写真:森林の中で飛行する2機のドローン

 驚くような低価格と高性能でデビューしたDJI Lito 1 / X1。両モデルとも249gの小型軽量ながら360°障害物検知を搭載し、36分の最大飛行時間(インテリジェントフライトバッテリーPlusなら52分!)も可能とした高コストパフォーマンスモデルとなっている。今回はこのLitoシリーズの有用性について検証していきたい。

DJI Litoシリーズと小型カメラがあればそれでいい

 近年のDJI空撮機の高画質化は凄まじいものがある。小型軽量機でさえTV番組(バラエティ等)でも使えるレベルの画質を持っているくらいだ。そこで、筆者が最近感じていることがあるのだが、趣味で映像を楽しむのならば、かさばる超高画質ドローンを持ち歩くよりも、10万円くらいの小型ドローンとOsmo Pocketのような小型ジンバルカメラがあればそれらしい映像を作れるのではないか…と。そこで、東京都檜原村にある「龍神の滝」にLito X1シリーズと同じくDJIの小型ジンバルカメラOsmo Pocket 4を持って行ってきたときの映像を作成した。

DJI Lito X1(一部Osmo Pocket 4)で撮影。D-Log Mカラーモードで撮影後、色調整を加えている

 なんともそれらしく撮れるではないか。SNSにUPしたり、仕事先の方に映像を見せたりしてみたのだが、フルセットで約10万円レベルのLito X1で撮ったと思う方はほぼおらず、タネ明かし的に撮影で使用したドローンの価格を教えると驚く方がほとんどだった。

DJI Lito 1とLito X1の違い

 Litoシリーズは、これまでDJIにエントリーシリーズとしてラインナップされていたMiniシリーズ(「Mini 3」など“Pro”がつかないスタンダードシリーズ)にかわりリリースされた空撮エントリーモデルだ。旧シリーズでは4K映像は撮影できるものの障害物検知センサーがなく、多少機体性能に妥協しながら提供していたところが否めなかったが、Litoシリーズは基本的に4K映像撮影、スローモーション撮影、全方位障害物検知などを備え、上位機種にも見劣りしない機能を備えながら低価格化しているところが大きな特徴だ。

写真:DJI Lito 1とLito X1
見た目はあまり変わりのないDJI Lito 1とLito X1。カメラ・レンズまわりの形状が少し違うくらいだ

 また、Litoシリーズはより低価格なLito 1と多少価格は上がるが高画質撮影ができるLito X1の2機種がラインナップされており、機種選びが悩ましい。違いをざっくり説明すると、機体の飛行はほぼ同じで、LiDARセンサー搭載による安全性と、カメラ性能・撮影性能を高めたのが上位機種Lito X1という感じだ。カメラ性能についてもう少し詳しく解説すると、Lito 1は小型セルフィー用ドローン「DJI Neo 2」と同等の1/2インチサイズのセンサーを搭載し、Lito X1はNeo2より一回り大きな折りたたみ型セルフィードローン「DJI Flip」と同等の1/1.3インチセンサーを搭載しているほか、高画質な収録ができる「D-Log M」にも対応しているところが違いとなっている。

DJI Lito 1 / Lito X1の比較

 Lito X1がLito 1よりも優れているところを赤字で記している。カメラ性能のほかにも、内部ストレージが42GB入っているので、MicroSDカードを入れなくても1日くらいの撮影には対応できるのも便利なポイント。

DJI Lito 1DJI Lito X1
重量約249g(インテリジェントフライトバッテリー搭載)約249g(インテリジェントフライトバッテリー搭載)
サイズ
(長さ×幅×高さ)
展開時:183×251×79mm展開時:183×251×79mm
最大水平速度18m/s(スポーツモード)
12m/s(ノーマルモード)
12m/s(トラッキングモード)
18m/s(スポーツモード)
12m/s(ノーマルモード)
12m/s(トラッキングモード)
最大飛行時間36分(標準バッテリー)

52分(インテリジェントフライトバッテリーPlus使用時)
36分(標準バッテリー)

