2025年10月2日、NTT e-Drone Technology(以下、NTTイードローン)とNTT東日本千葉事業部(以下、NTT東日本)は、千葉県と連携し2025年10月中旬以降、鳥獣忌避レーザーやドローンを活用し、県内の養鶏場において高病原性鳥インフルエンザ(以下、鳥インフルエンザ)の発生と罹患を防止する取り組みを開始すると発表した。

 国内養鶏業界の鳥インフルエンザ罹患・感染は、2025年2月時点で14道府県・51例と全国的に過去最高水準にのぼる。千葉県内では2025年1・2月に330万羽以上の養鶏が殺処分となり、経済的損失や食料流通に深刻な影響を及ぼしている。

 ウイルスを保持した野鳥の鶏舎内への侵入や糞便を通じて鶏舎内にウイルスが持ち込まれることが原因のひとつに挙げられているが、防鳥ネットによる被害抑制には限界があった。

 忌避レーザーを搭載したドローンは実証に基づいた効果が期待されており、養鶏場への野鳥の侵入を防ぐことで鳥インフルエンザの発生を未然に防ぐ。

養鶏場へのウイルスの侵入と拡散の流れを表した図

取り組み概要

(1)忌避レーザー搭載ドローンによる野鳥の侵入防止

 NTTイードローン製の機体に鳥獣害忌避装置「クルナムーブ」(地域総研)を搭載して広範囲にレーザーを照射し、養鶏場への野鳥の侵入を効果的に防ぐ。

忌避レーザー搭載ドローンを活用した野鳥侵入防止対策イメージ図

(2)使用機器

  • NTTイードローン製「BB102」
     使用する機体は、飛行安定性と耐久性、長時間の飛行性能を備えたNTTイードローン製「BB102」。送信機の画面で飛行範囲を設定することで自動航行が可能。日々変化する侵入ルートや、従来は対処が難しかったエリアにも柔軟に対応する。人手による追い払いにかかる時間や人材確保の負担を軽減し、運用コストの削減に貢献する。
    写真:NTTイードローン製「BB102」の外観
    NTTイードローン製「BB102」

    写真:自動航行ルートが表示された送信機の画面
    送信機画面(自動航行機能)
  • 鳥獣忌避装置「クルナムーブ」
     赤色と緑色のレーザー光により、目を守る習性が強い鳥獣(ハト・カラス・ムクドリ・シカなど)へ本能的な不快感を与えて忌避効果を発揮する。ランダムに動くレーザー光に鳥獣が慣れにくい特性を活かし、継続的に照射することで「危険」と認識させ、養鶏場への飛来を防止する。スペックルノイズ(ちらつき)によってレーザー光へランダムな揺らぎを加えることで、忌避効果の持続性を高めている。
    写真:「クルナムーブ」外観
    鳥獣忌避装置「クルナムーブ」

    写真:壁にレーザー光を照射する様子
    鳥獣に不快感を与えるレーザー光

(3)補助金の活用

 千葉県では、養鶏事業者による先進的な鳥インフルエンザへの感染予防対策強化を目的として、2025年7月より「家畜伝染病対策緊急強化事業」を開始した。総額2,000万円の予算を確保しており、地域の養鶏事業者によって構成される協議会等を対象に導入費用の3分の1を上限とする補助を提供する。今回の取り組みはこの補助制度の対象として認定されている。

【各社役割】

NTTイードローン忌避レーザー搭載ドローンなどの開発・製造・運用支援
NTT東日本千葉県、地域自治体のニーズヒアリング・伴走支援、全体管理


 NTTイードローンとNTT東日本は、今後も千葉県と連携し、県内養鶏事業者への忌避レーザー搭載ドローン導入を推進する。今回のドローンや忌避レーザーなどを活用した取り組みをひとつのモデルケースとして、将来的には他県域への展開も視野に入れる。今後は鶏舎の消毒や暑熱対策につながるソリューションについても検討し、他の鳥獣害対策に応用するとしている。