2026年3月19日、千葉工業大学地球学研究センターと東京大学総合研究博物館、シャンルウルファ考古学博物館による日本・トルコ共同調査隊は、「石の丘群」遺跡の一つであるハルベトスワン・テペシで地中探査を実施し、地中に埋没した多数の建築物の検出に成功したと発表した。
トルコ南東部シャンルウルファ県には、世界遺産ギョベクリテペに代表される先土器新石器時代(約1万2000年前から9000年前)の遺跡が多数分布している。これらの遺跡は、石灰岩の巨石を用いた特徴的な建築様式をもつことから石の丘群(タシュ・テペレル)とも呼ばれ、狩猟採集民によって築かれた世界最古の大規模建築遺跡群であると考えられている。
ドローンを用いた地形測量と、地中磁気探査・地中レーダー探査を組み合わせた調査によって明らかになった集落の構造は、同地域の新石器時代遺跡の構造とは異なり、遺跡の多様性が明らかとなった。同地域の新石器時代集落の間に階層性があった可能性を示唆し、当時の地域社会の構造の理解に貢献する成果である。
この研究成果は、アメリカのワイリー社が発行する考古学専門誌「Archaeological Prospection」に2026年2月20日付で掲載された。
石の丘群遺跡は農耕牧畜の始まりよりも古く、農耕社会の成立が社会の複雑化や大規模建築の出現をもたらしたとする従来の見方に再考を促す発見として近年注目を集めているが、いまだその多くが謎に包まれている。日本・トルコ共同調査隊は、2022年から石の丘群遺跡の一つであるハルベトスワン・テペシ遺跡の調査を進めてきた。
遺跡の大きさと集落の構造は調査における重要なトピックであるが、発掘調査は多大な時間と労力を要する。また遺跡保護の観点からも、遺跡全面を発掘するような調査は通常行っていない。地中の磁気特性の違いやレーダー反射を利用した地中探査手法はあるものの、遺跡全面で実施した報告例は非常に限られていた。
研究内容
この研究ではハルベトスワン・テペシ遺跡において、ドローンを用いた地形測量と地中磁気探査・地中レーダー探査を組み合わせた調査を実施し、地中に埋没した集落の構造を明らかにした。
地形測量は、ドローンを用いた空中写真測量によって実施した。ハルベトスワン・テペシ遺跡は、約5,900m²(94m×75m)、高さ約2.4mの丘状の形をしている。
地中磁気探査と地中レーダー探査の結果から、遺跡の中央付近に長方形の建築物が、互いに壁を共有するようにして密集して分布していること、巨大な公共建築物や広場のような構造が見られないことがわかった。
同地域の大規模新石器時代遺跡では、巨大な公共建築物と小規模な住居が混在していたことが分かっている。それ対し、今回明らかとなったハルベトスワン・テペシ遺跡の構造に巨大な公共建築物は見られず、より住居としての側面が強かったと考えられる。この結果は、石の丘群遺跡の集落の多様性を示すとともに、異なる機能を持った集落が存在し、複雑な地域社会を形成していた可能性を示唆するものであり、1万年前の社会構造の理解に貢献する重要な成果となった。
<論文情報>
掲載雑誌:Archaeological Prospection(公開日:2026年2月20日)
論文題目:The Layout and Size of an Early Pre‐Pottery Neolithic B Small Settlement Revealed by Geophysical Prospection at Harbetsuvan Tepesi in Southeastern Anatolia
著者:Toshihiro Tada, Ryota Moriwaki, Kazuya Shimogama, Kenta Suzuki, Wataru Satake, Nurcan Küçükarslan, Celal Uludağ, Yoshihiro Nishiaki
URL:https://doi.org/10.1002/arp.70037
