2025年12月1日、川崎重工業(以下、川崎重工)、かんでんエンジニアリング、エアロトヨタは、川崎重工の無人ヘリコプター「K-RACER」を用いて、送電鉄塔への物資輸送を想定した実証試験を実施したと発表した。試験は関西電力送配電の甲賀訓練場で行い、荷揚げから送電鉄塔近傍での荷降ろしまで一連の飛行に成功した。

 3社は、2025年3月に締結した「送電鉄塔向け物資輸送における協業検討に関する合意書」に基づき、K-RACERを活用した送電鉄塔向け物資輸送サービスの実現に取り組んでいる。

写真:物資を吊り下げて飛行する無人ヘリ
自動飛行で物資を運搬する様子

 実証試験では、山間地に設置された送電鉄塔近傍への物資輸送を想定し、送電線などの障害物が存在する環境下で、一斗缶や懸垂がいし、工事用はしご等の物資を輸送できることを実証した。

 物資輸送は自動飛行で行い、荷降ろし地点は離陸地点から目視外の位置に設定。タブレット端末による遠隔操作で機体位置の微調整と荷降ろしを実施した。

写真:無人ヘリが荷下ろしする様子
送電鉄塔の近くで荷降ろしする様子

 現在、送電鉄塔向けの物資は、有人ヘリコプターやモノレール、索道、人肩運搬などで運んでいる。特に人肩運搬は、少子高齢化に伴う労働人口減少が課題となっている。一方、送電鉄塔の建て替えや更新、保守の需要は高く、今後さらに労働人口の減少が進めば物資輸送の維持が困難になるおそれがある。

 K-RACERは、自動結合システムにより荷物の結合・切り離しを遠隔操作で実施できるため、ホバリング中の機体直下で行うフック作業が不要。従事者の負担軽減や省人化、安全性の向上に貢献する。

 川崎重工、かんでんエンジニアリング、エアロトヨタの3社が構築を目指す送電鉄塔向けの新たな物資輸送スキームは、国内の電力・電気工事会社への水平展開が可能な汎用性と拡張性を備えている。また、無人ヘリコプターの安全かつ安定的な運用を支える制度整備にも取り組み、電力の安全・安定供給の実現を目指すとしている。

「K-RACER」基本仕様

実証機「K-RACER-X2」
メイン・ローター直径7m
最大搭載量200kg
駆動方式レシプロ・エンジン
燃料ハイオクガソリン
航続距離100km以上
連続運用可能時間1時間以上