52分(インテリジェントフライトバッテリーPlus使用時)
最大風圧抵抗10.7m/s10.7m/s
内部ストレージなし42GB
イメージセンサー1/2インチCMOS、有効画素数48MP1/1.3インチCMOS、有効画素数48MP
レンズFOV:79°
焦点距離(35mm判換算):26.2mm
絞り:f/1.8
フォーカス:4m〜∞
FOV:82.1°
焦点距離(35mm判換算):24mm
絞り:f/1.7
フォーカス:1 m〜∞
最大静止画サイズ8000px × 6000px8064px × 6048px
写真フォーマットJPEG/DNG(RAW)JPEG/DNG(RAW)
動画解像度4K:24/25/30/48/50/60/100fps
FHD:24/25/30/48/50/60/100fps
2.7K縦向き:24/25/30/48/50/60fps
4K:24/25/30/48/50/60/100fps
FHD:24/25/30/48/50/60/100/200fps
2.7K縦向き:24/25/30/48/50/60fps
最大動画ビットレート130Mbps130Mbps
カラーモード&

サンプリング方式
ノーマル:
8-bit 4:2:0(H.264)
10-bit 4:2:0(H.265)
ノーマル:
8-bit 4:2:0(H.264)
10-bit 4:2:0(H.265)

D-Log M:
10-bit 4:2:0(H.265)
デジタルズーム動画
4K:1~3倍
FHD:1~4倍
2.7K縦向き撮影:1~3倍

写真
1~3倍
動画
4K:1~3倍
FHD:1~4倍
2.7K縦向き撮影:1~3倍

写真
1~3倍
障害物検知タイプ全方向モノキュラービジョンシステム
(機体底部に赤外線センサーを補助的に搭載)
全方向モノキュラービジョンシステム
(前向きLiDARと機体底部の赤外線センサーを補助的に搭載)
映像伝送システムO4O4
最大伝送距離8km8km
価格DJI RC-N3付属:47,520円
Fly More コンボ(RC-N3):69,300円
DJI RC-N3付属:54,450円
Fly More コンボ(RC-N3):79,970円
Fly More コンボ(RC2):95,700円

滑らかな操作感で初心者にも操縦しやすい!

写真:滝の手前を飛行するドローン

 まず、飛行させたイメージだが、何より滑らかで操縦がしやすい。機敏に動くわけではないが、空撮をしようとしたときに必要なスムーズな加減速とブレない安定感が素晴らしく感じた。ドローンの基本操作ができる人なら思い通りの飛行経路・速度・加速感で撮影ができるのではないだろうか。

 また、障害物検知機能も優秀だ。今回の撮影環境は枝葉が多く、気を抜くと接触のリスクも高い場所だったが、枝葉に近づいたDJI Lito X1はスムーズに自動回避していた。上下2つのビジュアルセンサー+前向きLiDAR(X1のみ)+下方赤外線センサーのみの障害物回避機能とは思えない精度だ(上位機種は前後や上下に2〜3つずつビジュアルセンサーを備えるのが通常)。

障害物回避設定画面
障害物回避機能は「迂回」と「ブレーキ」と「オフ」を設定できる。障害物手前で止まる「ブレーキ」に対して、「迂回」は障害物を回避しながら飛行する

 そして、撮れた映像はほんとうに美しい。下記はサンプル映像の2カット目だが、明るいところから薄暗いところまでキレイに描写できている。

写真:森の中の河川

 今回のサンプル映像のような、機体と距離が近い被写体では4K / 100fpsの映像はとても効果的だ。映像のすべてがスローだと成立しないが、ところどころにアクセントとしてスロー映像を入れると“雰囲気”のある映像に仕上げることができる。

スローモーション映像は100fpsだが水滴の粒を捉えることもできる

より高画質映像を追求する「D-Log M」

 DJI Lito 1 / Lito X1 のポテンシャルはとても高い。比較表の「カラーモード&サンプリング方式」の欄にある通り、両機種とも色が表現できる細かさが10bit(約10億7,000万色、Lito 1の8bit収録時は約1,677万色)となっており、Lito X1は「D-Log M」収録も可能だ。

