2025年11月7日、宇宙航空研究開発機構(以下、JAXA)、ウェザーニューズ、NTTデータ、Terra Drone(以下、テラドローン)は、「災害・緊急時等に活用可能な運航安全管理システム」(DOERシステム)が、大規模イベントにおける有人機・無人機(ドローン等)を用いた警備でも安全・効率的に実現できることを実証したと発表した。

 大規模イベントの警備等では、有人機と無人機(ドローン等)が混在する機会の増加が見込まれる。従来は、それぞれ異なるシステムで管理されており、リアルタイムでの監視や突発的事象への迅速な対応が困難であった。

 JAXAは、複数の企業・機関と共同で、既存の災害救援航空機情報共有ネットワーク(D-NET)を発展させ、無人機と連携可能なシステムの研究開発を、経済安全保障重要技術育成プログラム(K Program)の支援を受け進めている。

実証の概要

 JAXA、ウェザーニューズ、NTTデータ、テラドローンが連携し、大阪・関西万博の会場において、有人機・無人機による大規模イベントの警備を想定し、「運航調整所」の設置を仮定の上、同システムを利用した「運航調整所業務」について有効性を確認した。

【各社役割】

JAXA運航安全管理システムの開発、技術検証の統括
ウェザーニューズ気象情報の収集・分析による安全運航支援
NTTデータ無人機システム連携基盤、無人機運航データの統合管理
テラドローン無人機の運航制御、無人機飛行データ(仮想データ)提供

 2025年10月2日から10月10日の間、大阪・関西万博の警備に際し、これら4者が参加する運航調整所をアジア太平洋トレードセンター(ATC)に模擬的に設置して、システムを利用した運航調整を実施した。

 運航調整所において、飛行前日の調整、飛行当日の運航監視、飛行当日に発生した緊急任務を有人機・無人機に割り当てる対応(任務割当)等をシナリオに基づき実施した。

運航調整所の運用イメージ図
運航調整所の運用イメージ
写真:運航調整所の模擬状況
運航調整所模擬状況

 今回の運用シナリオは、大規模な国際スポーツ大会での技術協力により得た知見をもとに設定したが、任務割当に関するシナリオは、実機への影響を考慮し、仮想のデータを使用した。

 また、次世代空モビリティの社会実装に向けた実現プロジェクト(ReAMoプロジェクト)と連携し、空飛ぶクルマ(eVTOL)の情報も共有できる体制を構築した。

任務割当画面と各ウィンドウの説明
任務割当実施例:任務内容に適した機体を「機体性能」等から提案
eVTOL(実機データ)とドローン(仮想データ)の表示例(大阪・関西万博会場付近の地図に示された各データ)
eVTOL(実機データ)およびドローン(仮想データ)表示例

 システムの有効性について、ユーザー候補である省庁や自治体からは、社会実装に必要な機能・性能を満たしていると評価を得た。

 JAXAは、2026年度に予定している同システムの災害対応への実証に向けて機能改良を進めるとしている。その後、遠隔地における災害・警備への適用拡大を目指す方針だ。