2026年3月3日、スペインのFujitsu Technology Solutions S.A.とバルセロナ港のイノベーション推進組織であるBCN Port Innovation Foundationは、同港において海洋状態をデジタル空間上に再現して変化を予測する海洋デジタルツインに関する実証実験を、2026年中に実施することで合意したと発表した。
この実証実験は、海洋環境の再生、生物多様性保全、ブルーエコノミー(※1)の促進に向けて実施するもので、富士通の海洋デジタルツイン技術をもとに、BCN Port Innovation Foundationが港湾生物多様性に関する全情報を一元管理し、長期モニタリングを可能とする統合デジタルプラットフォーム基盤を構築し、その有効性を検証する。
※1 ブルーエコノミー:海洋資源を持続可能に活用しながら、経済成長・雇用創出・環境保全を同時に実現すること。
近年、地球温暖化や海洋汚染などにより、世界の海洋生態系は深刻な危機に直面している。欧州連合(EU)では2024年に自然再生法が採択され海洋生態系の回復が義務づけられるなど、海洋環境の保全と再生に向けた取り組みが加速している。
実証実験では、バルセロナ港において富士通の人工知能(AI)と高度な分析技術を組み合わせた水中ドローン自動航行制御技術を用いて、海底環境の高解像度データを効率的に取得し、そのデータをもとに海底の状態の把握、可視化および定量化を行う。
具体的には、海藻などの植生分布を解析することで、植生被覆に基づくバイオマス、ブルーカーボン(※2)の推定を行い、海底環境の空間的な分布状況や特性をデータとして把握する。また、港湾における生物多様性関連データを集約・管理するための統合デジタルプラットフォーム基盤を構築し、継続的にモニタリングすることで時間の経過に伴う生態系の変化をデータとして蓄積・分析できることを確認する。
※2 ブルーカーボン:沿岸・海洋生態系が光合成によりCO2を取り込み、その後海底や深海に蓄積される炭素。
今後、富士通とBCN Port Innovation Foundationは、実証実験の成果をもとに、統合デジタルプラットフォームに、環境対策の実施前にその有効性を検証するとともに実際の影響度に基づいて投資の優先順位付けを支援する「仮定シナリオ」のシミュレーション機能の追加を検討する。
このシミュレーション機能は、高精度なデジタルモデルの構築を通じて、港湾当局が保護優先区域や環境回復・再生に適した区域を特定することを可能にし、港湾活動と自然環境保全のバランスをとりながら、より持続可能なインフラと運営の設計を促進する。
富士通はこの実証実験を通じて、気候中立の目標と海洋生態系の保護に沿った独自技術の開発を強化し、スペインにおける持続可能なイノベーションプロジェクトのテクノロジーパートナーとしての役割確立を目指すとしている。
