2026年5月15日、NHK放送技術研究所(以下、NHK技研)は、放送事業用の自営無線回線を用いた「空飛ぶロボカメ」と「IP回線中継ドローン」を開発したと発表した。
空飛ぶロボカメは、既設の受信基地局の方向に電波の送信方向を自動で切り替えることで、空撮映像の安定的な長距離ライブ伝送を実現する。IP回線中継ドローンは、空撮映像だけでなくドローンの監視・制御信号や地上端末との通信を自営回線で伝送する。
これらの技術により、従来のドローンでは難しかった「長距離かつ安定した高画質中継」や、自営回線による「空撮映像とドローン操縦の長距離同時伝送」が可能になる。
受信基地局に高画質映像を伝送する「空飛ぶロボカメ」
通常、ロボットカメラやヘリコプターからのライブ映像の伝送には、FPU(Field Pick-up Unit)という無線伝送装置を用いる。今回はFPU送信機をドローンに搭載し、既設の受信基地局に高画質映像を伝送する空飛ぶロボカメを開発した。
FPUで送信した電波は、放送局の屋上や山頂の鉄塔などに設けられた受信基地局で受信する。長距離かつ高画質な映像を伝送するには、指向性を持つアンテナを使い、受信基地局にアンテナ方向を制御する必要がある。しかし、取材ヘリコプターなどで用いるアンテナや方向制御機材は大きく、ドローンへの搭載が困難であった。そこで複数の小型アンテナを360度全方向に向けて円周上に配置し、位置情報に基づいてアンテナを受信基地局の方向に切り替える「アンテナ切替装置」を開発した。正確に電波の送信方向を制御することで、長距離でも途切れにくい映像伝送が可能となる。
2025年12月に行った実験では、NHK技研(東京都世田谷区)の敷地内を飛行するドローンから、約8km離れたNHK放送センター(渋谷区)屋上の受信基地局まで、約40Mbpsの伝送レートで高画質な2K空撮映像を安定して伝送できることを確認した。実験の結果から、さらに距離を拡大できる見込みがあるとしている。
さまざまな信号をやり取りできる「IP回線中継ドローン」
空飛ぶロボカメで用いたFPUは送信専用であり、基地局に映像を伝送することはできるが、基地局から信号を受信することはできない。そのため、監視・制御には携帯電話回線などを利用する必要がある。
今回は、監視・制御信号を災害時に輻輳(ふくそう)しない自営回線で伝送できるよう、信号の双方向伝送が可能な「小型双方向FPU」を開発し、ドローンと基地局のそれぞれに設置してIP回線を構築するIP回線中継ドローンを開発した。ドローンのカメラ映像をIPパケット化して伝送し、携帯電話回線の圏外地域や通信が輻輳する災害時でも安定的に利用が可能。また、ドローンに搭載した無線LANのアクセスポイントにより、地上端末との通信を中継することで、災害などで通信手段が途絶えた地域にドローンが臨時のIP回線を提供することもできる。
2026年3月に行った実験では、基地局から約7km離れたドローンとの間で約10MbpsのIP回線を構築し、ドローンから基地局への映像伝送と、基地局からドローンの監視・制御を同時に行えることを確認した。
今後NHKは、実運用を想定した検証を進め、性能改善に取り組むとしている。
これらの技術は、2026年5月28日から31日まで開催される「技研公開2026」で展示する予定だ。
技研公開2026「拓く、支える、これからも」
| 開催日時 | 2026年5月28日(木)~31日(日) 10:00~17:00(入場は終了30分前まで) |
| 会場 | NHK放送技術研究所(東京都世田谷区砧1丁目10-11) |
| 入場 | 無料(事前予約不要) |
| URL | https://www.nhk.or.jp/strl/open2026/ |
