福島県昭和村は、NTTドコモビジネスが提供するセルラードローン(※1)「Skydio X10」を活用したクマ対策を2025年10月より開始した。

 昭和村は2025年7月に山岳遭難対応や設備点検を目的にSkydio X10を導入しており、今回の対策はその運用範囲を拡大するものとなる。

 NTTドコモビジネスは、講習や導入後の技術支援を行うことで自治体職員による運用実現を支援している。

※1 モバイルネットワークを利用したドローンのドコモグループでの呼称

写真:飛行するSkydio X10
Skydio X10
写真:ドローンが撮影したクマの映像
ドローンがとらえたクマの映像(赤枠内がクマ)

 昭和村では、クマやイノシシなどの有害鳥獣への対応を強化するため、有害鳥獣ダッシュボードを作成・公開し、村内での情報共有を進めてきた。

 こうした情報連携の高度化を目的に、昭和村とNTTドコモビジネスは、夜間の山岳遭難捜索やドローンポートを活用したレベル3.5飛行による無人巡視実証などを協働で推進してきた。2025年7月にはSkydio X10を導入し、山岳遭難や設備点検で運用を開始。そして10月よりクマ対策での活用を開始した。探索によるクマの早期発見、効率的な対策を実施している。

 今回の昭和村の取り組みは、クマ対策を通じたDFRモデルといえる。DFRとは緊急事態発生時にドローンを迅速に展開し、状況把握を速やかに行う仕組みのことで、米国で積極的に導入されている。

 NTTドコモビジネスにはSkydio認定のDFRプログラムマネージャーが在籍しており、2024年度の山岳遭難を想定した実証から同村と連携した運用構成を構築している。

実飛行例でクマを発見した様子(NTTドコモビジネスYouTubeチャンネル)

【クマ対策の運用フロー】
① 昼夜問わず昭和村内のクマ目撃情報を受けドローンによる探索を実施
② 現地にクマなどがいる場合は、スピーカーを活用した追い払いや、ドローンの位置情報をもとにした罠設置を実施
③ 出没ポイントを有害鳥獣ダッシュボードへプロットし、村内の情報共有を強化

【Skydio X10の活用効果】

  • 夜間探索能力の向上
     有害鳥獣が活動しやすい夜間でも自律飛行が可能。NightSense(暗所での自律飛行を実現するオプション)を活用することで安全な運航を実現する。
  • 探索効率の向上
     可視光カメラ、サーマルカメラの併用により発見頻度を向上。
  • 位置特定による効率化
     機体やカメラの緯度経度情報を活用し、有害鳥獣や獣道の位置特定による罠設置の効率化、および住民への迅速な情報連携に貢献。
  • スピーカーを活用した追い払い
     クマ発見時にスピーカーを活用した追い払いを実施。追い払い後もドローンで追尾し獣道を特定することで捕獲効率を向上。

 導入後、約14分のフライトでクマ1頭、イノシシ3頭を発見した事例があり、従来のクマ探索に比べて安全面の向上や効率化に貢献している。

 今後、この対策を「昭和村DFRモデル」として他の自治体や企業に展開する方針だ。

有害鳥獣ダッシュボードに表示された地図
福島県昭和村の有害鳥獣ダッシュボード
写真:白黒画像で撮影された獣道
ドローンを活用して発見した獣道(矢印部分が獣道)