2025年8月29日、Liberaware(以下、リベラウェア)とKDDIスマートドローン、大林組の3社は、建設現場に自動充電ポート付きドローンを1年間常設し、現場補助者なし目視外飛行(レベル3)による毎週の遠隔自動測量を継続運用したことを発表した。掘削量(体積)や現場の地形など、進捗状況を高精度に可視化することを実現した。

 この取り組みは、国土交通省「中小企業イノベーション創出推進事業(SBIRフェーズ3基金事業)」で採択された、「建設現場における施工管理の省力化・高度化技術の開発」の一環となる。

写真:上信越自動車道に設置されたドローンポート(群馬県安中市)、ドローンを飛行させる現場と遠隔運航する東京オフィスの場所を示した地図、写真:KDDIスマートドローンオフィス(東京都千代田区)の様子、写真:3次元モデル、パノラマ写真
ドローンの運用と可視化イメージ

 上信越自動車道北野牧トンネル(群馬県安中市)では、坑口上にある約70mの崖に約9万5,000m³の岩塊が残存している。東日本高速道路(NEXCO東日本)は、供用中の高速道路を止めることなく岩盤を段階的に掘削するプロジェクトを2017年より開始し、2023年2月からは岩盤掘削と掘削土の搬出作業を行っている。

 掘削量を定量的に管理しながら、安全かつ効率的に進めていく必要があり、従来は、搬出する掘削土の質量をトラックスケールで計測し、その値から体積を推定しているが、精度の高い進捗管理には多くの手間や調整が必要であった。測量による管理も可能だが、掘削面は日々変化するため、定期的な現場測量は時間と労力の負担があり現実的ではない。

 短時間かつ高頻度で現場全体を記録できる自動充電ポート付きドローンを活用することで、効率的に進捗管理を行う。

取り組み内容

 大林組は、KDDIスマートドローンの遠隔運航サービスを活用し、自動充電ポート付きドローンを現場内に設置した。毎週、東京都内のKDDIスマートドローンのオフィスでドローンを遠隔運航し、ドローンポートからの自動離着陸、現場全体の撮影、撮影データのクラウド転送までの作業を、継続運用した。撮影データをリベラウェアが3次元点群化して解析し、掘削量を算出することで、工事進捗の可視化を行った。

設置期間2024年7月27日~2026年3月31日(予定)
現場名上信越自動車道(落石対策)北野牧(その1・2)工事
運航頻度週1回2フライト(測量/パノラマ写真撮影)
実施内容・現場への自動充電ポート付きドローンの設置
・週次でのドローン遠隔運航による測量撮影およびパノラマ写真の撮影
・撮影した写真による3次元モデルの生成
・3次元モデルによる掘削量の算出
・のり面状況の詳細な撮影

 その結果、従来は現場でドローンを操縦、その後の点群データ生成と解析に2人で2日間かかっていた作業を、約20分の遠隔運航により現場では無人で実現可能であることを確認した。

 2024年7月に運用開始以降、チャットアプリによる現場の退避状況や天候などの安全確認を併用して1年間無事故で週次のリモート測量を継続運用することに成功した。

 ドローンによる撮影から、撮影データのクラウドへのデータ転送、3次元モデルの生成、掘削量の算出、工事進捗の可視化までを、すべて一貫して自動化するフローを確立。このフローにより、現場に人が立ち会うことなく週次での高精度な進捗管理が可能になった。

 今後、大林組は出来形管理や品質管理への応用を進めるとしている。また、ダム建設工事など他の土木工事への展開に加え、夜間や悪天候下での安定運用、さらなる自動化技術の実装を推進する。

切土部分が青色で表現された3Dモデル(メッシュ土量)
進捗報告の一例(掘削量の算出)
時系列ごとの断面図
進捗報告の一例(時系列ごとの断面図)

中小企業イノベーション創出推進事業の各社役割

リベラウェア・事業主幹
・撮影した写真による3次元モデルの生成
・3次元モデルによる掘削量の算出
・3次元モデルによる進捗報告資料作成(時系列ごとの断面図)
KDDIスマートドローン・自動充電ポート付きドローンのセッティング
・週次運用フローの作成
・週次でのドローン遠隔運航による測量撮影およびパノラマ写真の撮影
大林組・運用現場の提供、調整
・現場ニーズ、データの活用方法の整理
・設計BIM/CIMモデル作成・管理
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