 D-Log Mは色編集を前提とした収録方法で、撮影時はコントラストや彩度が抑えられた「色が薄い映像」になるが、色編集してもとの色に戻すと明るい空から暗い影まで白とび・黒つぶれさせずに幅広い明暗差(ダイナミックレンジ)の情報をもった映像が撮影できる。動画編集ソフトでDJIから提供されている「LUT」という色情報を適用させるだけでもよいし、こだわる人であれば手動で色調整をしてもよい。この“ひと手間”をかけるだけでさらに美しい映像を作ることができる。

写真:LitoX1 D-LogM で撮影した滝(無加工)
写真:LitoX1 D-LogM で撮影した滝(色調整)
少しグレーがかったD-Log Mで撮影したままの映像(左)とLUTを適用して色を戻した映像(右)

 実際に、Lito 1のノーマル撮影(H.265、10bit)とLito X1のノーマル撮影(H.265、10bit)及びD-Log M撮影で同じ景色を比較してみた。陽の光の強さが変わらないように同時飛行させて撮影したため、Lito 1 / Lito X1の画角に多少のズレがあるのをご了承いただきたい。

写真:Lito 1で撮影した滝
写真:LitoX1でノーマル撮影した滝
写真:LitoX1でD-LogM撮影した滝
左からDJI Lito 1 ノーマル、Lito X1 ノーマル、Lito X1 D-Log Mの切り出し画像

 正直なところ、ノーマルの撮影であればLito 1もLito X1もそれほど明確な差を見つけることはできない。Lito X1のカメラセンサーはLito 1よりも少し大きいことから、撮影環境がもっとくらいところではセンサーサイズが大きい(より多く光を取り込むことができる)Lito X1のほうがノイズの少ない美しい映像を撮ることができるかもしれない。

 ただ、今回の撮影環境でもLito X1のノーマルとD-Log Mでは明らかな差が出ていた。葉や地面に当たった陽の光がノーマル撮影では白飛び気味なのに対し、D-Log Mでは明らかに滑らかな階調で色が残っている。

写真:Lito X1でノーマル撮影した葉
写真:Lito X1でD-LogM撮影した葉
画面左下の葉を拡大したもの。DJI Lito X1 ノーマル(左)は葉に光があたった部分が白く飛んでしまっているが、Lito X1 D-Log M(右)は葉に光が当たった部分も色が残っている
写真:Lito X1でノーマル撮影した地面
写真:Lito X1でD-LogM撮影した地面
画面右側の地面を拡大したもの。こちらもDJI Lito X1 ノーマル(左)は地面に光があたった部分が白く飛んでしまっているが、Lito X1 D-Log M(右)は地面に光が当たった部分も色が残っている

 このように、D-Log M設定の撮影は、ちょっとした“ひと手間”をかけるだけでより高画質な撮影をすることができる。LUTを適用するだけではわずかな差かもしれないが、それでも映像全体で醸し出す高画質感は変わってくるし、手動で調整するときには色が破綻することなく自分のイメージに合った調整ができるのでより効果的だ。撮影した動画を編集したいと考えている方は、撮影時はぜひD-Log Mを選択してほしい。

手軽に高画質空撮を楽しむか、手軽で高画質な空撮を追求するか

 DJI Lito 1 / Lito X1のどちらを選択するかは、撮影したデータをそのままSNSやスマートフォンで楽しむか、色調整を加えながら高画質な映像を楽しむかで決まってくる。そのまま楽しむならLito 1がベストな選択だし、色調整や編集を楽しむならLito X1が最適だ。そして、安価ながらもこの高画質な空撮ドローンと、Osmo Pocketなどの小型のカメラ(スマートフォンの高画質カメラでもよい)を持っていけば、ハイクオリティな映像を作り上げることがかんたんにできるのだ。ぜひ、手軽に高画質な映像を作成する楽しさをDJI Litoシリーズを通して感じてほしい。