2026年4月1日、大成建設とセイコーグループのセイコーフューチャークリエーション、セイコーソリューションズは、GNSSが利用できない屋内や地下空間などでも高精度に位置を把握できる屋内対応高精度測位システム「Chrono Locate(クロノロケート)」の建設現場への適用に向けた実証実験を実施したと発表した。

 Chrono Locateは、セイコーが長年培ってきた高精度時刻同期技術を応用した測位システムで、最低4か所の基準局から得られる距離情報を統合し、移動局の3次元位置(XYZ座標)を正確に特定する。

 この取り組みでは、GNSSによる測量作業の効率化やICT施工、出来形管理のデジタル化といった機能を、非GNSS環境へ拡張することを目指している。さらに、セイコーの高精度でコンパクトなChrono Locateを大成建設の統合プラットフォーム「T-iDigital Field」のアプリケーションの一つとし、AR(拡張現実)などの先端技術と組み合わせることで、ドローンによる高精度測量や3D設計図のAR表示、作業員の動線管理による安全管理の高度化に加え、重機や施工機械の位置の高精度測位・把握への展開が可能となる。これにより、従来は測量機器を用いて作業員が行っていた重機位置の測量や確認作業を補完することができる。

 また、このシステムを活用することで、3次元の位置情報を高精度かつリアルタイムに取得できることを確認。非GNSS環境下でも施工の高度化と生産性向上を図ることが可能となる。

従来のGNSS測位、Chrono Locateによるローカル高精度測位のイラスト

 GNSSは、地形測量から土工支援、建設機械やダンプトラックの運行管理まで、位置情報の効率的な把握とそれによる生産プロセスのDXに幅広く活用されている。一方で、GNSSはトンネル内や地下空間など衛星電波が届かない環境や、電波反射が発生する施工環境では利用できないため、非GNSS環境でも効率的に位置情報を把握できる新たなシステムの開発が求められていた。

 そこで大成建設は、GNSSに依存せず位置情報を取得できるセイコーのChrono Locate技術と、自社の統合プラットフォームT-iDigital Fieldを連携し、建設現場への適用に向けた実証実験を開始した。

 測位対象エリアに設置した複数の基準局と移動局が電波を双方向に送受信することで、従来では難しかったナノ秒精度の時刻同期とセンチメートル精度の測距を同時に実現する。GNSSが衛星からの一方向の電波受信に基づくのに対し、この技術は双方向の電波が到達する時間差を計測することで距離を測る。さらに、双方向通信によりデバイス間の時刻をナノ秒単位で高精度に同期させることで計測精度を高め、センチメートル級の測距を実現している。

 GNSSを地上に展開した「ローカルGPS」ともいえる仕組みで、衛星の代わりに複数の基準局を測位対象エリアに設置し、移動局に届く電波の到達時間差を極めて精密に計測することで、高精度に位置情報(座標)を算出する。

実証実験の概要

 首都高速道路の日本橋区間地下化事業の一環である「(改負)高速都心環状線(日本橋区間)常盤橋地区トンネル工事」(東京都千代田区大手町2丁目~中央区八重洲1丁目)を対象に、首都高速道路高架橋下のGNSSが受信できない施工環境において、Chrono Locateによる試験測位を実施し、適用可能性を検証した。

 首都高速道路高架橋下の施工エリアに基地局を12か所設置し、日本橋川を行き来する通船(移動局)の追尾試験を実施。また、浚渫(しゅんせつ)作業を行う台船上のバックホウについて、運転席と車体後部にそれぞれ移動局を設置し、ブームの旋回状況を追尾する試験を行った。

 その結果、追尾した通船の軌跡はレーザー測量結果とほぼ一致し、所定の測位精度を得られることを確認した。複数のエリアを結合運用することで広範囲の施工区間をカバーし、通船が複数エリアにまたがって移動する場合でも連続的な測位を実現した。また、バックホウ前後に取り付けた2つの移動局により、ブーム旋回を連続的に安定して追尾できることを確認した。将来的には、浚渫位置の正確な把握に応用できる。

【通船の追尾による作業状況】
写真:川の上を走る通船、電波測距とレーザー測量の比較、複数エリアへ拡張(エリアAとエリアBの往路と復路)
左:現場の状況、中央:レーザー測量との比較、右:複数エリア拡張
【バックホウ台船による作業】
写真:夜間の浚渫、バックホウに設置した移動局A、Bの位置
左:浚渫の様子、右:浚渫時の移動局の位置
旋回挙動の測位(バックホウ運転席、バックホウ後部)
旋回挙動の測位

 大成建設は今後、建設現場の施工管理をデジタル技術で支援する統合プラットフォームT-iDigital Fieldのアプリケーションの一つとして、この技術を用いた測位機能を実装する予定だ。これにより、非GNSS環境下における出来形・品質・安全管理の高度化を図り、建設現場の生産プロセス全体のDXを推進する。

 セイコーは、この技術をGNSS電波が受信できない物流倉庫や工場内での動線最適化、自動搬送ロボットの制御など、建設・土木以外の多様な産業分野にも展開し、位置情報を活用した新たな社会インフラの構築と生産性向上に寄与するとしている。

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