2025年12月15日、Prodrone(以下、プロドローン)とGEEP Forestは、「クマと人の共存エリア構想(ベア・ゾーニング・プロジェクト)」を発表した。

 両社が共同開発した「獣害追い払いドローン」による対処に加え、レーザー測量技術を用いた「クマ出没ハザードマップ」の作成、長期的視点でのドローンによるベア・ボーダーライン巡回監視パトロールを組み合わせた包括的な獣害対策ソリューションであり、クマなどの野生鳥獣による市街地出没問題に対し、テクノロジーを活用して生活圏と野生動物の生息域を明確に区分けする。

写真:「獣害追い払いドローン」の外観
GEEP Forestとプロドローンが共同開発した「獣害追い払いドローン」

 両社はこれまで、獣害追い払いドローンの開発・運用を行ってきたが、クマによる人的被害や市街地への出没の根本的な解決には、「そもそも人里に近づけない」「人とクマの境界線を管理する」という統合的なアプローチが必要だと考え、このプロジェクトを立ち上げた。

ソリューションの概要

 プロジェクトでは、以下の2つのフェーズで対策を行う。

【調査・可視化】ドローンレーザー測量による「クマ出没ハザードマップ」の作成

 ドローンレーザー測量(LiDAR)技術を活用し、森林内の地形だけでなく、野生動物の有無や位置情報の取得・解析を行う。 取得した点群データをAI分析することで、従来の手法よりも広範囲かつ正確に動物の生息実態を把握し、クマの生息域と市街地への侵入経路を可視化したクマ出没ハザードマップを作成する。

 取得した点群データから、エリア内の人間が立った位置のデータを手作業で削除し、動物の特定が可能。木々などの不要物を取り除き、生育エリアを特定する。

 調査用ドローンには、 高精度なレーザースキャナを搭載し、森林内部の立体構造と動物の個体識別データを収集するプロドローンの「PD-4BM(Voyager搭載)」などを活用する。

写真:森林の点群データ
飛行高度125m、飛行スピード8m/s時の点群データ(提供:ビジュアル・システムズ)
写真:人やクルマの点群データ
飛行高度70m、飛行スピード5m/sの点群データ(提供:ビジュアル・システムズ)

【防御・パトロール】「獣害追い払いドローン」による境界線警備

 ハザードマップに基づき、人間とクマの生活圏の間に「境界線(防衛ライン)」を設定する。このライン上を獣害追い払いドローンがパトロールする。機体には赤外線カメラ、ライト、クマよけスプレー(忌避剤)を搭載し、境界線付近でクマを検知した際は、空からの警告や誘導に加え、必要に応じてスプレー噴射による追い払いを行い、市街地への侵入を未然に防ぐ。

 獣害追い払いドローンは、GEEP Forestの知見をもとに開発したもので、夜間の発見を容易にする赤外線カメラを搭載し、人間が近づくことなく空から安全に対処できる。

 プロジェクトは構想段階で、実証実験に向けた準備を進めている。今後、自治体や林業関係者、研究機関と連携し、地域の特性に合わせたハザードマップ作成とパトロール運用のパッケージ化を目指す。また、世界的な潮流である「生物多様性に配慮した森づくり」に同調し、動物が本来の生息域で暮らせる環境整備に向け、テクノロジーによる安全確保と生態系の回復を両輪とした持続可能な解決策を追求するとしている。

各社代表コメント

GEEP Forest 代表取締役 曽根洋人氏

 長年、林業の現場で獣害対策に取り組む中、追い払うだけではない、事前の察知と環境整備の必要性を痛感していました。プロドローン社の協力を得て実現した害獣撃退ドローンをより進化させて、喫緊の課題である熊被害の撲滅を目指し、本プロジェクトに微力ながらも参画していきたいと思います。弊社には、地域計画に基づいた害獣駆除に携わる者も居り、山の現場ならではの情報をプロドローン社へ提供していきたいと考えています。

プロドローン 代表取締役社長 戸谷俊介氏

 私たちのドローン技術が、地域社会と自然の調和という大きな課題解決に貢献できると確信しています。単なる『撃退』にとどまらず、測量技術による『可視化』と、林業の知見を活かした『環境整備』を組み合わせることで、クマとの不幸な接触事故を減らし、持続可能な共存社会を実現したいと考えています。