JISDAは、2026年3月、無人アセットコンソーシアム「RISE」による取り組みの一環として、発泡素材(EPO)を主要構造材とする軽量・低コストの固定翼ドローン「ACM-00 “Kabura”」の国外試験場での目視外飛行(BVLOS)に成功した。

 RISEは、防衛・技術安全保障の観点から無人アセットの研究開発・製造・運用・後方支援を横断的に推進する産学官連携の枠組みとして、JISDAが2026年3月に設立したコンソーシアムである。

写真:飛行するACM-00 “Kabura”
ACM-00 “Kabura”イメージ画像。機体重量は約500g、翼長は約1300mm、飛行時間は1~3時間。

 固定翼ドローンの実運用における条件は、地形・天候・電波環境・安全性・運用手順・搭載物の組み合わせによって頻繁に変化する。JISDAはその変化に対処するため、設計と手順を細かく更新し、改良を重ね最適化してきた。消耗や破損を前提に入れ替えや再構成がしやすいドローンを用意し、運用のフィードバックを次の仕様へ反映していく。今回のBVLOS試験は、こうした前提に立った開発運用が現実の試験環境でも成立することを示すものとなる。

 今回開発・実証した固定翼無人機は、主要構造材にEPO(発泡ポリオレフィン)を採用し、機体重量は約500gと軽量だ。発泡素材は損傷時の補修や部材交換が比較的容易で、現場での復旧を前提にした運用と相性がよい。さらに、部品は入手性の高い汎用品を使い、供給不安や専用品依存によって運用が止まるリスクを抑えている。離陸は手投げまたはカタパルト方式を採用し、滑走路や大型設備は不要だ。

 機体は半日程度で組み立て可能な工程設計を採用し、今回の実証ではその組み立て段階も含めた検証を行った。モジュラー設計で配線や部材配置を整理し、点検・交換・再組み立ての手順を標準化しやすい構成とすることで、運用中に得た改善点を次のロットや次の構成へ反映できることを重視しており、運用者と開発側がコミュニケーションを取りながら仕様の微調整を繰り返すことができる体制を構築する。

 機体はGPSを備え、運用に必要なナビゲーション機能を搭載している。また、目視外飛行で広域運用する際は常に良好な受信環境とは限らないため、防災・防衛用途における不安定な通信を考慮した設計を取り入れ、基本機能を実装した上で、運用上見えてくる課題に対して改良で追従できることを重視している。国外試験環境で検証することで、日本の法的制約にとらわれず機体や運用設計を確認し、今後の日本の環境への最適化に向けた知見を得ることができた。

 今回の実証では、国外の部素材を用いて原価約10万円程度で構築が可能であることも証明した。国内でも量産設備を整えれば同様のコストで実装が可能となることが期待される。低コストであるため改良した機体を追加投入しやすく、運用で得た知見を次の設計へ活用するスピードを押し上げる。

 今回の成果を踏まえ、RISEコンソーシアムは国内で量産体制を整えるためのサプライチェーン構築を推進する。品質や供給の継続性の観点から、国内で安定的に確保できる部材への置き換えや、組み立て・検査工程の整備、品質保証の仕組みづくりに取り組む。あわせて、日本の電波法環境およびユースケースに合わせて改良し、通信・運用設計の最適化、用途別の機能拡張、安全対策とフェイルセーフ設計の強化を進めるとしている。

JISDA代表取締役 國井翔太氏のコメント

 日本のものづくりは、品質を突き詰めて「良いものを時間をかけて作る」ことで競争力を築いてきました。一方で、ハードとソフトの境界が曖昧になり、ハードウェアがコモディティ化した現在の局面では、本質的な価値は製品単体の性能だけでなく更新の速さや量産と供給の確実性に移っていきます。これからのエンジニアリングでは、安く早く量産できる状態を最初に作ることが、むしろ出発点になると考えています。

 そのためには、アジャイルに学習し続けるための設計が必要です。モジュラー化されたアーキテクチャでコンポーネント単位に更新できる前提を置き、運用から得た知見を細かく反映していく。スペックを一回で最適化しようとするより、ユースケースに合わせてユーザーと対話しながら仕様を微調整し続ける方が、結果として強いシステムになります。今回のように安価で、初学者でも組み立てやすい設計は、その更新サイクルを回すための土台となります。

 今回の実証は、国外パートナーとの連携により、RISEコンソーシアムとして実績を形にできた最初の取り組みでもあります。短い期間で検討から実証まで到達できたのは、開発を高速化するための枠組みが機能した結果だと捉えています。この成果を最初のマイルストーンとして位置づけつつ、今後も早いペースで実証を繰り返し、運用知見と技術要素の接続を強めていきます。