2025年5月27日、ブルーイノベーションは、米国サンディエゴに本社を置くグローバル航空宇宙企業のPKL Services(以下、PKL)と、AIおよびMR(※1)技術を活用したドローン操縦訓練シミュレーターの共同開発・提供に関する戦略的提携に向けた覚書(MOU)を締結したと発表した。
※1 MR(Mixed Reality):複合現実。現実と仮想空間を融合し、現実世界にデジタル情報を重ねて表示・操作する技術。
ドローンの活用領域は、災害対応や公共インフラ老朽化への対応、安全保障など、多様で高リスクな現場へと急速に拡大している。それに伴い、特定のドローン用途に最適化された操縦技術やドローンの整備スキルを持つ人材の育成が急務となっている。
ブルーイノベーションはこれまで、Blue Earth Platform(BEP)を軸にして開発した、パイロットの安全な運航を支援するドローンパイロット向けプラットフォーム「SORAPASS」を提供してきた。また、日本UAS産業振興協議会(以下、JUIDA)と連携し、プラント点検や森林測量分野の操縦訓練コースなどを創設したほか、ACSL、イームズロボティクス、Liberaware、プロドローンと「機種別ドローン操縦者技能・運用証明証」の新設に向け準備を進めている。JUIDAは近年の災害の増加に伴い「ドローン防災スペシャリストの教育コース」を提供している。
しかし、既存訓練の多くは現場での再現性や反復訓練の難しさといった課題があり、実運用はリハーサルなしで本番になる場合もあるという。
PKLは航空機の操縦・整備訓練において長年の実績を持ち、カスタマイズ可能な訓練カリキュラムと、CBT(※2)・AR・VRなど先進的な教材を統合した「OMNISPECトレーニングシステム」(※3)で世界各地の航空関連プロジェクトを支援している。
両社の強みを組み合わせることで、ドローンパイロット・ドローン整備士の高度なスキル習得を可能にする革新的な訓練環境シミュレーターの構築を目指す。
※2 CBT(Computer Based Training):コンピューターを活用した教材・訓練手法。
※3 OMNISPECトレーニングシステム:PKLが提供する訓練システム。CBT、AR、VR、補助付きライブ表示ツール(ALDT)などの技術を取り入れ、カスタマイズされたカリキュラムと地域ごとの訓練製品を作成できる。埋め込み型の訓練管理システムを通じて、モバイル・ネットワーク対応、オンデマンドの訓練教材を提供する。
覚書(MOU)の主な内容
ブルーイノベーションとPKLは、以下4つの目標の実現に向け、ドローンとAI技術を活用した訓練シミュレーターの共同開発を進める。
- 用途別に特化した訓練プログラムの提供
点検作業や災害対応など、ドローンの用途ごとの業務ニーズに応じた専門訓練プログラムを提供し、現場で即戦力となる技術を習得できる環境を整備する。 - 実務を再現したシミュレーション訓練
AIを活用し、実際の業務環境をリアルに再現したバーチャル訓練環境を構築する。ドローンパイロットは、危険を伴うシナリオや高リスクな状況にもシミュレーター上で安全に対応力を養うことができる。 - 安全で効率的な訓練環境の構築
現実では再現が難しい状況下でも反復練習が可能となり、ドローンパイロットのスキル定着と能力向上を支援し、安全かつ実践的な訓練環境を実現する。 - AIモデルの訓練と検証のための合成環境
現実世界の環境をデジタルツインとして再現し、ソフトウェアとアルゴリズムを多層的に活用してドローンの運用をシミュレーションすることで、情報処理、行動計画、動作制御を行えるようにする。実際の検証に基づいたデータを提供することで、AIモデルの高度化と業務精度の向上を支援する。
各代表コメント
PKL Services CEO Michael Naylor氏
ブルーイノベーションとの提携は非常にタイムリーです。ドローンおよび無人システム分野で、両社に大きな成長の可能性があります。お客様の重要なニーズや複雑なミッションの要求に合わせた高度な訓練ソリューションをカスタマイズできる当社の能力は、ドローン市場に大きな価値をもたらすでしょう。また、AIや複合現実(MR)といった急速に進化する革新技術を取り入れることで、ドローンパイロットおよび整備士訓練を、柔軟でオンデマンド、かつミッションに特化したものへと変革する手助けとなります。
ブルーイノベーション 代表取締役社長 熊田貴之氏
PKL社との提携は、ブルーイノベーションにとって新たな挑戦であり、ドローンを安全かつ高度に運用するためには、現場の実情を踏まえた実践的な訓練環境を整備してまいります。今回の取り組みにより、災害対応やインフラ点検など、社会の最前線で活躍できるプロフェッショナル人材の育成を加速し、持続可能で安心な社会の実現に貢献してまいります。また、本取り組みは、世界でも共通の課題を有しており、グローバル展開も視野に入れています。
