2026年7月3日、スペースデータは、宇宙AIプラットフォーム「SpaceBrain(スペースブレイン)」の作戦運用領域において、航空作戦模擬機能「AIR OPERATION SIMULATOR(エア・オペレーション・シミュレーター)」をリリースしたと発表した。これは、状況判断において優位性を確保するAIプラットフォーム「AMATERASU」の第一弾となる。

写真:スペースデータ、航空作戦運用を支援する「AIR OPERATION SIMULATOR」をリリース

 AIR OPERATION SIMULATORは、日本全土を高精細に再現したデジタルツイン空間上で、作戦計画シナリオにもとづき、作戦用航空機の発進から目標地点での各種航空作戦、基地へ帰還するまでの一連の行動をさまざまな条件下で高精度に模擬する。これにより、最適な計画の策定と実際の運用を支援する。

 現代の安全保障環境では、陸・海・空に加え、宇宙・サイバー・電磁波・認知戦といった複数の領域が複雑に交錯し、指揮官が処理すべき情報量が増大している。AIを活用した情報処理が不可欠になる一方、専守防衛を国是とする日本においては、法的・倫理的な妥当性や事後に説明できる「正しさ」が求められる。

 こうした背景から、同社は高速な処理速度を提供しながら、最終的な交戦判断は必ず人間が担う「ヒューマン・イン・ザ・ループ(HITL)」を前提にシステムを開発している。

 今回公開するのは、一般公開情報にもとづく機体性能等の情報や飛行経路、視界情報などを用いたデモンストレーション版であり、今後、順次機能を追加していく予定だ。

 AIR OPERATION SIMULATORは、航空作戦に焦点を当て、航空機の飛行経路、作戦行動の実行、基地へ帰還するまで、作戦全体の流れをデジタル空間上で忠実に模擬する。高精細な3D可視化を行うことで、文章やデータだけでなく、指揮官が各種状況を直感的に確認できるように設計されており、今後は作戦計画の立案支援や予行演習(ミッション・リハーサル)などへ段階的に拡張していく。

写真:AIR OPERATION SIMULATOR概要

AIR OPERATION SIMULATORの主な特徴

  • 日本全土のデジタルツイン上での3D再現
     衛星データや地理データを統合した高精細なデジタルツイン空間の上で、位置・高度・地形の制約を反映しながら、航空機の飛行経路や作戦行動を立体的に再現する。
  • 現実的な戦闘機・無人機の飛行模試
     F-35などの戦闘機やドローンを、一般公開されている性能の範囲で個別に飛行させ、現実空間に即した機動の様子を把握できる。
  • 複数視点と環境変化への対応
     俯瞰や後方など複数視点を同時に表示するとともに、コックピットのパイロット視点、速度や高度などの計器表示をあわせて確認可能。天候(晴・曇・雨・嵐・夜・霧)や編隊形態の切り替え、再生速度の調整にも対応する。
  • 人間の最終判断を前提とした専守防衛・安全設計
     一連の模擬結果や指揮官への判断材料の提示は、専守防衛の考え方にもとづき最終的な判断を必ず人間が行うHITLを前提に設計している。

 諸外国のシステムでは、AIを活用したキルチェーン(探知から攻撃までの一連のプロセス)の極限短縮が進められているが、このシミュレーターおよびAMATERASUは、専守防衛に即して行動がもたらす結果を事前に見通すことに重点を置いている。具体的には、迎撃によって生じる破片の落下予測や民間インフラへの影響など、法的・倫理的に妥当な行動方針(COA)を根拠とともに提示することを目指す。

 同社は今後、このシミュレーターを起点に、デジタルツインとAIを活用した、陸・海・空・宇宙・サイバー空間にまたがる複数領域の可視化・模擬により、作戦計画の立案支援から予行演習、実際の作戦における意思決定支援へと発展させ、法と倫理を厳格に遵守しつつ日本の平和と安全を支える基盤を構築していく方針だ。