三菱重工機械システム(以下、MHI-MS)は、自動車を自律的に運搬する車両搬送ロボットを用いた完成車輸送の実証試験を実施する。
沖縄県の「令和7(2025)年度 テストベッド実証支援事業」に採択されたことを受け、中城湾港(沖縄県うるま市・沖縄市)で同県が所有する車両一時保管ヤード(モータープール)において、2025年12月1日に開始する予定だ。
車両搬送ロボットは、自動車メーカー工場やモータープールなどにおける完成車自動搬送や、ショッピングモール、テーマパーク、空港などの自動バレーパーキングなどに活用されている。
ドライバーが目的地に近接した所定の乗降場(バース)に停車すると、車両搬送ロボットが空いているスペースに車両を搬送して駐車を代行。乗車する場合はその逆で、ドライバーが事前にスマートフォンのアプリで指定した時間に合わせ、ロボットが車両をバースまで搬送する。
車両の改造やインフラ側への大掛かりな機器設置を必要とせず、現在のオペレーションを大きく変更することなく自動運搬を可能にする。
MHI-MSは、2021年よりフランスのスタンレーロボティクス(Stanley Robotics)と自動搬送ロボット事業を共同展開している。2025年10月現在、車両搬送ロボットについて基幹特許7件の国内登録を完了。日本固有の事情を踏まえ、カスタマイズも可能となる国産化を3月に完了している。
完成車輸送の実証試験の場となる沖縄は、20歳以上の人口1人当たりの自家用車保有台数が全国平均を上回るなど、自家用車の保有率が高い地域である。特に中古車は価格を抑えられるため多くの県民に支持されている。また、国内外から観光客が訪れるため、レンタカーの登録台数は全国最多クラス。レンタカーは数年で入れ替えられ中古車として市場に流通する。
中城湾港モータープールでは、主に中古車船積前の一時保管がされており、中古車の入庫・出庫といった場内運搬業務が日常的に行われている。しかし、地球温暖化で過酷となる屋外労働の身体的負荷や、少子高齢化に伴う人手不足が課題となっている。また、保管場所の可視化といった車両管理のDXも求められていた。
こうした課題に対して、車両搬送ロボットの有効性を実証するため、MHI-MSは沖縄県の同プログラムへ参加。労働環境の改善、労働力不足への対応、ロボットによるヤード内のマネジメントシステムや車両位置情報を扱うDXを用いた効率的な車両管理といった「人を中心に据えたロボット活用」の可能性を検証し、さらに、ガソリン車の自走削減によるCO2抑制などの効果も併せて確認する。
