2025年10月6日、NEDOは、「経済安全保障重要技術育成プログラム」(以下、K Program)の一環で実施する「高高度無人機による海洋状況把握技術の開発・実証」において、無人機が成層圏に長時間継続的に停留して通信を提供する高高度プラットフォーム(HAPS)によるセンシングを実現するため、無人機の成層圏長期航行を可能にする動力源の開発に着手すると発表した。実施予定先はソフトバンク。期間は2025年度から2028年度までを予定しており、予算は18億円。
HAPSの無人機は動力源として主に太陽電池を使う。日本周辺でのHAPSによる継続的な海洋状況把握(以下、MDA)を実現するためには、日照時間が短い冬季でも運航可能な動力源が必要となる。
この事業では、高エネルギー密度蓄電池と高効率太陽光パネルをHAPSに搭載して長期航行を実現するために、安全性や耐環境性と軽量化を両立するモジュール化技術などの開発から実証までを行う。
この技術により、日本周辺でHAPSセンシングプラットフォームを活用する基盤を整え、MDA能力を強化し、海洋の安全確保や海洋産業の発展に貢献する。
科学技術・イノベーションが国家間競争の重要な要素となる中、日本が技術的優位性を高めるには、研究基盤を強化するだけでなく、国が強力に重要技術の研究開発を進め、育成していく必要がある。
K Programは、経済安全保障を強化・推進するため、内閣府や経済産業省などの関係府省が連携し、先端的な重要技術の研究開発から技術実証までを迅速かつ柔軟に推し進めるため、2022年度に創設された。
NEDOに造成された基金により、国が定める研究開発ビジョンや研究開発構想に基づき、科学技術の多義性を踏まえ、民生利用だけでなく公的利用につながる研究開発とその成果の活用を推進する。
事業概要
K Programの一環として、NEDOは高高度無人機による海洋状況把握技術の開発・実証を実施している。
この事業は、研究開発項目(1)「海洋状況把握技術に関する研究開発」、研究開発項目(2)「高高度無人機の長期航行技術に関する研究開発」で構成されている。
これまで研究開発項目(2)「高高度無人機の長期航行技術に関する研究開発」では、第1フェーズとして2024年度にフィジビリティスタディを実施し、成層圏での飛行実証段階にある機体の技術動向分析とともに、HAPSに搭載し長期航行を実現する太陽光パネルや蓄電池の開発要素、達成目標の抽出を行った。
今回は第2フェーズとして、フィジビリティスタディで抽出した開発要素、達成目標を踏まえ、高エネルギー密度蓄電池および高効率太陽光パネルの技術開発・実証に着手する。HAPSに搭載できる安全性や耐環境性、軽量化を実現した蓄電池のモジュール化技術を開発することで、日照時間が短い冬季を含む通年での高緯度飛行を目指す。また、将来的な商用化を見据えた低コスト化にも取り組む。
これにより、HAPSによる継続的なセンシングを実現するための基盤技術の確立を目指す。
