ぶので、中国での実績もありペイロードの高い京東製ドローンを選びました」と話す。

 配送地に選ばれた猿島には、年間20万人が来島して釣りや歴史遺産の散策に、夏はバーベキューで賑わう。島までの交通手段は、三笠桟橋からの連絡船のみで島に売店はない。そこで、 西友 リヴィンよこすか店ではドローン空輸による食材や飲料などの配送が、新しいサービスの発展につながると考えた。

 西友の執行役員シニア・バイス・プレジデント EC事業本部 竹田珠恵氏は、「西友も以前から、ネットスーパーでのドローン配送を検討する中で、今回、楽天からお話しをいただき、ぜひともという形で参画させていただきました。将来的には、楽天と共同運営をする『楽天西友ネットスーパー』においても、店舗でのお買い物が困難な方も含めたすべてのお客様に、品質の高い商品を低価格でお届けし、より多くのお客様の豊かな生活に寄与したいと考えております。」と話す。

採算よりもドローン配送の利便性を体験してもらいたい

 猿島へのドローン配送は1回500円で、1日に最大で8便が提供される。そのため、楽天がドローンの配送料だけで採算を得るのは厳しい。その点について楽天の常務執行役員である安藤公二氏は、「本サービスでは、一般のお客様がご自身で注文した商品が、ドローンで空から配送されるという先進的なショッピング体験を提供します。今回の取り組みをはじめ、今後もより多くの方にドローン配送の利便性を感じていただけるための配送料にしました。」と説明する。

 楽天では、横須賀市におけるドローン配送実施ビジョンを実現するための第一歩として、今回の猿島ドローン配送に取り組み、人がいない海上を飛行して、運用のノウハウを蓄積していく。その後、丘陵地や階段が多い横須賀市の買い物困難者を支援するためのドローン配送や、災害時などの緊急時における救援物資の配送実現を目指す。

雨天と風速10m/s以上では配送中止

 発表会の後半では、楽天ドローンショッピングアプリを使って、実際の注文から猿島までの空輸のデモンストレーションが行われた。楽天の向井氏がスマートフォンを手に、アプリから商品を注文する。今回は、バーベキューを楽しむ人たちの注文という想定で、缶ビールの6缶パックと牛肉に絆創膏が選択された。注文が完了すると、 西友 リヴィンよこすか店のスタッフが商品を持ってきて、楽天のドローン配送スタッフに手渡す。その商品をドローンに取り付けられたコンテナボックスに収納すると、飛行の準備が整う。そして、楽天のスタッフが飛行制御システムから離陸を指示すると、ドローンは猿島に向けて飛び立った。

アプリ注文画面

 西友 リヴィンよこすか店は、東京湾に面した「うみかぜ公園」と「花崎造船所」に隣接した立地にあり、海まで数百メートルの距離にある。離陸直後にドローンは港を目指し、そこから海上のルートを直進する。そして、猿島海水浴場に設けられたポートに着陸すると、注文された商品を投下し、帰路につく。片道約1.5kmの距離は、約5分で飛行する。

 ドローン配送サービスは、雨天や風速10m/s以上の気象条件で中止される。気象条件も含めた配送の可否は、利用者が注文する楽天ドローンショッピングアプリの画面に表示される。荒天で配送ができないときには、アプリの画面から商品も注文できなくなる。

 デモンストレーションの終了後に、楽天が用意したシャトルバスで猿島への連絡船が発着する三笠桟橋まで移動して、一時間に一便の船で猿島まで渡った。船による移動時間を経験すると、5分で商品を届けるドローン配送サービスの利便性も感じられた。

 楽天では、日本初となる商用のドローン配送サービスの実現を通して、ドローンの社会実装とサービスモデルの構築に取り組んでいく、としている。